バイオマーカーを導入した原発性乳癌の集学的治療アルゴリズムの構築と意思決定過程の定式化に関する研究

文献情報

文献番号
200823006A
報告書区分
総括
研究課題名
バイオマーカーを導入した原発性乳癌の集学的治療アルゴリズムの構築と意思決定過程の定式化に関する研究
課題番号
H18-3次がん・一般-007
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
戸井 雅和(京都大学医学部附属病院 乳腺外科)
研究分担者(所属機関)
  • 冨田 勝(慶應義塾大学環境情報学部先端科学研究所)
  • 内藤 泰宏(慶應義塾大学環境情報学部先端科学研究所)
  • 近藤 正英(国立大学法人筑波大学人間総合科学研究科ヒューマン・ケア科学保健医療政策学分野)
  • 古田 榮敬(財団法人がん集学的治療研究財団)
  • 稲本 俊(財団法人田附会興風会医学研究所北野病院)
  • 笹野 公伸(東北大学医学研究科病理診断学分野)
  • 林 慎一(東北大学大学院医学系研究科保健学専攻基礎検査学医学講座分子機能解析学分野)
  • 黒井 克昌(東京都立駒込病院臨床試験科外科)
  • 石濱 泰(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科)
  • 増田 慎三(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
38,280,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国における乳癌罹患患者数は急激に増加しており、治療成績の向上、治療の効率化、QOLの改善を同時に図る必要がある。集学的診療基盤の上で、個別化医療の展開を可能にする診療アルゴリズムの構築が求められている。
研究方法
集学的で効率的な診療アルゴリズムを開発することを目的として、意思決定過程の定式化、医療経済効率性の評価、シミュレーション、新しいバイオマーカーの導入、新規バイオマーカーの開発に取り組んだ。具体的には、原発性乳癌の治療方針決定に影響を及ぼす腋窩リンパ節転移の予測、術前化学療法時の効果予測などに関する数理モデルの開発と新たな診療データベースを用いたモデルの精度向上、医療経済性の検討においてはG-CSF予防的投与における第3世代化学療法の遂行性向上と経済効率性改善に関する研究、乳癌化学予防の経済効率性に関する検討などを行い、バイオマーカーに関しては、遺伝子シグナチャー、ホルモン療法の効果予測因子、化学療法効果予測因子、抗HER2療法効果予測因子、初期浸潤マーカー、血管新生マーカーに関する研究を行った。
結果と考察
意思決定の定式化に関して、機械学習モデルを改良、高い予測精度と汎用性を持つようになった。SVM-FSによる変数選択後に決定木により予測モデルを構築する方法を開発した。大規模データベースの構築、システム化、汎用インターフェイスを研究した。
予防的G-CSFは使い方を工夫することで治療成績向上と医療財政支出節減の双方に効果がある可能性を示した。乳癌発症高リスク患者を対象にするホルモン療法を推奨することは医療財政支出として社会的に受け入れられうることが示唆された。遺伝子シグナチャーを導入したアルゴリズムを構築、治療成績の向上、QOLの改善、医療経済効率性の向上に寄与する可能性が示された。新規バイオマーカーに関しては、ホルモン療法、化学療法、抗HER2療法の効果予測と治療効果モニタリングに関して新規マーカーが同定精製された。リン酸化ペプチドプロテオミクス法を用いて乳癌細胞内のリン酸化サイトのダイナミクスを測定した。初期浸潤、血管新生の新規マーカー候補を見出した。
結論
一連の研究は、QOLの改善を図りながら、原発性乳癌の治療生存成績を向上させ、医療財政的支出の抑制にも有効であると結論された。

公開日・更新日

公開日
2009-04-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-12-01
更新日
-

文献情報

文献番号
200823006B
報告書区分
総合
研究課題名
バイオマーカーを導入した原発性乳癌の集学的治療アルゴリズムの構築と意思決定過程の定式化に関する研究
課題番号
H18-3次がん・一般-007
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
戸井 雅和(京都大学医学部附属病院 乳腺外科)
研究分担者(所属機関)
  • 冨田 勝(慶應義塾大学環境情報学部先端科学研究所)
  • 内藤 泰宏(慶應義塾大学環境情報学部先端科学研究所)
  • 近藤 正英(国立大学法人筑波大学人間総合科学研究科ヒューマン・ケア科学保健医療政策学分野)
  • 古田 榮敬(財団法人がん集学的治療研究財団)
  • 稲本 俊(財団法人田附会興風会医学研究所北野病院)
  • 笹野 公伸(東北大学医学研究科病理診断学分野)
  • 林 慎一(東北大学大学院医学研究科保健学専攻検査学医科学講座分子機能解析学分野)
  • 黒井 克昌(東京都立駒込病院臨床試験外科)
  • 石濱 泰(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科)
  • 増田 慎三(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国における乳癌罹患患者数は急激に増加しており、治療成績の向上、治療の効率化、QOLの改善を同時に図る必要がある。集学的診療基盤の上で、個別化医療の展開を可能にする診療アルゴリズムの構築が求められている。
研究方法
集学的で効率的な診療アルゴリズムを開発することを目的として、意思決定過程の定式化、医療経済効率性の評価、シミュレーション、新しいバイオマーカーの導入、新規バイオマーカーの開発に取り組んだ。具体的には、原発性乳癌の治療方針決定に影響を及ぼす腋窩リンパ節転移の予測、術前化学療法時の効果予測などに関する数理モデルの開発と新たな診療データベースを用いたモデルの精度向上、医療経済性の検討においては遺伝子シグナチャー、抗HER2療法、乳癌化学予防、G-CSF予防的投与などの経済効率性に関する検討を行い、バイオマーカーに関しては、遺伝子シグナチャー、病理組織化学的マーカー、ホルモン療法・化学療法・抗HER2療法それぞれの効果予測因子、初期浸潤のマーカー、血管新生のマーカーに関する研究を行った。
結果と考察
意思決定の定式化に関して、機械学習モデルを開発、高い予測精度と汎用性を持つように改良を加えた。新たにSVM-FSによる変数選択後に決定木により予測モデルを構築する方法を開発し、大規模データベースの構築、システム化、ユーザーフレンドリインターフェイスの開発も行った。医療経済性の検討においては、遺伝子シグナチャーも導入による効果、HER2検索と抗HER2療法の経済的側面からの分析、ホルモン療法による乳癌化学予防の効率性評価、第3世代化学療法時のG-CSF予防的投与の効率性の評価等を行い、いずれも生存治療成績、予防効果を高めるとともに医療財政的効率性を高め、運用によっては財政支出削減にもつながる可能性を明らかにした。バイオマーカーに関しては、ホルモン療法、化学療法、抗HER2療法の効果予測と治療効果モニタリングに関して新規マーカーを研究、同定、精製した。リン酸化ペプチドプロテオミクス法を用いた乳癌細胞リン酸化サイトダイナミクス研究を新たに展開した。初期浸潤、血管新生の新規マーカー候補を見出した。
結論
一連の研究は、原発性乳癌の治療生存成績を向上させ、医療財政的支出の抑制、同時に患者QOLの改善にも有効であると結論された。

公開日・更新日

公開日
2009-04-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-12-01
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200823006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
原発性乳癌に対する集学的で効率的な診療アルゴリズムの開発を目的として研究を遂行、以下の成果を得た。診療上の主要な意思決定過程の定式化を行い、機械学習モデルを開発、高い予測精度と汎用性を持つ予測モデルを構築した。ホルモン療法、化学療法、抗HER2療法の効果予測と治療効果モニタリングに関して新規マーカーを研究、同定、精製した。リン酸化ペプチドプロテオミクス法を用いた乳癌細胞リン酸化サイトダイナミクス研究を新たに展開した。初期浸潤、血管新生の新規マーカー候補を見出した。
臨床的観点からの成果
原発性乳癌の新しい診療アルゴリズムを構築した。遺伝子シグナチャー、病理組織化学的マーカーを加え、化学療法の効果に関する予測性の向上、ホルモン療法の効果の予測性の向上を図り、生存治療成績の向上とQOLの向上を同時に図れるように工夫した。さらに、大規模診療データベースの構築、システム化、診療アルゴリズムの臨床応用を目的とするユーザーインターフェイスの開発を行った。抗HER2療法の耐性機序の一端を解明した。
ガイドライン等の開発
診療アルゴリズムの普及を目的として、国内の専門家による会議を行い、有用性、課題を検討、さらに国内外の乳癌専門家によるコンセンサス形成を目的とする国際コンセンサス会議を企画、2009年4月に開催する。乳房局所の制御、全身療法の適応、全身療法施行時の局所療法を中心課題に専門家による様々な検討を行っており、会議においては具体的なコンセンサスの形成を行う。成果に関しては国内外に公開、発表を予定している。
その他行政的観点からの成果
医療経済効率性の観点から、21遺伝子シグナチャー導入による効果、HER2検索と抗HER2療法の経済的側面からの分析、ホルモン療法による乳癌化学予防の効率性評価、第3世代化学療法時のG-CSF予防的投与の効率性の評価等を行い、いずれにおいても生存治療成績を向上すると同時に医療財政的効率性を高め、運用によっては財政支出削減にもつながる可能性を明らかにした。特に、バイオマーカーの導入は予後の改善と医療費削減を同時に実現できる方策になると考えられた。
その他のインパクト
一連の成果は国内外の学会のシンポジウム等でとりあげられ、特別講演、招請講演も多数行った。メディアの注目度も高く、医学系メディアだけでなく一般メディアにおいても様々な形でとりあげられた。新規診療アルゴリズムの臨床応用の観点から乳癌の診療従事者を主対象にしたシンポジウム、講演会を行った。乳癌の患者ならびに一般市民を対象にした公開シンポジムで、研究成果について発表し、啓蒙的な活動を行った。

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
10件
その他論文(和文)
39件
その他論文(英文等)
9件
学会発表(国内学会)
44件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kuroi K, Toi M
Diagnostic and prognostic molecular markers in breast cancer
Diagnostic and prognostic molecular markers in breast cancer , 1-55  (2009)
原著論文2
Kondo M, Hoshi SL, Toi M
Economic evaluation of chemoprevention of breast cancer with tamoxifen and raloxifene among high-risk women in Japan
British Journal of Cancer , 100 (2) , 281-290  (2009)
原著論文3
Sato R, Suzuki T, Katayose Y et al.
Steroid Sulfatase and Estrogen Sulfotransferase in Colon Carcinoma: Regulators of Intratumoral Estrogen Concentrations and Potent Prognostic Factors.
Cancer Res , 13  (2009)
原著論文4
Hayashi S, Yamaguchi Y
Estrogen-Related Cancer Microenvironment of Breast Carcinoma
Endocrine J , 56 , 1-7  (2009)
原著論文5
Hayashi S, Yamaguchi Y
Estrogen signaling in cancer microenvironment and prediction of response to hormonal therapy
Journal of Steroid Biochemistry and Molecular Biology , 109 , 201-206  (2008)
原著論文6
Kondo M, Hoshi SL, Ishiguro H, Yoshibayashi H, Toi M
Economic evaluation of 21-gene reverse transcriptase-polymerase chain reaction assay in lymph-node-negative, estrogen-receptor-positive, early-stage breast cancer in Japan
Breast Cancer Research and Treatment , 112 (1) , 175-187  (2008)
原著論文7
Tamaki K, Moriya T, Sato Y et al.
Vasohibin-1 in human breast carcinoma: a potential negative feedback regulator of angiogenesis.
Cancer Sci , 100 (1) , 88-94  (2008)
原著論文8
Matsumoto M,Yamaguchi Y,Hatakeyama A et al.
Estrogen signaling ability in human endometrial cancer through the cancer-stromal interaction
Endocrine-Related Cancer , 15 , 451-463  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-06-02
更新日
-