在宅医療の事業継続計画(BCP)策定に係る研究

文献情報

文献番号
202106033A
報告書区分
総括
研究課題名
在宅医療の事業継続計画(BCP)策定に係る研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21CA2033
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
山岸 暁美(一般社団法人コミュニティヘルス研究機構 コミュニティヘルス研究部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
1,231,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新興感染症拡大や大規模災害時、さらにそれらの複合災害時等において、在宅医療の診療体制を維持し、早期の機能回復を図ることは喫緊の課題である。したがって、本研究で、在宅医療提供機関のBCP策定のための手引きを作成するとともに、BCP策定後の訓練・評価方法の開発を行う。
研究方法
以下の方法で、BCP 策定の手引き・テンプレート及びシミュレーション訓練キットの開発を行った。
1.協力機関の決定
2.BCP策定の手引き・テンプレートの開発
3.ワークショップの実施
4.訓練および評価指標の開発とトライアル訓練
5 . BCP 策定の手引き・テンプレートのブラッシュアップ
6 . BCP 策定の手引き・テンプレート・シミュレーション訓練キットの公開
(倫理面への配慮)本研究は、BCP 策定にあたっての技術的支援のマニュアルであり、特筆すべき配慮すべき倫理面の課題はない。
結果と考察
1.協力機関の決定
 ・日本在宅ケアアライアンス、全国在宅療養支援医協会、全国在宅療養支援診療所連絡会、日本在宅医療連合学会から、本研究で開発された手引きに沿って自機関のBCP策定に取り組む意思のある在宅療養支援病院9か所、在宅療養支援診療所17か所を推薦していただいた。2020年度に山岸が開催した訪問看護BCPプロジェクトの参加機関17か所と併せ、これらの機関は、BCP策定の手引開発分科会メンバーとして、本プロジェクトに参画いただくこととなった。

2.BCP策定の手引き・テンプレートの開発
・在宅医療提供機関(病院、診療所、訪問看護事業所)の3種類の手引き・テンプレートを開発した。
 ・本手引きは、医療・介護・福祉機関の強靭な再起力(Robust Resilience)を高めていくために、以下の3点を重視した構成とした。
1)オールハザード・アプローチを基調とすること
2)エスカレーションを組み込むこと
3)管理者(BCP策定者)がフロントランナーであるスタッフと、インタラクティブな(双方向の対話を積み重ねながら)策定プロセスをとり、マニュアル偏重にならないこと
・BCP策定のプロセスは、以下の8ステップを踏むこととした。
1) プログラムの導入と組織構築
2) リスクアセスメント
3) 緊急・初期対応(いわゆる災害対応マニュアル)
4) 業務影響分析 
5) 業務継続のための戦略
6) 業務継続計画(BCP)の開発と構築
7) 業務継続マネジメントBCM (演習・評価・維持プログラム含む)
8) 連携型BCPの作成/地域包括BCP策定への着手

3.ワークショップの実施
 ・以下の通りワークショップを実施した。
   ‐在宅医療を提供する診療所
      1回目:2022年2月13日(日) 9時~12時
      2回目:2022年2月27日(日) 9時~12時
      3回目:2022年3月13日(日) 9時~12時

    ‐在宅医療を提供する病院
      1回目:2022年2月13日(日) 14時~17時
      2回目:2022年2月27日(日) 14時~17時
      3回目:2022年3月13日(日) 14時~17時
    ‐訪問看護事業所
      訪問看護事業所は昨年度ワークショップ開催済のため、手引きのブラッシュアップ検討会を開催
      2022年3月22日19時~21時

4.訓練および評価指標の開発とトライアル訓練
 ・BCP策定後に実施する訓練のプログラム(シミュレーション訓練キット)の開発を行った。
 ・2022年3月、診療所・訪問看護ステーションにおいて、開発したシミュレーション訓練キットを用いた トライアルを行った。

5.BCP策定の手引き・テンプレートのブラッシュアップ
 ・ワークショップを経ての各分科会委員からの意見、またトライアル訓練参加者のフィードバックから、手引きおよびテンプレートのブラッシュアップを行った。

6.BCP策定の手引き・テンプレート・シミュレーション訓練キットの公開
・研究班ホームページを開設し、手引き、テンプレート(在宅医療を提供する病院版、在宅医療を提供する診療所版、訪問看護版)およびシミュレーション訓練キットを公開した。 http://healthcare-bcp.com/
結論
本研究で3種(在宅医療を提供する病院版、在宅医療を提供する診療所版、訪問看護版)の手引き・テンプレートおよびシミュレーション訓練キットを開発した。研究班ホームページ(http://healthcare-bcp.com/)に公開している。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-01-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202106033C

成果

専門的・学術的観点からの成果
発災後、需要が高まり、かつ緊急性があること、時間と共に需要が変化すること、そして、個別性の高い対人サービスであること、公益性、専門性が高いこと、地域社会性の中で役割や機能が決まること、さらに、自機関の業務継続が患者・利用者・住民のいのちや生活の継続に直結することなど、ヘルスケア領域の特徴を鑑みたBCP策定の手引きの開発が求められてきた。本研究が開発したBCP手引きは、BCPの専門家からのアドバイスを受けつつ、これまでの被災地における経験、研究知見を反映した初めてのヘルスケアBCPである。
臨床的観点からの成果
BCP 策定により、防ぎ得た災害関連死の約半数を阻止できる可能性があると報告されている。
とはいえ、在宅医療・ケア提供機関は小規模体が多い。つまり、自施設のBusiness Continuity Plan(以下、BCP)だけでは、有事対応は十分に機能せず、やはり平時からの近隣の事業所等との相互協力交渉や協定が必要となる。
普段の医療介護連携の延長線上に、この有事体制を構築していこうという現場の取り組みの推奨は、多くの地域で受け入れられ、実装がスタートしている。
ガイドライン等の開発
在宅医療を提供する病院、診療所および訪問看護の3 種のBCP 策定の手引き、テンプレートを作成した。また手引きに沿って策定したBCP を評価し改良するためのツールとして、シミュレーション訓練キットを開発した。2022年度医政局事業の研修にも当該手引き等を使用する予定である。
その他行政的観点からの成果
第8次医療計画等の在り方検討会、在宅医療・介護WGでも、在宅医療提供機関のBCPや当該班の開発したツールの紹介をすると同時に、今後、具体的検討の基礎資料として活用される予定である。
その他のインパクト
在宅医療・ケア提供機関のみならず、介護サービス機関からも、このBCPの考え方は現場にフィットするとの声が大きく、また地域包括ケアの文脈の中でBCPを作成していきたいという基礎自治体からの問い合わせが殺到している。また、日本在宅医療連合学会、日本在宅救急医学会など、学会でも特別シンポジウム等が催される予定である。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
8件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
13件
都道府県看護協会におけるBCP研修は、47都道府県中32か所で実施済

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
-
更新日
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収支報告書

文献番号
202106033Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,600,000円
(2)補助金確定額
1,600,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,157円
人件費・謝金 755,300円
旅費 139,400円
その他 334,400円
間接経費 369,000円
合計 1,603,257円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
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更新日
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