公衆浴場におけるレジオネラ症対策に資する検査・消毒方法等の衛生管理手法の開発のための研究

文献情報

文献番号
202027009A
報告書区分
総括
研究課題名
公衆浴場におけるレジオネラ症対策に資する検査・消毒方法等の衛生管理手法の開発のための研究
課題番号
19LA1006
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
前川 純子(国立感染症研究所 細菌第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 長岡 宏美(静岡県環境衛生科学研究所 微生物部)
  • 黒木 俊郎(岡山理科大学 獣医学部)
  • 金谷 潤一(富山県衛生研究所 細菌部)
  • 田栗 利紹 (長崎県環境保健研究センター 保健衛生研究部)
  • 中西 典子(神戸市環境保健研究所 感染症部)
  • 泉山 信司(国立感染症研究所 寄生動物部)
  • 佐々木 麻里(大分県衛生環境研究センター 微生物担当)
  • 森本 洋(北海道立衛生研究所 感染症センター感染症部細菌グループ)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
22,835,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
公衆浴場のレジオネラ症対策の向上のためには適切な衛生管理が要求される。そのための消毒法等の開発・評価およびレジオネラ検査法の改善・普及等を行う。令和元年9月に「公衆浴場における衛生等管理要領等」が改正され、また、「公衆浴場における浴槽水等のレジオネラ属菌検査方法(以下、標準法)について」の通知(薬生衛発0919第1号)が出されたのは、前研究班(公衆浴場等施設の衛生管理におけるレジオネラ症対策に関する研究班)を初めとするこれまでのレジオネラ研究班の成果によるものである。本研究班は改正された衛生等管理要領をより実効あるものにするために研究を遂行する。
研究方法
各研究項目は、1から数名の研究分担者および研究協力者が参加し、実施された。
結果と考察
 入浴施設における省力化配管洗浄法を開発し、実地試験でその効果が検証できた。これまでアルカリ性や中性の泉質に適用されてきたモノクロラミン消毒が弱酸性の人工炭酸泉でも有効であることが確認できた。
 遊離塩素により浴槽水が十分に消毒された細菌の状態をフローサイトメトリー(FCM)で検出することで「清浄」か「細菌増殖」かを5分で判定する迅速評価法を開発し、実証してきたが、モノクロラミン消毒では、FCMにより測定される散布図が遊離塩素消毒の場合と全く異なったことから、モデル実験でモノクロラミン消毒時のFCM特異領域を設定し、モノクロラミン消毒の迅速評価法の有効性を実検体で確認した。
 浴槽水、湯口水、シャワー水、カラン水、採暖槽水等について培養検査および迅速検査を行い、レジオネラ属菌による汚染実態を明らかにした。これまでの成果を踏まえ、レジオネラ迅速検査ガイドラインを作成した。新しい培養検査法であるレジオラート/QT法は、検体の処理や結果の判定が容易で、平板培養法との結果一致率も高いことから、日常の衛生管理に有用な検査法であることが示されたが、今後、偽陽性の発生実態を解析し、偽陽性を低減する方法を検討する必要がある。採水現場での濃縮・測定を想定して開発されたモバイル型qPCR装置でのレジオネラ属菌の検出率は、平板培養法に対する感度がLAMP法よりも低かったため、フィルターや濃縮率についてプロトコルを再検討する必要があると思われた。シャワー・カラン水で感度が低かったPALSAR法は、MWY液体培地による増菌培養を取り入れた結果、平板培養法に対する感度が100%となった。感染源を特定するためには、環境検体から患者由来株の大半を占めるLegionella pneumophila 血清群1 (Lp1) を分離することが重要となるため、 Lp1で感作した免疫磁気ビーズ(Lp1-IMB)による選択的濃縮法を検討した。IMB処理前にLp1特異的なqPCRによるスクリーニングの実施が効率的で、平板培養法では分離されなかった検体からLp1が検出できた。
 次世代シークエンサーを用いて浴槽水とシャワー水の菌叢解析を行ったところ、半数以上の検体からレジオネラ属菌、約9割の検体からマイコバクテリウム属菌のリードが検出された。次世代シークエンサーを用いて、1つの集団感染事例に由来する菌株、あるいは1つの入浴施設の複数個所から長期にわたって検出されるLp株のSNPs解析を行い、他の分子疫学解析法とも比較した。次世代シークエンサーはMLVA法の検証にも活用した。医療機関の給水・給湯系のレジオネラ汚染を調査した。
 公衆浴場等の衛生管理を計画的、体系的に行うための体制つくりに資するための総合衛生管理プログラムと、公衆浴場の浴槽並びに関連設備の具体的な衛生管理を記述した一般衛生管理の2つのパートからなるガイドラインを作成した。入浴施設が関連するレジオネラ症発生時の調査の実施をサポートするガイドラインを作成した。レジオネラ外部精度管理サーベイの継続実施をサポートし、本研究班からは地方衛生研究所等72機関が参加した。
結論
今年度は新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う緊急事態宣言等のために、一部の研究実施が困難になったが、その一方で、入浴施設の長期休業がレジオネラ汚染に与えた影響の調査や、新型コロナウイルスへの消毒効果の確認等、新たに設定された研究を行うことができた。

公開日・更新日

公開日
2022-05-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-05-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202027009Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
24,934,000円
(2)補助金確定額
24,934,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 20,661,210円
人件費・謝金 19,061円
旅費 0円
その他 2,154,742円
間接経費 2,099,000円
合計 24,934,013円

備考

備考
利息13円

公開日・更新日

公開日
2022-02-03
更新日
-