難治性小児がんの臨床的特性に関する分子情報の体系的解析と、その知見に基づく診断治療法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200823024A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性小児がんの臨床的特性に関する分子情報の体系的解析と、その知見に基づく診断治療法の開発に関する研究
課題番号
H19-3次がん・一般-010
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
清河 信敬(国立成育医療センター 研究所 発生・分化研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 藤本純一郎(国立成育医療センター研究所)
  • 林泰秀(群馬県立小児医療センター)
  • 小川誠司(東京大学医学部附属病院 無菌治療部)
  • 大平美紀(千葉県がんセンター(研究所)・臨床ゲノムセンター・がんゲノム研究室)
  • 中川温子(国立成育医療センター 臨床検査部 病理診断科)
  • 森鉄也(国立成育医療センター 第一専門診療部 血液腫瘍科)
  • 大喜多肇(国立成育医療センター研究所 発生・分化研究部 機能分化研究室)
  • 横澤敏也(機構 名古屋医療センター 臨床研究センター 血液・腫瘍研究部 病因・診断研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
22,088,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は難治性小児がんの治療予後向上を目指して、その臨床的特性に関する分子情報の体系的解析を行い得られた知見を診断治療法開発に応用することを目的としており、昨年度に引き続き小児がん臨床検体を用いた包括的・体系的な生体分子情報解析(オミックス)を継続した。
研究方法
高密度SNPアレイを用いたゲノム構造解析、マイクロアレイを用いた網羅的発現遺伝子解析、シークエンシングや定量PCR、フローサイトメトリーによる表面抗原解析、LC-MSによる発現糖鎖解析等を用いて、小児がん臨床検体と小児がん発症/治療モデルの解析を行った。
結果と考察
神経芽腫の特徴的ゲノム変異を明らかにして一部の症例で2p23上のALKに高度増幅やミスセンス変異を検出しその変異が増腫瘍効果を有することを明らかにした。肝芽腫について網羅的ゲノム構造異常、発現遺伝子双方のプロファイルが予後と強く相関し、両者の組み合わせで効率的層別化が可能であることを示した。小児AMLのWT1遺伝子変異、T-ALLのNOTCH1、FBXW7遺伝子変異を解析し予後との関係を明らかにした。AMLのキメラ遺伝子スクリーニングとその発現モニタリングを行いAML1-ETO発現レベルの推移の多様性を明らかにした。小児ALL症例の体系的表面抗原解析によりT-ALLの表面抗原発現様式の多様性とリスク分類や初期治療反応性との関係を明らかにした。LC-MSによる網羅的発現糖鎖解析によりALL各病型の糖鎖発現様式の特徴を明らかにした。小児がんの中央診断・検体保存を行い、新たな治療層別化因子として着目される治療8日目末梢血残存白血病細胞絶対数のフローサイトメトリー測定を実施した。Ewing肉腫におけるEWS/ETSの標的遺伝子としてDKK1および2を同定、DKK1が抗腫瘍性に作用することを明らかにした。ALCL細胞株に対してp16INK4a機能性ペプチドを輸送体ペプチドと混合して投与することにより増殖抑制作用を認めることを示した。
結論
小児がんの網羅的分子情報解析を進め、神経芽腫のALK、Ewing肉腫のDKKを始めとする診断治療の標的因子を同定し、疾患発症/治療モデルの開発・解析が進捗した他、治療研究推進を支持するバイオリソース構築にも貢献している。最終年度は、これまでの成果の有用性についてさらに検討を進め、さらに小児がん研究に貢献可能な出口の明確な研究成果の達成を目指す。

公開日・更新日

公開日
2009-04-16
更新日
-