新しいマテリアル創製を基盤とする運動器疾患治療法の開発

文献情報

文献番号
200821035A
報告書区分
総括
研究課題名
新しいマテリアル創製を基盤とする運動器疾患治療法の開発
課題番号
H19-長寿・一般-006
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
川口 浩(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 石原 一彦(東京大学 大学院工学系研究科)
  • 高取 吉雄(東京大学 医学部附属病院 )
  • 茂呂 徹(東京大学 医学部附属病院 )
  • 三浦 俊樹(東京大学 医学部附属病院 )
  • 金野 智浩(東京大学 大学院工学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
10,970,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、生体適合性と潤滑性に優れた生体内解離性ハイドロゲルを運動器疾患の新規治療法として臨床応用するために必要な基礎的検討を完成させることである。このため、今年度は、至適合成条件を検討するとともに、関節軟骨保護効果、組織癒着防止効果,関節拘縮防止効果の検討、神経・硬膜外癒着防止効果の検討、の検討を行った。
研究方法
至適合成条件の検討では、埋植後の解離過程および代謝過程を考慮したポリマー構造の最適化を行った。関節軟骨保護効果の検討、組織癒着防止効果の検討では、動物モデルを用いてその有効性を検討した。関節拘縮防止効果の検討、神経・硬膜外癒着防止効果の検討では、動物モデルとその評価系を検討した。
結果と考察
合成条件の検討では、ポリマーの低分子量化について集中して行い、体外排泄可能な構造を規定した。また、解離過程についてはポリマー分子内に組み込んだ機能性モノマーと糖分子との可逆的な交換反応によって任意に解離可能であることを明らかにした。関節軟骨保護効果の検討では、摩擦試験機、変形性関節症モデルでの検討を行い、HAとMPCの混合による、関節面の潤滑機構の改善、関節面の保護機構を確認した。組織癒着防止効果の検討では、ウサギの屈筋腱損傷モデルを確立し、MPCポリマーゲルが腱組織の修復を阻害することなく周囲組織と腱との癒着を顕著に抑制することを、組織学的、生体力学的な検討等により確認した。また、MPCポリマーゲルは、内部への細胞移動性を抑制することで組織癒着を防止すること、また細胞生存性には影響せずにこの効果を発揮していることを明らかにした。関節拘縮防止効果の検討では、大腿骨を骨折させ内固定を行った後に骨折の治癒・関節拘縮を観察する実験モデルを確立した。神経・硬膜外癒着防止効果の検討では、顕微鏡視下に椎弓切除を行って癒着を誘発する実験系、およびその評価方法を確立した。
結論
以上の結果は、新規運動器疾患治療法の開発への推進を得るに十分な結果であった。本研究開発によりこれらの新規治療法の有効性が証明できれば、高齢者のQOLの維持・改善とともに支援介護費用までも含めた医療費の削減、労働力という社会資本の確保、当該分野での国際競争力の獲得に多大な貢献が期待できる。

公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
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