小児の臨床研究推進に必要な人材育成と環境整備のための教育プログラム作成

文献情報

文献番号
200816008A
報告書区分
総括
研究課題名
小児の臨床研究推進に必要な人材育成と環境整備のための教育プログラム作成
課題番号
H18-臨研(教育)・一般-003
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
中川 雅生(滋賀医科大学 医学部附属病院治験管理センター)
研究分担者(所属機関)
  • 竹内 義博(滋賀医科大学 医学部小児科)
  • 大野 雅樹(京都女子大学 発達教育学部)
  • 土田 尚(国立成育医療センター 総合診療部)
  • 大森 崇(京都大学大学院医学研究科社会健康医学系 医療統計学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究基盤整備推進研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
15,350,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
小児の臨床研究を推進するため、臨床研究に精通した医師や治験コーディネーター(CRC)等の人材育成と環境整備に向けた教育プログラム作成を目的として研究を企画した。
研究方法
1.滋賀医科大学の医学生を対象に、治験に関する知識とイメージを具体化させることを目的に実施した治験支援部門での臨床実習の効果を評価した。医学生が生物統計学を短時間で理解できるよう作成した実習教材の有用性について評価した。滋賀県下の小児科医を対象に小児治験を企画し、実施した。さらに小児治験に対する医師の意識調査を全国規模で実施した。
2.CRCが小児科学の聴講生で得た知識が、小児治験のプロトコルや同意説明文書を評価する上で有用か検討した。
3.小児の治験参加の促進因子と抑制因子を抽出するため、小児と保護者を対象に小児治験に対する意識調査を実施し、さらに小児治験に参加中の保護者の社会心理的側面を調査分析した。
結果と考察
1.治験支援部門での臨床実習や統計学の知識は医学生が講義で得た知識を具体化し、臨床研究に取り組む意欲を高揚する上で効果があると評価できた。滋賀治験ネットワークを利用した小児治験に多くの応募があったことから、小児科医への継続的な啓発は医薬品開発と治験に対する意識を高めたと考えられた。小児医療に従事する医師の多くは小児用医薬品が十分でないことを認識し、臨床研究の重要性を理解しているが、実際に臨床研究に取り組んでいるのは経験が豊富な医師であり、若手の医師が臨床研究に従事できる教育と環境整備が必要であることが明らかになった。
2.CRCが小児科学の講義で得た知識と実際の支援経験は、プロトコルや同意説明文書の適切性を評価する上で有用であった。
3.子どもや保護者の小児治験参加促進因子として、貢献したいという意識や新薬開発への期待感、さらに不安を感じにくい性格や日常生活の安定感や幸福感があった。不安や恐怖は大きな抑制因子であった。小児と保護者の不安を軽減するための介入が必要と考えられた。
結論
1.臨床研究に精通した医師の育成には、医学生から卒後の段階に応じて継続する臨床研究の教育プログラム構築が必要である。
2.小児を専門とするCRC育成には、聴講生等、系統的に小児科学の知識が得られる機会を備えた教育プログラムが有効である。
3.小児治験の活性化には小児と保護者の不安を軽減するための介入が必要で、そのための人材育成と資材開発が急務である。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-04-16
更新日
-

文献情報

文献番号
200816008B
報告書区分
総合
研究課題名
小児の臨床研究推進に必要な人材育成と環境整備のための教育プログラム作成
課題番号
H18-臨研(教育)・一般-003
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
中川 雅生(滋賀医科大学 医学部附属病院治験管理センター)
研究分担者(所属機関)
  • 竹内 義博(滋賀医科大学 医学部小児科)
  • 大野 雅樹(京都女子大学 発達教育学部)
  • 土田 尚(国立成育医療センター 総合診療部)
  • 大森 崇(京都大学 大学院医学研究科社会健康医学系 医療統計学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究基盤整備推進研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
小児の臨床研究推進のため、臨床研究に精通した医師や治験コーディネーター(CRC)等の人材育成と環境整備に向けた教育プログラム作成を目的に研究を実施した。
研究方法
1.滋賀医科大学の医学生を対象に、臨床研究に関する基礎知識の講義と治験支援部門での臨床実習を実施した。卒後の臨床研究に対する継続的な教育の効果を評価するため、滋賀県の小児科医を対象に小児用医薬品開発の現状や臨床研究の啓発を行い、その後に小児の治験を企画した。さらに全国規模で小児治験に対する医師の意識を調査した。医学生や若手医師が医療統計学を短時間で理解できる教材の作成とその有用性について検証した。
2.小児専門のCRC育成に向け、小児科学の聴講生を利用したプログラムを作成し、小児治験の支援、プロトコルや同意説明文書を評価する上で有用か検討した。
3.小児治験参加の促進因子と抑制因子を抽出するため、小児と保護者を対象に小児治験に対する意識調査と小児治験に参加中の保護者の社会心理的側面を調査分析した。
結果と考察
1.治験支援部門での臨床実習や統計学の知識は医学生が講義で得た臨床研究のイメージを具体化し、臨床研究に対する意識を高揚すると評価できた。企画した小児治験に多くの小児科医から参加申し出があり、継続的な啓発は治験に対する意識を高めたと考えられた。小児医療に従事する医師の多くは小児用医薬品開発と治験の重要性を認識しているが、実際に治験に取り組んでいるのは経験が豊富な医師であり、若手の医師が臨床研究に従事できる教育と環境整備が必要なことが明らかになった。
2.CRCが聴講生で得た知識は、小児の年齢に応じた対応を可能にし、プロトコルや同意説明文書の適切性を評価する上で有用であった。
3.小児や保護者の治験参加促進因子として、貢献したいという意識や新薬開発への期待感、さらに不安を感じにくい性格や生活の安定感、幸福感があった。不安や恐怖は大きな抑制因子であり、不安を軽減するための介入が必要と考えられた。
結論
1.臨床研究に精通した医師の育成には、医学生から継続して段階に応じた臨床研究の教育を受けられるプログラムの提供が重要である。
2.小児を専門とするCRC育成には、聴講生等、系統的に小児科学の知識を得る機会を備えた教育プログラムの構築が有効である。
3.小児治験の活性化には小児と保護者の不安を軽減する介入が必要で、そのための人材育成と資材開発が急務である。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200816008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
医療従事者である医師と被験者である小児および保護者に対し、小児を対象とした治験に対する意識調査を実施した。その結果、医師においては医薬品開発の必要性の認識と臨床経験が治験参加の促進因子であり、小児と保護者においては他人の役に立ちたいという意識や新薬開発への期待、不安を感じにくい性格や生活の安定・幸福感が参加促進因子であることが明らかになった。医師の治験参加抑制因子は知識や経験不足で、保護者においては不安や恐怖が大きな抑制因子であることがわかり、これらを軽減する活動が必要であることが示された。
臨床的観点からの成果
医学生から診断学や治療学等の臨床技能と同等に臨床研究に対する意識を明確に持たせ、卒後も継続して小児科医の臨床研究に対する啓発や教育を行うこと、及び小児を専門とする治験コーディネーターの育成により小児を対象とした臨床研究の環境整備を行うことを実践した。その結果、滋賀で多施設共同の小児を対象とした臨床試験(治験)が実施でき
たことから、これらの取り組みにより、臨床的エビデンスの構築が可能となると同時に小児用医薬品開発につながることが示された。
ガイドライン等の開発
ガイドライン等の開発はないが、統計学教育のための教材を開発した。
医学生や若手医師を対象に統計学の教育を行うため、臨床試験のデータを模したカード教材の開発とそれを用いた実習を行なった。はじめにパイロット研究を行い、そこで得られたデータに基づいてサンプルサイズを見積もり、次の研究を行うという設定で、この教材を通してランダム化臨床試験の統計解析の知識を身につけることができる。教材の性能評価と実際に教材を用いた1日セミナーを行った結果から、教材の有用性と教育効果が検証された。
その他行政的観点からの成果
文部科学省が公表した「医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議最終報告(平成19年3月28日)」に、2.教育者・研究者の養成等の医学教育の改善と7.臨床研究の推進が明文化されている。厚生労働科学研究費の補助を受けた本研究は、くしくもこの2項目を実現化するための教育プログラム作成を目標としたが、医学部での教育を卒後にいかに継続するかが重要である事を明らかにした。医学教育を臨床研究推進、最終的には医薬品開発に結び付けるには文部科学省と厚生労働省の機能的な連携が不可欠であることが示された。
その他のインパクト
一般市民が治験に参加することが医薬品開発にいかに重要かを啓発する目的で、平成20年10月26日に「医薬品開発の現状と治験」というテーマで市民公開講座を開催した。ムコ多糖症の患者家族の方から講演があり、医薬品開発が本邦で遅れている現状と治験が十分に認知され理解されていないことを改善する活動が報告された。本研究の主任研究者が、治験では被験者の方の倫理性を最優先し、科学性を確保していることの理解を求める講演を行った。

発表件数

原著論文(和文)
6件
4件は印刷中
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
16件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
平成20年10月26日に「医薬品開発の現状と治験」というテーマで市民公開講座を開催した。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-