子どもの傷害情報の解析に基づいた外傷と傷害予防のための研究

文献情報

文献番号
202107008A
報告書区分
総括
研究課題名
子どもの傷害情報の解析に基づいた外傷と傷害予防のための研究
課題番号
20DA1003
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
植松 悟子(研究開発法人 国立成育医療研究センター 総合診療部救急診療科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
7,185,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
子どもと保護者が安心して安全な生活をすることができる環境を整備することを目的として、不慮の事故の発生および、死亡を減らし、本邦の現況に基づき外傷予防策を考案し予防策教育プログラムを普及する。
研究方法
研究課題:医療機関における外傷予防のための小児外傷例の情報収集
効率の良い情報収集のシステムの確立として、研究1年目である令和2年度に保護者及び、医療者からの電子版調査票の開発・作成を行い、データベース基盤の整備を終了した。研究2年目である令和3年度は、2021年7月より小児病院多施設データ収集開始した。令和4年度は、データ収集を継続し、並行してデータ解析を実施した。

研究課題:小児の傷害疾病に関わる費用について保護者対象の質問票調査
特定の受傷原因や予防策が検討されている小児の外傷に関わる費用として、直接医療費、間接費用を算定する。研究1年目である令和2年度に、間接的医療費の評価判定方法により研究デザインをして、電子調査票を作成した。データフローの基盤を整備し、研究2年目である令和3年度2021年7月よりデータ収集を開始し20例リクルートした。令和4年度は、12月までデータ収集をして最終目標患者数である50例のリクルートを目指した。1月より解析する。

研究課題:ナショナルデータベースを用いた子どもの外傷・傷害診療の現況把握に関する研究
NDBデータの抽出項目を決定し、研究1年目である令和2年度は、データ入手のための申請手続きを行なった。研究2年目である令和3年度に、データ抽出、解析開始を予定していたが、データの提供が2022年1月であったため、2月よりデータ抽出を開始した。30,000,000件のデータ解析であり、令和4年度に外部委託によりデータクリーニング、データ解析する。

研究課題:乳幼児と消費者製品のインタラクションに関する行動データベース作成と分析
研究1年目である令和2年度に調査設備を準備し、データ収集を開始した。研究2年目である令和3年年度、引き続きデータ収集と解析を行っている。現在3例の測定を経時的的に実施している。症例1) 生後12か月から開始、症例2) 生後7か月から開始、症例3) 生後13か月から開始。観察期間は1か月から9か月間。令和4年度は、収集した画像から、子どもの行動、姿勢、家庭内製品(主に家具)との関係性を解析する。
結果と考察
研究課題:医療機関における外傷予防のための小児外傷例の情報収集
14,971件を解析した。1歳の2223件を中心に、0〜 3歳までが全体の50%を占めた。発生場所は、家庭が47%と最多であった。傷害の原因では転倒と墜落で約50%を占めた。誤飲や火傷では原因物質が1m未満に存在している場合に多かった。傷害発生の際に保護者はそばにおり、見ている目の前でも発生していた。入院は3%、2日が多かった。集中治療管理は56例、手術は87例であった。後遺症は2例、死亡は4例であった。医療機関からの情報では、発生時の詳細状況がわかり、事故予防対策に直結できる内容が取得できた。

研究課題:小児の傷害疾病に関わる費用について保護者対象の質問票調査
40例の解析を実施した。受傷機転は16例と墜落と転落が多かった。それ以外に、自転車事故6例、歯ブラシ関連外傷5例、熱傷5例と続いた。部位は頭蓋内損傷が多く38%, 内臓臓器損傷、皮膚損傷、咽頭部損傷と続いた。集中治療室入室60%、手術16%。神経学的後遺症は1例認められた。直接医療費は1例749,200円に対して、家族の労働損失時間と患者ケアのための時間、間接医療費50,657円であった。受傷の原因でみると、交通事故例280,432円、転落・墜落は48,124円であった。退院後6か月間の外来通院に関する間接医療費は約30,000円であった。

研究課題:ナショナルデータベースを用いた子どもの外傷・傷害診療の現況把握に関する研究
5年間、約30,000,000件のデータを解析した。外傷受診は、1歳にピークがあり、13歳、16歳にも増加の傾向があった。部位は、頭部、顔面は5歳以下に多く、頸部、体幹、四肢は13-15歳に多かった。異物誤飲・挿入、熱傷、中毒は1歳から2歳にピークがあった。外傷種別では、頭部では、皮膚軟部損傷が多いが、年齢が上がると脳震盪が増加した。四肢も、皮膚軟部損傷が多いが、学童期では上肢の骨折が増加、下肢では、捻挫・靭帯損傷が増加した。全外傷で1歳にピーク、13歳でも同様に500件の外傷発生があり、この年齢では2人に1人の外傷受診があった。手術、入院例は、挫創、異物の1-3歳で手術例が多かった。上下肢の骨折でも手術例が多かった。ナショナルデータベースより本邦における小児の外傷診療の現況が初めて明らかになった。

結論
医療機関調査の症例集積によりデータに基づき予防策設置が可能となる。

公開日・更新日

公開日
2022-07-04
更新日
2023-11-02

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-11-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202107008B
報告書区分
総合
研究課題名
子どもの傷害情報の解析に基づいた外傷と傷害予防のための研究
課題番号
20DA1003
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
植松 悟子(研究開発法人 国立成育医療研究センター 総合診療部救急診療科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
最終目標を不慮の事故の発生や、それによる死亡を減らすこととし、本邦の現況から有効な外傷予防策を考案して、予防策教育プログラムを普及する。子どもと保護者らが安心して安全な生活をすることができる。
研究方法
研究課題:ナショナルデータベースを用いた子どもの外傷・傷害診療の現況把握に関する研究
NDBデータの抽出項目を決定し、研究1年目である令和2年度は、データ入手のための申請手続きを行なった。研究2年目である令和3年度に、データ抽出、解析開始を予定していたが、データの提供が2022年1月であったため、2月よりデータ抽出を開始した。30,000,000件のデータ解析であり、令和4年度に外部委託によりデータクリーニング、データ解析する。

研究課題:医療機関における外傷予防のための小児外傷例の情報収集
効率の良い情報収集のシステムの確立として、研究1年目である令和2年度に保護者及び、医療者からの電子版調査票の開発・作成を行い、データベース基盤の整備を終了した。研究2年目である令和3年度は、2021年7月より小児病院多施設データ収集開始した。令和4年度は、データ収集を継続し、並行してデータ解析を実施した。

研究課題:小児の傷害疾病に関わる費用について保護者対象の質問票調査
特定の受傷原因や予防策が検討されている小児の外傷に関わる費用として、直接医療費、間接費用を算定する。研究1年目である令和2年度に、間接的医療費の評価判定方法により研究デザインをして、電子調査票を作成した。データフローの基盤を整備し、研究2年目である令和3年度2021年7月よりデータ収集を開始し20例リクルートした。令和4年度は、12月までデータ収集をして最終目標患者数である50例のリクルートを目指した。1月より解析する。

研究課題:乳幼児と消費者製品のインタラクションに関する行動データベース作成と分析
研究1年目である令和2年度に調査設備を準備し、データ収集を開始した。研究2年目である令和3年年度、引き続きデータ収集と解析を行っている。現在3例の測定を経時的的に実施している。症例1) 生後12か月から開始、症例2) 生後7か月から開始、症例3) 生後13か月から開始。観察期間は1か月から9か月間。令和4年度は、収集した画像から、子どもの行動、姿勢、家庭内製品(主に家具)との関係性を解析する。
結果と考察
研究課題:ナショナルデータベースを用いた子どもの外傷・傷害診療の現況把握に関する研究
5年間、約30,000,000件のデータを解析した。外傷受診は、1歳にピークがあり、13歳、16歳にも増加の傾向があった。部位は、頭部、顔面は5歳以下に多く、頸部、体幹、四肢は13-15歳に多かった。異物誤飲・挿入、熱傷、中毒は1歳から2歳にピークがあった。外傷種別では、頭部では、皮膚軟部損傷が多いが、年齢が上がると脳震盪が増加した。四肢も、皮膚軟部損傷が多いが、学童期では上肢の骨折が増加、下肢では、捻挫・靭帯損傷が増加した。全外傷で1歳にピーク、13歳でも同様に500件の外傷発生があり、この年齢では2人に1人の外傷受診があった。手術、入院例は、挫創、異物の1-3歳で手術例が多かった。上下肢の骨折でも手術例が多かった。ナショナルデータベースより本邦における小児の外傷診療の現況が初めて明らかになった。

研究課題:医療機関における外傷予防のための小児外傷例の情報収集
14,971件を解析した。1歳の2223件を中心に、0〜 3歳までが全体の50%を占めた。発生場所は、家庭が47%と最多であった。傷害の原因では転倒と墜落で約50%を占めた。誤飲や火傷では原因物質が1m未満に存在している場合に多かった。傷害発生の際に保護者はそばにおり、見ている目の前でも発生していた。入院は3%、2日が多かった。集中治療管理は56例、手術は87例であった。後遺症は2例、死亡は4例であった。医療機関からの情報では、発生時の詳細状況がわかり、事故予防対策に直結できる内容が取得できた。

研究課題:小児の傷害疾病に関わる費用について保護者対象の質問票調査
40例の解析を実施した。受傷機転は16例と墜落と転落が多かった。それ以外に、自転車事故6例、歯ブラシ関連外傷5例、熱傷5例と続いた。部位は頭蓋内損傷が多く38%, 内臓臓器損傷、皮膚損傷、咽頭部損傷と続いた。集中治療室入室60%、手術16%。神経学的後遺症は1例認められた。直接医療費は1例749,200円に対して、家族の労働損失時間と患者ケアのための時間、間接医療費50,657円であった。受傷の原因でみると、交通事故例280,432円、転落・墜落は48,124円であった。退院後6か月間の外来通院に関する間接医療費は約30,000円であった。
結論
医療機関調査の症例集積によりデータに基づき予防策設置が可能となる。

公開日・更新日

公開日
2023-11-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-11-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202107008C

収支報告書

文献番号
202107008Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,340,000円
(2)補助金確定額
7,331,000円
差引額 [(1)-(2)]
2,009,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 424,245円
人件費・謝金 1,359,165円
旅費 100,020円
その他 3,293,175円
間接経費 2,155,000円
合計 7,331,605円

備考

備考
昨年度に引き続き、度重なる新型コロナウイルス感染症流行と重症例の対応のため、救急病院、救命センターにおける医療機関における調査が実施できない状況が継続しました。データ収集と解析に関する旅費、データサーバー維持費について繰越を依頼しました。厚生労働省の診療報酬情報(NDB)を用いた小児外傷の疫学のための研究では、研究計画通りに申請手続きを進めておりましたが、データ提供が令和4年と遅延いたしました。クリーニングのための外部委託費が必要となります。上記の主要な2研究のデータに基づき作成される予防策策定、教育教材作成も滞っておりまして、その製作費用についても繰越が必要となります。
各救急医療機関における調査につきましては、現在の流行状況より4月以降となります。研究期間としましては、令和4年12月までのデータ収集に加えて、解析時期を考慮し令和5年3月31日を予定しています。NDBを利用した研究は、クリーニングデータの入手が令和4年度4月頃となりますので、令和4年9月30日を完了予定日とします。予防策策定は、上記のデータを基盤に作成を致しますので、令和5年3月31日を予定といたします。

公開日・更新日

公開日
2024-04-12
更新日
-