結核菌に関する研究

文献情報

文献番号
200829011A
報告書区分
総括
研究課題名
結核菌に関する研究
課題番号
H18-新興・一般-012
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 誠也((財)結核予防会結核研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 坂谷 光則(独立行政法人国立病院機構近畿中央胸部疾患センター)
  • 徳永 修(独立行政法人国立病院機構南京都病院)
  • 前田 伸司((財)結核予防会結核研究所)
  • 御手洗 聡((財)結核予防会結核研究所)
  • 切替 照雄(国立国際医療センター)
  • 森  亨(国立感染症研究所ハンセン病研究センター)
  • 山岸 文雄(独立行政法人国立病院機構千葉東病院)
  • 磯部  哲(獨協大学法学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
54,150,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
多剤耐性結核の現状の把握、迅速診断法の開発、発生予防と適切な治療の推進、慢性排菌患者の医療提供・感染予防の推進、さらに小児結核の感染診断・医療提供の問題解決、HIV合併結核の現状把握を目的とする。
研究方法
主な方法として、①薬剤耐性調査:全国調査の実施、②分子疫学的研究:RFLPと同様の識別能を確保できるlocusの選定、③ダイレクトシークエンス法とラインプローブによる迅速診断技術の開発、④抗酸菌検査の精度管理:パネルテスト⑤保健所・主治医連絡システム、患者支援システムの開発と検証⑥診療システムの確立:全国アンケート調査、ガイドライン作成など⑦小児結核:QFTの感度・特異度⑧HIV合併結核:前向きHIV検査⑨長期入院患者:文献的考察
結果と考察
①薬剤耐性調査は予定検体数を確保し、中間データでは薬剤耐性率は減少している。②JATA(12)の識別能はRFLP法に及ばなかったが、1-2か所の高頻度変化部位を含めた15-16か所のlociによってRFLPと同様の識別能が得られた。③同定と薬剤耐性の迅速診断法の評価を実施中である。INH耐性に関する新たな領域の解析を行い22種類の変異を見出した。④INHとRFPの薬剤感受性は感度・特異度、一致率から総合的には十分な精度と考えられた。制度化に向けて認定制度や精度が低い施設への対処を検討する必要がある。⑤患者支援システムを活用によって共通の視点・内容で効果的な支援が可能になった。⑥2006年の新規入院以外の持続排菌MDRは97例でXDRが43.3%であった。30-50歳台に多く、関東及び近畿に多く分布していた。⑦小児の潜在性結核診断におけるQFTの感度は乳児例で低い可能性が示唆された。小児結核症例の検討より、感染源の受診の遅れ・診断の遅れ、LTBI治療適応の問題、医療機関の結核に対する認識の問題、重症例の受け入れ医療機関の問題等の課題が明らかになった。BCG骨炎症例の調査により、接種時期が生後3?6ヵ月に凝縮された影響が強く疑われた。⑧入院結核患者におけるHIV感染合併率は調査期間を補正後で0.37%であった。HIV診断が先行した例は約36%、潜在性結核感染症治療を受けていた例はなかった。⑨強制隔離に関する法的仕組みは患者の人身の自由を尊重した上で、科学的・社会的に合理的で正確・迅速な基準の設定、公正で慎重な手続きが必要である。
結論
多剤耐性結核の予防・診療の向上に結びつく成果があった。

公開日・更新日

公開日
2010-01-12
更新日
-

文献情報

文献番号
200829011B
報告書区分
総合
研究課題名
結核菌に関する研究
課題番号
H18-新興・一般-012
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 誠也((財)結核予防会結核研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 坂谷 光則(独立行政法人国立病院機構近畿中央胸部疾患センター)
  • 徳永 修(独立行政法人国立病院機構南京都病院)
  • 前田 伸司((財)結核予防会結核研究所)
  • 御手洗 聡((財)結核予防会結核研究所)
  • 切替 照雄(国立国際医療センター)
  • 森   亨(国立感染症研究所ハンセン病研究センター)
  • 山岸 文雄(独立行政法人国立病院機構千葉東病院)
  • 重藤 えり子(独立行政法人国立病院機構東広島医療センター)
  • 磯部 哲(獨協大学法学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
多剤耐性結核の現状の把握、迅速診断法の開発、発生予防と適切な治療の推進、慢性排菌患者の医療提供・感染予防の推進、さらに小児結核の感染診断・医療提供の問題解決、HIV合併結核の現状把握を目的とする。
研究方法
主な方法として、①薬剤耐性調査:全国調査の実施、②分子疫学的研究:RFLPと同様の識別能を確保できるlocusの選定、③ダイレクトシークエンス法とラインプローブによる迅速診断技術の開発、④抗酸菌検査の精度管理:パネルテスト⑤保健所・主治医連絡システム、患者支援システムの開発と検証⑥診療システムの確立:全国アンケート調査、ガイドライン作成など⑦小児結核:QFTの感度・特異度⑧HIV合併結核:前向きHIV検査⑨長期入院患者:文献的考察
結果と考察
①薬剤耐性調査は予定検体数を確保し、中間データでは薬剤耐性率は減少している。②JATA(12)の識別能はRFLP法に及ばなかったが、高頻度変化部位を含めたlociの追加でRFLPと同様の識別能が得られた。③PZA迅速診断法、同定と薬剤耐性の迅速診断法を開発。INH耐性に関する新たな領域の解析で22種類の変異を見出した。④人工痰を開発。薬剤感受性は総合的には十分な精度と考えられたが、制度化に向けて認定制度や精度が低い施設への対処の検討が必要。⑤患者支援システムを活用によって共通の視点・内容で効果的な支援が可能になった。⑥MDR全国調査、診療及び外科治療ガイドライン策定、RFP耐性遺伝子検査の活用、患者の原因遺伝子の解析。⑦小児のQFTは臨床診断には有用であるが、LTBI診断では乳児例で感度が低い可能性。小児結核症例の検討より、多くの課題が明らかになった。BCG骨炎症例は接種時期が生後3~6ヵ月に凝縮された影響が強く疑われた。⑧入院結核患者におけるHIV感染合併率は調査期間を補正後で0.37%であった。HIV診断が先行した例は約36%、潜在性結核感染症治療を受けていた例はなかった。⑨慢性排菌患者数は近年減少しているが、QOL感染防止の問題がある。オランダ・ドイツでは強制隔離の制度・施設が整備さえている。法的には患者の人身の自由を尊重した上で、科学的・社会的に合理的で正確・迅速な基準の設定、公正で慎重な手続きが必要。
結論
多剤耐性結核の予防・診療の向上に結びつく成果があった。

公開日・更新日

公開日
2010-01-12
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200829011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
・我が国における超多剤耐性結核のデータはWHO等で国際的に引用された。
臨床的観点からの成果
・PZAの薬剤感受性迅速検査キットは薬事法承認に向けた臨床研究に入っている。
ガイドライン等の開発
・小児のQFTに関する研究成果は「接触者検診の手引き」に反映される見込みである。
・「コッホ現象への対応」は刊行されて保健所等に配布され、活用されている。
その他行政的観点からの成果
・JATA(12)は地方衛生研究所の全国衛生微生物研究協議会でVNTRの標準として試用されることになった
・慢性排菌患者調査は平成20年12月5日に開催された第14回厚生科学審議会感染症分科会結核部会の資料として使われた。
・結核病床調査結果は平成20年12月5日に開催された第14回厚生科学審議会感染症分科会結核部会、平成21年3月に開催された東京都結核地域医療推進検討会の資料として使われた。
その他のインパクト
・長期入院患者・入院勧告に従わない患者に関する研究成果、多剤耐性結核及び超多剤耐性結核全国調査結果は平成21年3月5日ヤクルトホールで開催された全国結核対策推進会議で発表された

発表件数

原著論文(和文)
15件
原著論文(英文等)
13件
その他論文(和文)
24件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
51件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
その他成果(普及・啓発活動)
4件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sekiguchi J, Miyoshi-Akiyama T, Kirikae F et al
Detection of multidrug resistance in Mycobacterium tuberculosis.
J Clin Microbiol , 45 , 179-192  (2007)
原著論文2
Sekiguchi J, Nakamura T, Kirikae F et al
Development and evaluation of a line probe assay for rapid identification of pncA mutations in pyrazinamide-resistant Mycobacterium tuberculosis strains.
J Clin Microbiol , 45 , 2802-2807  (2007)
原著論文3
Huang Q, Tonge PJ, Kirikae T, et al
a novel target for tuberculosis drug discovery.
Curr Top Med Chem. , 7 , 527-543  (2007)
原著論文4
徳永 修、濱谷 舟、宮野前健 他
小児結核感染診断におけるQuantiFERON®TB-2Gの有用性に関する検討
日本小児呼吸器疾患学会雑誌 , 18 , 127-136  (2007)
原著論文5
徳永 修、濱谷 舟、宮野前 健 他
小児活動性結核症例におけるクォンティフェロンTB-2G反応性の検討
日本小児呼吸器疾患学会雑誌 , 19 (2) , 112-121  (2008)
原著論文6
永井仁美、下内 昭、高松 勇
大阪における小児結核症例検討会4年間の試み
日本小児呼吸器疾患学会雑誌 , 19 (2) , 130-136  (2008)
原著論文7
森 亨、山内祐子
BCG接種副反応としての皮膚病変の最近の傾向
結核 , 84 (3) , 100-115  (2009)
原著論文8
鹿住祐子、前田伸司、菅原勇
rpoB遺伝子と16S rRNA解析による抗酸菌同定の試み
結核 , 81 , 511-518  (2006)
原著論文9
Wada T, Maeda S, Hase A et al
Evaluation of Variable Numbers of Tandem Repeat as Molecular Epidemiological Markers of Mycobacterium tuberculosis in Japan
J Med Microbiol , 56 , 1052-1067  (2007)
原著論文10
Murase Y, Mitarai S, Sugawara I et al
Promising loci of variable numbers of tandem repeats for typing Beijing family Mycobacterium tuberculosis
J Med Microbiol. , 57 , 873-880  (2008)
原著論文11
前田伸司、村瀬良朗、御手洗聡 他
国内結核菌型別のための迅速・簡便な反復配列多型(VNTR)分析システム -JATA(12)-VNTR分析法の実際-
結核 , 83 , 673-678  (2008)
原著論文12
Wada T, Iwamoto T, Maeda S
Genetic diversity of the Mycobacterium tuberculosis Beijing family in EastAsia revealed through refined population structure analysis
FEMS Microbiol Lett , 291 , 35-43  (2009)
原著論文13
山田博之,松本宏子,御手洗聡
ポリアクリルアミドを用いた人工痰の長期保存性と塗抹鏡検所見の再現性
結核 , 83 , 65-71  (2008)
原著論文14
Tuberculosis Research Committee (RYOKEN)
Drug resistant Mycobacterium tuberculosis in Japan: A nationwide surveillance in 2002
Int J Tuber Lung Dis , 11 , 1129-1135  (2007)
原著論文15
Abe C, Kobayashi I, Mitarai S et al
Biological and molecular characteristics of Mycobacterium tuberculosis clinical isolates with low-level resistance to isoniazid in Japan.
J Clin Microbiol , 46 , 2263-2268  (2008)
原著論文16
吉田志緒美、鈴木克洋、露口一成
結核菌の分子疫学的解析
結核 , 82 (6) , 531-538  (2006)
原著論文17
吉田志緒美、鈴木克洋、露口一成
薬剤感受性検査でRFP感受性、line probe assayでRFP耐性となる結核菌の検討
結核 , 83 (8) , 577-583  (2007)
原著論文18
吉田志緒美、鈴木克洋、露口一成
遺伝子を用いた抗酸菌鑑別同定試薬INNO-LiPA MYCOBACTERIA v2の有用性の検討
結核 , 84 (1) , 15-21  (2009)
原著論文19
大友幸二, 水野和重, 御手洗聡
結核療法研究協議会2002年度入院時結核菌薬剤感受性に関する研究: 検査精度の検討
結核 , 82 , 155-164  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-08-04
更新日
-