療養病床、老人保健施設における急性期医療の引継ぎ構造とスタッフ・デベロップメントに関する研究

文献情報

文献番号
200821045A
報告書区分
総括
研究課題名
療養病床、老人保健施設における急性期医療の引継ぎ構造とスタッフ・デベロップメントに関する研究
課題番号
H19-長寿・一般-016
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 龍太郎((財)東京都高齢者研究・福祉振興財団 東京都老人総合研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 鳥羽 研二(杏林大学 医学部高齢医学教室)
  • 遠藤 英俊(国立長寿医療センター 包括医療部)
  • 葛谷 雅文(名古屋大学 医学部老年科学講座)
  • 杉原 陽子((財)東京都高齢者研究・福祉振興財団 東京都老人総合研究所 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
6,470,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
慢性疾患による長期療養中の高齢者医療とケアに大きな役割を果たしている老人保健施設、療養病床の施設運営と勤務医師、急性期医療機関経由の利用者の現状を調査・分析し、現在の課題を明らかにする。
研究方法
全国老人保健施設協会の承認を経て、協会加盟の老人保健施設の全施設3302施設を、設置形態別(独立、病院併設、診療所併設)に同じ割合を抽出し、およそ半数の1480施設を調査対象とした。2008年6月にこれらの施設の①施設管理責任者に対してスタッフ育成と施設運営状況を、②常勤勤務医師に対して専門性と学習状況、医療業務実施状況、他職種との連携、仕事の満足度などを、③施設利用高齢者の状態像把握調査を行った。また、④利用者のその後の転帰調査を2009年1月から2月にかけて行った。さらに、2008年8月から9月にかけて、④利用者のその後の転帰を調査するため回答のあった療養病床病院(施設)に調査票を送付し回収した。
結果と考察
ほとんどを医師が占めている老人保健施設施設長、および、療養病床の施設長・勤務医師の専門診療領域において老年医学・高齢者医療はあまり高い割合を占めていなかった。老人保健施設勤務医師と療養病床勤務医師の職場志望理由、勤務状況には違いがみられた。「高齢者医療の実践」を志望理由とした医師では、職場への満足度や在宅医療への志向性が高くみられた。老人保健施設、療養病床共通して、在所・在院日数の長い施設・病院では病床あたりの年間総退院者数、自宅退院者数は低い一方、在所・在院日数と死亡退院率については有意な関連がみられず、施設特性の違いによって強く影響を受ける転帰(自宅退院)、あまり影響を受けない転帰(死亡)、比較的施設間の差が小さい転帰(急性期病院転院)があった。老人保健施設と療養病床の利用者像には大きな違いがみられ、療養病床利用者では、急性期病院入院まで自宅で生活していたものが多く、医療区分3、ADL区分3、医療処置受療者がめだち、死亡退院が多くみられた。病状の急性変化と医療処置との関連は弱いようであった。
結論
高齢者医療を担う医師などスタッフの専門性の強化と育成、地域医療や介護提供機関の特性を考慮に入れた施設運営、病状の変化を考慮した「医療の必要性」の把握を図っていくことが必要であると思われた。

公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
-

文献情報

文献番号
200821045B
報告書区分
総合
研究課題名
療養病床、老人保健施設における急性期医療の引継ぎ構造とスタッフ・デベロップメントに関する研究
課題番号
H19-長寿・一般-016
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 龍太郎((財)東京都高齢者研究・福祉振興財団 東京都老人総合研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 鳥羽 研二(杏林大学 医学部高齢医学教室)
  • 遠藤 英俊(国立長寿医療センター 包括医療部)
  • 葛谷 雅文(名古屋大学 医学部老年科学講座)
  • 杉原 陽子((財)東京都高齢者研究・福祉振興財団 東京都老人総合研究所 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
慢性疾患による長期療養中の高齢者医療とケアに大きな役割を果たしている老人保健施設、療養病床の施設運営と勤務医師、急性期医療機関経由の利用者の現状を調査・分析し、現在の課題を明らかにする。
研究方法
日本療養病床協会(現日本慢性期医療協会)の承認を経て、協会加盟の全国の介護保険療養病床、医療保険療養病床の全数、727施設を調査対象とした。2008年1月から2月にかけてこれらの施設の①施設管理責任者に対してスタッフ育成と施設運営状況を、②常勤勤務医師に対して専門性と学習状況、医療業務実施状況、他職種との連携、仕事の満足度などを、③急性期医療機関からきた高齢者の状態像把握調査を行った。2008年8月から9月にかけて、④利用者のその後の転帰を調査するため回答のあった療養病床病院(施設)に調査票を送付し回収した。同じく、全国老人保健施設協会の承認を経て、協会加盟の老人保健施設の全施設3302施設のおよそ半数の1480施設を調査対象とし、2008年6月に上記の①②③の調査を行った。さらに、④利用者のその後の転帰調査を2009年1月から2月にかけて行った。
結果と考察
ほとんどを医師が占めている老人保健施設施設長、および、療養病床の施設長・勤務医師の専門診療領域において老年医学・高齢者医療はあまり高い割合を占めていなかった。老人保健施設勤務医師と療養病床勤務医師の職場志望理由、勤務状況には違いがみられた。「高齢者医療の実践」を志望理由とした医師では、職場への満足度や在宅医療への志向性が高くみられた。老人保健施設、療養病床共通して、在所・在院日数の長い施設・病院では病床あたりの年間総退院者数、自宅退院者数は低い一方、在所・在院日数と死亡退院率については有意な関連がみられず、施設特性の違いによって強く影響を受ける転帰(自宅退院)、あまり影響を受けない転帰(死亡)、比較的施設間の差が小さい転帰(急性期病院転院)があった。老人保健施設と療養病床の利用者像には大きな違いがみられ、療養病床利用者では、急性期病院入院まで自宅で生活していたものが多く、医療区分3、ADL区分3、医療処置受療者がめだち、死亡退院が多くみられた。病状の急性変化と医療処置との関連は弱いようであった。
結論
高齢者医療を担う医師などスタッフの専門性の強化と育成、地域医療や介護提供機関の特性を考慮に入れた施設運営、病状の変化を考慮した「医療の必要性」の把握を図っていくことが必要であると思われた。

公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200821045C

成果

専門的・学術的観点からの成果
療養病床・老人保健施設に勤務する医師の志望理由や背景となる専門性は必ずしも高齢者医療に焦点化されておらず、医療とケアを包括的に評価して実践していく人材を育成する必要性が示された。いち早く高齢社会を向かえた欧米の現状と比較しても専門医や専門職の不足に急いで対応することが望まれる。
臨床的観点からの成果
提供されている一部の医療処置や器具の装着状況は短期間内の死亡と関連がみられたが、医療内容の大半は転帰と関連がみられず、病状の急性変化はむしろ医療処置や器具装着とは関係なく一定の割合で発生した。在宅復帰を妨げる要因の一つとして病状の急性変化の予測方法の開発が望まれる。
ガイドライン等の開発
ガイドライン等の開発は実施していない。
その他行政的観点からの成果
施設長の施設運営方針や施設を取り巻く他の医療機関・施設の整備状況によって自宅退院の割合は影響を受けているようである。現在、療養病床と老人保健施設を利用している高齢者の特性にはかなりの違いがあり、在宅復帰を進めるにはそれら相違点への対応が必要になってくると思われる。
その他のインパクト
高齢者医療・老年医学において主導的な位置を占める日本老年医学会のパネルディスカッションにおいて本研究の結果の一部を報告した。(2008年6月)

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-