幼児期・思春期における生活習慣病の概念、自然史、診断基準の確立及び効果的介入方法に関するコホート研究

文献情報

文献番号
200825013A
報告書区分
総括
研究課題名
幼児期・思春期における生活習慣病の概念、自然史、診断基準の確立及び効果的介入方法に関するコホート研究
課題番号
H18-循環器等(生習)・一般-049
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
吉永 正夫(国立病院機構鹿児島医療センター (循環器・がん専門施設) 小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 堀米 仁志(筑波大学大学院人間総合科学研究科 臨床医学系小児科)
  • 徳田 正邦(徳田こどもクリニック)
  • 高橋 秀人(筑波大学大学院人間総合科学研究科(医学)・(兼)次世代医療研究開発・教育統合センター 疫学・医学統計学)
  • 伊藤 善也(日本赤十字北海道看護大学基礎科学講座 小児科学)
  • 宮崎 あゆみ(社会保険高岡病院 小児科)
  • 篠宮 正樹(医療法人社団 西船内科)
  • 馬場 礼三(愛知医科大学 小児科学)
  • 大関 武彦(浜松医科大学 小児科学)
  • 岡田 知雄(日本大学医学部 小児科)
  • 内山 聖(新潟大学大学院医歯学総合研究科内部環境医学講座 小児科学分野)
  • 花木 啓一(鳥取大学医学部保健学科 母性・小児家族看護学講座)
  • 原 光彦(東京都立広尾病院 小児科)
  • 城ヶ崎 倫久(国立病院機構鹿児島医療センター(循環器・がん専門施設)臨床研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
19,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
小児の肥満形成期である幼児期と思春期を対象に包括的データ収集を行い、個々の生活習慣病(内臓肥満、高血圧、高中性脂肪血症、低HDL-コレステロール血症、空腹時高血糖)の概念、自然史、頻度、病態を解明し、診断基準を確立すること。
研究方法
平成20年度(最終年度)において、新たに高校生712名、幼児と保護者53組の生活習慣病に関する包括的なデータ収集を行なった。また全国24,116名の幼児のアンケートから幼児と保護者の生活習慣を解析した。3年間のデータの統計学的解析も行ない、下記の結果を得た。
結果と考察
1. 思春期(高校生)については、エビデンスに基づいた個々の生活習慣病の診断基準値と思春期の生活習慣病一次予防のための提言を作成した。
2. 生活習慣病の個数が1個増加する毎に全ての生活習慣病(因子)値が有意に悪化しており、思春期では一次予防が重要と考えられた。
3. 高校生の心血管危険因子に、本人の生活習慣、食習慣が極めて強い影響を持っていた。特に運動習慣は心血管危険因子の改善に大きく影響していた。
4.小児期・思春期の一般集団を対象にする場合、心血管危険因子の集積予測にはレプチン値が有用であった。
5. 幼児期においても、生活習慣病は凝固促進・線溶低下指標やレプチンと相関しており、これらの因子が生活習慣病の進展に関与していると考えられた。
6. 幼児の生活習慣の悪化は保護者の長いTV視聴時間、朝食欠食や喫煙など保護者の生活習慣と強く関連していた。幼児期の一次予防のためには保護者への介入が必要である。
結論
ボランティア高校生の包括的なデータから思春期の生活習慣病の病態、概念、自然史が正確に把握でき、生活習慣病の診断基準値および生活習慣病一次予防のための提言を作成した。大規模集団からのエビデンスに基づいた診断基準値の作成と提言は世界で初めてのことと考えられる。本提言の内容により高校生に具体的介入を行い、思春期における生活習慣病予防ができることを証明する必要がある。証明できれば成人期の生活習慣病予防に繋がり、国民の健康、厚生労働省行政に大きく貢献できる。
幼児期の生活習慣アンケートは全国から数万人規模で収集でき、現時点での幼児と保護者の生活習慣を詳細に検討できた。幼児期においても、全国で生活習慣病検診の必要性が認識されつつあり、参加者を増やし家庭でできる生活習慣病予防のガイドラインを作成したい。

公開日・更新日

公開日
2009-05-13
更新日
-

文献情報

文献番号
200825013B
報告書区分
総合
研究課題名
幼児期・思春期における生活習慣病の概念、自然史、診断基準の確立及び効果的介入方法に関するコホート研究
課題番号
H18-循環器等(生習)・一般-049
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
吉永 正夫(国立病院機構鹿児島医療センター (循環器・がん専門施設) 小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 善也(日本赤十字北海道看護大学基礎科学講座 小児科学)
  • 馬場 礼三(愛知医科大学 小児科学)
  • 大関 武彦(浜松医科大学 小児科学)
  • 岡田 知雄(日本大学医学部 小児科)
  • 内山 聖(新潟大学大学院医歯学総合研究科内部環境医学講座 小児科学分野)
  • 篠宮 正樹(医療法人社団 西船内科)
  • 徳田 正邦(徳田こどもクリニック)
  • 花木 啓一(鳥取大学医学部保健学科 母性・小児家族看護学講座)
  • 堀米 仁志(筑波大学大学院人間総合科学研究科 臨床医学系小児科)
  • 原 光彦(東京都立広尾病院 小児科)
  • 城ヶ崎 倫久(国立病院機構鹿児島医療センター(循環器・がん専門施設) 臨床研究部)
  • 宮崎 あゆみ(社会保険高岡病院 小児科)
  • 高橋 秀人(筑波大学大学院人間総合科学研究科(医学)・(兼)次世代医療研究開発・教育統合センター 疫学・医学統計学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
小児の肥満形成期である幼児期と思春期を対象に包括的データ収集を行い、個々の生活習慣病(内臓肥満、高血圧、高中性脂肪血症、低HDL-コレステロール血症、空腹時高血糖)の概念、自然史、頻度、病態を解明し、診断基準を確立すること。
研究方法
平成18年度から平成20年度までの研究において、幼児期および思春期の生活習慣病に関する包括的なデータ収集を行い、下記の結果を得た。
結果と考察
1. 思春期(高校生)については、エビデンスに基づいた個々の生活習慣病の診断基準値と思春期の生活習慣病一次予防のための提言を作成した。
2. 生活習慣病の個数が1個増加する毎に全ての生活習慣病(因子)値が有意に悪化しており、思春期では一次予防が重要と考えられた。
3. 高校生の心血管危険因子に、本人の生活習慣、食習慣が極めて強い影響を持っていた。特に運動習慣は心血管危険因子の改善に大きく影響していた。
4.小児期・思春期の一般集団を対象にする場合、心血管危険因子の集積予測にはレプチン値が有用であった。
5. 幼児期においても、生活習慣病は凝固促進・線溶低下指標やレプチンと相関しており、これらの因子が生活習慣病の進展に関与していると考えられた。
6. 幼児の生活習慣の悪化は保護者の長いTV視聴時間、朝食欠食や喫煙など保護者の生活習慣と強く関連していた。幼児期の一次予防のためには保護者への介入も重要である。
結論
ボランティア高校生の包括的なデータから思春期の生活習慣病の病態、概念、自然史が正確に把握でき、生活習慣病の診断基準値および生活習慣病一次予防のための提言を作成した。大規模集団からのエビデンスに基づいた診断基準値の作成と提言は世界で初めてのことと考えられる。本提言の内容により高校生に具体的介入を行い、思春期における生活習慣病予防ができることを証明する必要がある。証明できれば成人期の生活習慣病予防に繋がり、国民の健康、厚生労働省行政に大きく貢献できる。
幼児期の生活習慣アンケートは全国から数万人規模で収集でき、現時点での幼児と保護者の生活習慣を詳細に検討できた。幼児期においても、全国で生活習慣病検診の必要性が認識されつつあり、参加者を増やし家庭でできる生活習慣病予防のガイドラインを作成したい。

公開日・更新日

公開日
2009-03-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200825013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
高校生においてはボランティア1,500名の生活習慣病検診から生活習慣病の病態、概念、自然史が正確に把握でき、生活習慣病の診断基準値と一次予防のための提言を作成できた。幼児・保護者ペアの検診も行い、幼児期の生活習慣病の病態解明が進み、基準値(暫定値)を作成した。
思春期において、大規模集団からのエビデンスに基づいた診断基準値の作成と提言は世界で初めてのことである。幼児期のデータは少ないが、これも世界で初めてのことと考えられる。至急、論文として発表していく。
臨床的観点からの成果
思春期(高校生)の心血管危険因子値と現在の生活習慣というエビデンスに基づいて提言が作られた意義は大きい。また、24,000名もの幼児の生活習慣アンケートから幼児と保護者の生活習慣の密接な関係が証明された。
エビデンスに基づいた思春期の生活習慣病一次予防の提言は世界的に初めてのことであり、また数万人単位のアンケートからの幼児の生活習慣の解析も稀である。今後、高校生あるいは幼児期の生活習慣病予防介入に大きく貢献すると考えられる。至急、論文として発表していく。
ガイドライン等の開発
『思春期(高校生)の生活習慣病予防に関する提言-ガイドライン策定に向けて-』を作成した。内容は1) 運動習慣を身につけよう;可能なら運動系部活に参加しよう、運動系部活に参加していない場合は休日に60分以上運動しよう、2) テレビやテレビゲームから離れよう;平日は1日50分以内、休日は1日100分以内に、テレビから離れよう、テレビを消そう、3) よい食習慣を身につけよう;朝食を毎日とろう、食物繊維を積極的に摂取しよう、4) 腹囲が80 cmを超えたら、医療機関に相談しよう、とした。
その他行政的観点からの成果
思春期(高校生)の生活習慣病一次予防に関する提言の内容により高校生に具体的介入を行い、思春期における生活習慣病予防ができることが、証明できれば成人期の生活習慣病予防に繋がり、国民の健康、厚生労働省行政に大きく貢献できる。
幼児期の生活習慣病の改善には保護者の生活習慣病への介入が必要であるが、幼児と保護者の改善が同時にできる可能性がある。幼児期への介入は国民の健康、厚生労働省行政に大きく貢献する。
その他のインパクト
1) 公開講座開催;聞いてみませんか?『幼児期から熟年期までのメタボリックシンドローム』(H19.2.10)
2) 新聞掲載;産経新聞1回 (H19.2.28)、読売新聞1回 (H19.2.16)、北日本新聞1回 (H20.4.15)、南日本新聞6回、リビング鹿児島3回 (H19.8.25, H20.8.9, H20.8.25)
3) 特別講演・教育講演;吉永正夫12回、伊藤善也6回、内山 聖2回、篠宮正樹31回、原 光彦9回、宮崎あゆみ3回

発表件数

原著論文(和文)
11件
原著論文(英文等)
32件
その他論文(和文)
28件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
39件
学会発表(国際学会等)
9件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
63件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yoshinaga M, Sameshima K, Tanaka Y, et al.
Adipokines and the Prediction of the Accumulation of Cardiovascular Risk Factors or the Presence of Metabolic Syndrome in Elementary School Children
Circ J , 72 (11) , 1874-1878  (2008)
原著論文2
田所直子,松岡かおり,栗林伸一,他
高校生の健診における内臓脂肪の蓄積
肥満研究 , 14 (1) , 57-63  (2008)
原著論文3
栗林伸一,篠宮正樹,田所直子,他
高校1年生におけるアディポサイトカイン;腹囲身長比,糖・脂質代謝パラメーターとの関連
肥満研究 , 14 (2) , 128-135  (2008)
原著論文4
Katayama Y, Horigome H, Takahashi H, et al.
Determinants of blood rheology in healthy adults and children using the microchannel array flow analyzer
Clin Appl Thromb-Hem , 16 (4) , 414-421  (2009)
原著論文5
Yoshinaga M, Ichiki T, Tanaka Y, et al.
Prevalence of childhood obesity from 1978 to 2007 in Japan
Pediatr Int , 52 (4) , 213-217  (2010)
原著論文6
宮崎あゆみ,吉永正夫,篠宮正樹,他
高校生を対象としたメタボリックシンドローム予防健診-鹿児島県・千葉県・富山県における健診結果の比較-
肥満研究 , 15 (2) , 217-221  (2009)
原著論文7
宮崎あゆみ、吉永正夫、深島丘也,他
高校生の生活習慣病予防健診
日本小児科学会雑誌 , 113 (11) , 1687-1694  (2009)
原著論文8
吉永正夫、鮫島幸二、金蔵章子,他
小児期肥満治療の介入成績と治療の費用対効果に関する研究
肥満研究 , 15 (3) , 286-290  (2009)
原著論文9
Tadokoro N, MD, Shinomiya M, Yoshinaga M,et al.
Visceral fat accumulation in Japanese high school students and related atherosclerotic risk factors
J Atheroscler Thromb , 17 (6) , 546-557  (2010)
原著論文10
Yoshinaga M, Takahashi H , Shinomiya M,et al.
Impact of having one cardiovascular risk factor on other cardiovascular risk factor levels in adolescents
J Atheroscler Thromb , 17 (11) , 1165-1175  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-