進行肝細胞癌に対する集学的治療確立に関する研究

文献情報

文献番号
200824012A
報告書区分
総括
研究課題名
進行肝細胞癌に対する集学的治療確立に関する研究
課題番号
H18-がん臨床・一般-012
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
門田 守人(大阪大学)
研究分担者(所属機関)
  • 平田 公一(札幌医科大学・分子器官制御医学)
  • 山本 和秀(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科・消化器・肝臓・感染症内科)
  • 金子 周一(金沢大学大学院医学系研究科・がん制御学)
  • 田中 正俊(久留米大学医学部附属医療センター・消化器科)
  • 久保 正二(大阪市立大学大学院医学研究科・肝胆膵外科学)
  • 中村 秀次(兵庫医科大学内科学 肝・胆・膵科)
  • 板本敏行(広島大学大学院医歯薬学総合研究科・先進医療開発科学講座外科学)
  • 辻 晃仁(高知医療センター・医療局化学療法科)
  • 小尾俊太郎(財団法人佐々木研究所・杏雲堂病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
22,698,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肝細胞癌は極めて予後不良であり、特に遠隔転移などをともなう進行肝細胞癌は治療の対象外とされ、標準治療が全く無い。このような既存治療が奏効しない、高度進行肝癌に対する新しい治療法の開発は、肝細胞癌全体の予後向上に寄与することは間違いない。
そこで、進行肝癌に対する集学的治療の確立を目的として、臨床、基礎の両面より以下の研究を継続施行した。
研究方法
1. 臨床的検討
治療抵抗性進行肝癌に対するS-1・IFN併用化学療法の有効性
上記治療法の有効性の確認を目的とし、肝細胞癌治療後肝外病変を有する症例を対象として、5-FU系の経口抗癌剤(S-1)投与を基本治療として、IFNの有無によるRCTの施行を計画した。予定症例数は各群60例の計120例とした。
2. 基礎的検討
IFN-α/5-FU併用療法における血管新生抑制効果
IFN併用化学療法の抗腫瘍効果の機序の一つとして血管新生に着目し、ヒト肝癌細胞株皮下腫瘍モデルを作成し、PCNA index, TUNEL index、腫瘍内microvessel density(MVD)を検討した。また、腫瘍内VEGF, Ang-1, Ang-2の発現解析も施行した。
結果と考察
1. 臨床的検討
平成19年6月1日より症例登録を開始し、平成21年3月31日時点で全国44施設が施設登録され、84例の症例が登録された。各群20例、合計40例のプロトコル治療を終了した時点で、中間解析を施行した。独立データモニタリング委員会にて、中間解析段階での有効性と安全性を総合的に評価した結果、試験継続の勧告を受けた。
2. 基礎的検討
IFN-α/5-FU併用療法は、Control、IFN-α、5-FUと比較して有意に腫瘍の縮小を認めた。腫瘍内のPCNA index 、TUNEL index、MVDは、有意に併用群で低下を認めた。また、併用群における腫瘍内VEGF、Ang-2発現の低下とAng-1の増加を認めた。
これらのの結果よりIFN併用化学療法の抗腫瘍効果の一つとして、血管新生抑制効果を有することが示された。
結論
肝細胞癌の標準的化学療法の確立のため、今後も症例の登録を継続し本臨床試験を完遂することが重要であるとともに、IFN併用化学療法の効果予測確立や作用機序解明のため、さらなる基礎的検討が必要である。

公開日・更新日

公開日
2009-07-08
更新日
-

文献情報

文献番号
200824012B
報告書区分
総合
研究課題名
進行肝細胞癌に対する集学的治療確立に関する研究
課題番号
H18-がん臨床・一般-012
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
門田 守人(大阪大学)
研究分担者(所属機関)
  • 平田公一(札幌医科大学・分子器官制御医学)
  • 山本和秀(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科・消化器・肝臓・感染症内科)
  • 金子周一(金沢大学大学院医学系研究科・がん制御学)
  • 田中正俊(久留米大学医学部附属医療センター・消化器科)
  • 久保正二(大阪市立大学大学院医学研究科・肝胆膵外科学)
  • 中村秀次(兵庫医科大学内科学 肝・胆・膵科)
  • 板本敏行(広島大学大学院医歯薬学総合研究科・先進医療開発科学講座外科学)
  • 辻晃仁(高知医療センター・医療局化学療法科)
  • 小尾俊太郎(財団法人 佐々木研究所 杏雲堂病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国民病とも言われるウイルス性肝炎の終末像である肝細胞癌は予後不良である。特に、遠隔転移などをともなう進行肝細胞癌は治療の対象外とされ、標準的な治療が全く無く、また新しい治療の開発も積極的にはなされていないのが現状である。このような既存の治療が奏効しない、高度進行肝癌に対する新しい治療法の開発は、肝細胞癌全体の予後向上に寄与することは間違いがない。そこで、臨床、基礎の両面より、進行肝癌に対する集学的治療の確立を目的として、以下の研究を施行した。
研究方法
1. 臨床的検討
治療抵抗性進行肝癌に対するS-1・IFN併用化学療法の有効性
上記治療法の有効性の確認を目的とし、肝細胞癌治療後肝外病変を有する症例を対象として、5-FU系の経口抗癌剤(S-1)投与を基本治療とし、IFNの有無によるRCTの施行を計画した。予定症例数は各群60例の計120例とした。
2. 基礎的検討
IFN-α/5-FU併用療法の抗腫瘍効果の機序について
①IFNレセプター及びそのシグナル伝達機構、②IFN-α/5-FU併用療法の抗腫瘍効果におけるFas/FasL系、③血管新生抑制効果の作用機序について検討した。
結果と考察
1. 臨床的検討
平成19年6月1日より症例登録を開始し、平成21年3月31日時点で全国44施設より、84例の症例が登録された。各群20例、合計40例のプロトコル治療を終了した時点で、中間解析による有効性と安全性を総合的に評価した結果、試験継続の勧告を受けた。
2. 基礎的検討
①IFNレセプターと細胞内シグナル伝達分子の発現程度は、IFN併用化学療法の治療効果と有意に相関し、siRNAを用いたIFNレセプターの発現抑制により、シグナル伝達の減弱、細胞増殖抑制効果の低下を認めた。②, IFN併用化学療法は、Fas/FasL系を介して腫瘍細胞のアポトーシスの誘導と単核球による細胞障害性を増強することが示された。③, 皮下腫瘍モデルにおいて、IFN併用化学療法施行群での腫瘍内MVDは有意に低下を認め、さらに腫瘍内VEGF、Ang-2発現低下とAng-1の増強を認めた。
結論
肝細胞癌の標準的化学療法の確立のため、症例登録を継続し本臨床試験を完遂することと、IFN併用化学療法の効果予測確立や作用機序解明のため、さらなる基礎的検討が必要である。

公開日・更新日

公開日
2009-05-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-12-01
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200824012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
肝癌治療の進展はほとんど早期肝癌に対するもので、進行肝癌に対する精力的な取り組みはない。これは、進行肝癌には既存治療が奏効せず“終末像”としてとらえられ、治療対象とされないことによる。したがって、進行肝癌の集学的治療を展開するためには、新機軸としての治療が必須である。本研究は、この点に関し、IFN併用化学療法をその新機軸に据え臨床的意義をRCTにおいて確認するとともに、集学的治療の確立を目的とした基礎的研究をあわせて展開することで、専門的・学術的観点からの成果がある。
臨床的観点からの成果
本研究においては、難治性進行肝細胞癌の中で肝外転移症例のみを対象として、5FU系の経口抗ガン剤S-1を用いたIFN併用化学療法の有効性を検証するべく、S-1単剤投与群とS-1・IFN併用群の2群間でRCTによるPhase-II臨床試験(現在、抗腫瘍効果その他についての観察期間)を施行した。本試験結果により、肝外転移症例に対するIFN併用化学療法の有効性が検証される可能性は高い。
ガイドライン等の開発
現在、肝外病変を伴う肝細胞癌症例については既存治療が全く効を奏さず、ガイドライン上推奨される標準的治療は皆無である。本臨床研究の結果は、このような治療抵抗性進行肝細胞癌症例に対する標準治療開発の一つの単著となる可能性が十分にある。
その他行政的観点からの成果
現在、進行肝細胞癌に対する薬物療法で、その治療効果を欧米において検証されたものは分子標的治療薬であるSorafenibのみである。ただし、本薬剤についても肝外病変を伴うような進行肝癌に対する治療効果については、明らかとはいいがたく、さらにはその薬剤費用はかなり高額になる。本研究で使用される薬剤費用は、分子標的治療薬の約1/3である。治療費と医療経済効率という行政的観点から、非常に有効な治療法となる可能性がある。

その他のインパクト
現在までに本邦において、治療抵抗性進行肝癌に対するRCTによる臨床試験はほとんどない。そういった意味においての、検証可能な一定の症例数による臨床試験の施行については、特に対象症例が難治性進行肝癌に絞られているだけに、インパクトは高い。

発表件数

原著論文(和文)
76件
原著論文(英文等)
62件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
118件
学会発表(国際学会等)
25件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-02
更新日
-