WHO検証・改革の動向把握及び我が国の戦略的・効果的な介入に資する総合的研究

文献情報

文献番号
202106005A
報告書区分
総括
研究課題名
WHO検証・改革の動向把握及び我が国の戦略的・効果的な介入に資する総合的研究
課題番号
21CA2005
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
城山 英明(東京大学 大学院公共政策学連携研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 勝間 靖(早稲田大学 国際学術院 大学院アジア太平洋研究科)
  • 鈴木 一人(東京大学 公共政策大学院)
  • 詫摩 佳代(東京都立大学 法学部)
  • 松尾 真紀子(東京大学 大学院公共政策学連携研究部)
  • 横堀 雄太(国立研究開発法人国立国際医療研究センター 国際医療協力局 研修課)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
5,419,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、様々な組織において同時進行で展開しつつあるWHO の検証・改革提案をフォローし、分析するとともに、行政担当者の問題意識も踏まえて調査研究を行うことで、研究の成果を日本の立場や強みを活かした提言のエビデンスとなることを目的とした。
研究方法
文献調査、ヒアリング調査を踏まえて、事実関係を整理したうえで、健康危機対応における分野横断的調整メカニズム、パンデミックにおける国際的に公正な医薬品へのアクセスのあり方、ポストコロナの国際レジームをめぐる方向性、多層化するグローバルヘルス・ガバナンスの現状と地域的協力、WHO におけるバイオマテリアル・GSD の取扱い、WHO 検証・改革に当たる WHO 加盟各国のスタンスの整理・分析に焦点を当てて、分析を進めた。
結果と考察
第 1 に、ワンヘルス・アプローチを必要とする課題等にみられるように調整されるべき課題の範囲が拡大していることを考えると、これまでの WHOに関連する様々なプラクティスも踏まえて、一般的な分野横断的組織の活用や国際組織間協定の活用を個別的課題に即して検討していく必要がある。第 2 に、早期に ACT アクセラレーターが設置され、COVAX ファシリティが立ち上げられたことは評価されるが、今後は途上国でのコールド・チェーンで管理しやすいワクチンを多数の場所から調達して、リスクを分散する体制や mRNA の技術を中所得国へ移転されるための地域拠点を設置する構想を実現していく必要がある。また、大
規模な公的資金が投入される際、関連の知的財産権の国際的な共有の仕組みとして、技術アクセス・プール(C-TAP)への製薬企業の参加を促す仕組みが必要である。第 3 に、パンデミック条約は「規制的」であるとともに「分配的」であることが求められるが、そのような新たな規範が成立するためには、規範を主導する「規範起業家」の役割が大きく、その「規範起業家」が多くの関係国をまとめて「分水嶺」を超えることで新たな規範が出来るのであるが、現状ではなかなか困難である。第 4 に、グローバルなレベルでの協力が困難な中で、国や地域などいわゆるサブレベルでの協力が重要である。地域レベルでの保健協力は歴史的に見れば、近隣であるという特性ゆえに、グローバルなレベルに先んじて発展し、またグローバルなレベルの枠組みと接点を持ちつつ、並行して発展してきており、グローバルなレベルと地域レベルでの保健協力は相互補完的に捉えられるべきであるし、グローバルな枠組みが多くの綻びを見せる中、近隣諸国との関係の重要性が増していると言える。第 5 に、BM(バイオマテリアル)やゲノムシーケンスデータ(GSD)のパンデミックの際の共有を進めていくためには、共有する対象範囲(データと付随情報の範囲、公開範囲)、共有の主体の範囲(データベースの利用条件、共有範囲)、共有の目的、共有の組織体制・制度設
計・品質チェック、共有のメカニズム・ABS との関係性等の検討が必要である。特に、GSD はABS の経験がなく、また、それに加えてデジタルデータであるという GSD 特有の課題がある。
さらに GSD 特有の課題として、すでに様々なデータベースが歴史的にも存在し利用されてきたこともある。第 6 に、WHO 強化に係る法的枠組みに関連する議論においては、EU と途上国を中心とした条約フレンズグループがパンデミック条約をまず策定する方向性を固めてから、その後条約要素の詳細を議論する流れを支持しているのに対して、米国は、まず IHR 改正や既存の枠組みの活用から取り組むべきで、これらがカバーできない課題に対して新たな法的枠組みを検討するべきとするスタンスであること、日本や豪・カナダ等の先進国やブラジル・中国などの中進国は概ね中立の立場であり、WHO 既存の業務の強化、IHR 改正、パンデミック条約いずれの議論に対してもオープンであることが明らかになった。
結論
新型コロナウイルス感染症対応の経験に基づく WHO を
中心とするグローバルヘルス・ガバナンスの改革については、今後もパンデミック条約の内容の具体化や WHO と世界銀行が関与する FIFの運営メカニズムの具体化等を巡って議論・交渉が継続すると思われる。本研究の成果は、そのようなプロセスにおいて、今後も活用されるものと考える。研究班に参加した研究者においても、国際的議論は現在進行形で行われており状況の変化も早いことから、今回構築された専門家と行政とのネットワークを通じて相互連携の継続的な展開も検討したい。このように、新型コロナウイルス感染症に対する WHO の対応や改革に関する研究成果をもとにエビデンスに基づいた政策推進をすることは、WHO をめぐる国際的施策の推進に関する社会の支持を得ることにも寄与すると考えている。

公開日・更新日

公開日
2022-06-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-06-22
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202106005C

収支報告書

文献番号
202106005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,041,000円
(2)補助金確定額
6,830,186円
差引額 [(1)-(2)]
210,814円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,504,593円
人件費・謝金 1,897,613円
旅費 0円
その他 1,805,980円
間接経費 1,622,000円
合計 6,830,186円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-06-22
更新日
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