進行性大腸がんに対する低侵襲治療法の確立に関する研究

文献情報

• 文献番号: 200824013A
• 報告書区分: 総括
• 研究課題名: 進行性大腸がんに対する低侵襲治療法の確立に関する研究
• 課題番号: H18-がん臨床・一般-013
• 研究年度: 平成20(2008)年度
• 研究代表者(所属機関): 北野 正剛(大分大学医学部 外科第一)

研究分担者(所属機関)

• 森谷　宜皓(国立がんセンター中央病院大腸外科)
• 小西　文雄(自治医科大学附属さいたま医療センター外科)
• 杉原　健一(東京医科歯科大学腫瘍外科)
• 渡邊　昌彦(北里大学医学部外科)
• 齋藤　典男(国立がんセンター東病院大腸骨盤外科)
• 福永　正氣(順天堂大学医学部附属浦安病院外科)
• 工藤　進英(昭和大学横浜市北部病院消化器センター)
• 正木　忠彦(杏林大学医学部消化器一般外科)
• 長谷川　博俊(慶應義塾大学医学部一般消化器外科)
• 斉田　芳久(東邦大学医学部附属大橋病院外科学第三講座)
• 佐藤　武郎(北里大学東病院消化器外科)
• 山口　高史(国立病院機構京都医療センター外科)
• 伴登　宏行(石川県立中央病院一般消化器外科)
• 宗像　康博(長野市民病院外科)
• 齊藤　修治(静岡県立静岡がんセンター大腸外科)
• 前田　耕太郎(藤田保健衛生大学消化器外科)
• 森　正樹(大阪大学医学部消化器外科)
• 谷川　允彦(大阪医科大学医学部一般消化器外科)
• 岡島　正純(広島大学大学院内視鏡外科学講座)
• 久保　義郎(国立病院機構四国がんセンター消化器科)
• 藤井　正一(横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器病センター)
• 村田　幸平(市立吹田市民病院外科)
• 安井　昌義(国立病院機構大阪医療センター外科)

• 研究区分: 厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
• 研究開始年度: 平成18(2006)年度
• 研究終了予定年度: 平成20(2008)年度
• 研究費: 43,999,000円
• 研究者交替、所属機関変更: -

研究報告書（概要版）

研究目的

腹腔鏡下手術は、導入初期には早期大腸がんのみを適応としていたが、遠隔成績から見た信頼性は未だ明確にされていないのが現状である。従って、進行大腸がんに対する腹腔鏡下手術の遠隔成績を明らかにし根治性が保持されうることを確認し、本術式の妥当性を明らかにすることは不可欠な状況である。本研究班では、昨年度に引き続き、進行大腸がんに対する腹腔鏡下手術と開腹手術との遠隔成績をランダム化比較試験を行いその有用性を評価することを目的とする。

研究方法

１.初年度に作成し承認されたプロトコールコンセプトに基づき、ランダム化比較試験の実施を行　
　 う。
２.患者の理解度を高めランダム化比較試験の症例集積性を高めるための工夫を行う。
３.臨床試験のQuality Control / Quality Assuranceを高める対策を行う。
４.インフォームド・コンセントの結果の現状を明確にする。
５.臨床試験の結果の中間解析を行なう。

結果と考察

本年度は進行大腸がんに対する腹腔鏡下手術と開腹手術との根治性に関するランダム化比較試験の３年計画の３年目であり、以下の７つの大きな研究成果を得た。（１）本臨床試験は2004年10月に登録開始し、2009年3月に登録目標の1050例に到達。（２）5月および3月に班会議を開催。本臨床試験の実際上の問題点を議論。（３）手術手技のRCTでは、登録全症例の手術写真の中央判定を施行。班会議にても施設間の手術手技の供覧を施行。（４）ビデオ・DVDを用いるなど、わかりやすい臨床試験の説明をすることでIC取得率向上につなげた。（５）年2回にわたるIC取得に関するアンケート調査を行った。（６）本研究成果の内容の一部を第11回世界内視鏡外科学会にて報告。（７）９月に第１回中間解析を行い、標準治療群（開腹手術）および試験治療群（腹腔鏡下手術）のいずれも安全性に問題は認めなかった。

結論

わが国の進行大腸がんに対する腹腔鏡下手術の長期成績を明らかにすることは、進行大腸がんに対する標準手術としての腹腔鏡下手術の位置づけを明確化することにつながる。さらに、腹腔鏡下手術がもたらす術後在院日数の短縮や早期社会復帰は、医療費の適正化、医療経済の面からも社会貢献できると考えられる。本臨床研究において、質の高いプロトコールの作成と高い倫理性に基づいた患者説明文書およびビデオなどのメディア作成、さらに手術手技のQuality control / Quality assuranceのため手術写真による中央判定委員会の設置、手術担当責任医の規定など、本臨床研究の遂行に有用と考えられた。

公開日・更新日

• 公開日: 2009-04-16
• 更新日: -

文献情報

• 文献番号: 200824013B
• 報告書区分: 総合
• 研究課題名: 進行性大腸がんに対する低侵襲治療法の確立に関する研究
• 課題番号: H18-がん臨床・一般-013
• 研究年度: 平成20(2008)年度
• 研究代表者(所属機関): 北野 正剛(大分大学医学部 外科第一)

研究分担者(所属機関)

• 森谷　冝皓(国立がんセンター中央病院大腸外科)
• 小西　文雄(自治医科大学附属さいたま医療センター外科)
• 杉原　健一(東京医科歯科大学腫瘍外科)
• 渡邊　昌彦(北里大学医学部外科)
• 齋藤　典男(国立がんセンター東病院大腸骨盤外科)
• 福永　正氣(順天堂大学医学部付属浦安病院外科)
• 工藤　進英(昭和大学横浜市北部病院消化器センター)
• 正木　忠彦(杏林大学医学部消化器一般外科)
• 長谷川　博俊(慶應義塾大学医学部一般消化器外科)
• 斉田　芳久(東邦大学医学部附属大橋病院外科学第三講座)
• 佐藤　武郎(北里大学東病院消化器外科)
• 山口　高史(国立病院機構京都医療センター外科)
• 伴登　宏行(石川県立中央病院一般消化器外科)
• 宗像　康博(長野市民病院外科)
• 齊藤　修治(静岡県立静岡がんセンター大腸外科)
• 前田　耕太郎(藤田保健衛生大学消化器外科)
• 森　正樹(大阪大学医学部消化器外科)
• 谷川　允彦(大阪医科大学医学部一般消化器外科)
• 岡島　正純(広島大学大学院内視鏡外科学講座)
• 久保　義郎(国立病院機構四国がんセンター消化器科)
• 藤井　正一(横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器病センター)
• 村田　幸平(市立吹田市民病院外科)
• 安井　昌義(国立病院機構大阪医療センター外科)
• 炭山　嘉伸(東邦大学医学部附属大橋病院外科学第三講座)
• 門田　守人(大阪大学大学院病態制御外科)
• 山田　英夫(東邦大学医学部附属佐倉病院内視鏡治療センター)
• 國場　幸均(北里大学東病院消化器外科)
• 山口　茂樹(静岡県立静岡がんセンター大腸外科)
• 東野　正幸(大阪市立総合医療センター消化器外科)
• 石井　正之(静岡県立静岡がんセンター大腸外科)
• 宮島　伸宣(帝京大学溝口病院外科)

• 研究区分: 厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
• 研究開始年度: 平成18(2006)年度
• 研究終了予定年度: 平成20(2008)年度
• 研究者交替、所属機関変更: -

研究報告書（概要版）

研究目的

腹腔鏡下手術は、導入初期には早期大腸がんのみを適応としていたが、遠隔成績から見た信頼性は未だ明確にされていないのが現状である。従って、進行大腸がんに対する腹腔鏡下手術の遠隔成績を明らかにし根治性が保持されうることを確認し、本術式の妥当性を明らかにすることは不可欠な状況である。本研究班では、昨年度に引き続き、進行大腸がんに対する腹腔鏡下手術と開腹手術との遠隔成績をランダム化比較試験を行いその有用性を評価することを目的とする。

研究方法

１.初年度に作成し承認されたプロトコールコンセプトに基づき、ランダム化比較試験の実施を行
う。
２.患者の理解度を高めランダム化比較試験の症例集積性を高めるための工夫を行う。
３.臨床試験のQuality Control / Quality Assuranceを高める対策を行う。
４.インフォームド・コンセントの結果の現状を明確にする。
５.臨床試験の結果の中間解析を行なう。

結果と考察

。（１）年間の登録症例は平均280例であり、2009年3月に総登録数は目標の1050例に到達。（２）年間2回の班会議を開催。（３）Quality control/Quality assuranceの確保のため、登録全症例の手術写真の中央判定を施行。（４）IC取得に関するアンケート調査を施行。（5）９月に中間解析を行い、標準治療群（開腹手術）および試験治療群（腹腔鏡下手術）の　治療成績を明らかにした。（6）本研究の成果を第16回ヨーロッパ内視鏡外科学会（6月、ストックホルム）、第11回世界内視鏡外科学会（9月、横浜）にて報告した。
登録総数1050例という手術療法RCTとしては国内外で類を見ない大規模第III相試験が実現できた。症例集積において、本臨床研究で初めて採用した患者説明用メディアや手術担当責任医の認定などが有用であると考えている。

結論

わが国の進行大腸がんに対する腹腔鏡下手術の長期成績を明らかにすることは、進行大腸がんに対する標準手術としての腹腔鏡下手術の位置づけを明確化することにつながる。さらに、腹腔鏡下手術がもたらす術後在院日数の短縮や早期社会復帰は、医療費の適正化、医療経済の面からも社会貢献できると考えられる。本臨床研究において、質の高いプロトコールの作成と高い倫理性に基づいた患者説明文書およびビデオなどのメディア作成、さらに手術手技のQuality control / Quality assuranceのため手術写真による中央判定委員会の設置、手術担当責任医の規定など、本臨床研究の遂行に有用と考えられた。

公開日・更新日

• 公開日: 2009-04-16
• 更新日: -

行政効果報告

• 文献番号: 200824013C

成果

• 専門的・学術的観点からの成果: 進行大腸がんに対する治療法として、腹腔鏡下手術が、従来の開腹手術と比較して、根治性や安全性の面での同等性および低侵襲性を示しうるかを多施設共同ランダム化比較試験（JCOG0404）第III相試験を実施した。本研究デザインについては、Japanese Journal of Clinical Oncology, 2005; 35(8): 475-477に論文掲載されている。また本研究情報の公開をインターネット上でClinicalTrials. gov.およびUMINにて行っている。
• 臨床的観点からの成果: 進行大腸がんにおける腹腔鏡下手術と開腹手術とのランダム化比較試験（JCOG0404）を実施し、1050症例の登録を終了した。手術療法の第III相試験としては国内外で最大規模の臨床研究として以下の５つの特色を示した。IC取得率向上のために患者説明ビデオの作成、ＩＣ取得アンケート実施、手術手技のQuality controlとして手術写真の中央判定評価システム導入、参加施設および術者の基準等の設定などその特色を示すことができた。
• ガイドライン等の開発: 「大腸癌治療ガイドライン医師用」のII. 治療法の種類と治療法の解説の項目で、「腹腔鏡手術」の解説において本研究（phaseIII）の実施について記載されている。「大腸癌治療ガイドライン医師用；19,2005」また、2008年作成の日本内視鏡外科学会「内視鏡外科治療ガイドライン」にも本研究成果が引用されている。
• その他行政的観点からの成果: 政府の医療費削減政策として、在院日数短縮は重要な目標である。本研究において大腸がんに対する腹腔鏡下手術が、進行がんにおいても低侵襲治療としての役割を発揮し、入院期間の短縮や早期社会復帰を促すことが可能かどうかを評価し、行政的観点からの貢献度を明確にする。
• その他のインパクト: （１） おおいた市民公開講座―大腸がんになったらどうする？ 大分大学医学部・日本対がん協会共催、2006年10月開催（大分市いいちこグランシアター）; （２） 進行結腸癌に対する腹腔鏡下手術－厚生労働省班研究に基づく本邦の現況－.; 日本内視鏡外科学会雑誌, 2008, 13(1): 47-53．

発表件数

• 原著論文（和文）: 2件
• 原著論文（英文等）: 3件
• その他論文(和文): 1件
• その他論文(英文等): 1件
• 学会発表(国内学会): 1件
• 学会発表(国際学会等): 4件 ; 2007.7, EAES Seigo Kitano et al. 2008.6, EAES Masafumi Inomata et al.
• その他成果(特許の出願): 0件 ; 「出願」「取得」計0件
• その他成果(特許の取得): 0件
• その他成果(施策への反映): 1件 ; 日本内視鏡外科学会治療ガイドライン（2008年版）に引用
• その他成果(普及・啓発活動): 1件 ; おおいた市民公開講座開催（2008年10月、大分市）

主な原著論文20編（論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る）

• 原著論文1: Kitano S, Kitajima M , Konishi F, et al.; A multicenter study on laparoscopic surgery for colorectal cancer in Japan. ; Surg Endosc , 20 (9) , 1348-1352 (2006)
• 原著論文2: Kitano S, Shiraishi N, Sugihara K, et al.; A multicenter study on oncologic outcome of laparoscopic gastrectomy for early cancer in Japan. ; Ann Surg , 245 (1) , 68-72 (2007)

公開日・更新日

• 公開日: 2015-06-02
• 更新日: -