血漿分画製剤の原料となる血漿の採漿方法及び品質確保のための研究

文献情報

文献番号
202025009A
報告書区分
総括
研究課題名
血漿分画製剤の原料となる血漿の採漿方法及び品質確保のための研究
課題番号
19KC1001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
河原 和夫(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科政策科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 津野 寛和(日本赤十字社 血液事業本部)
  • 木村洋一(一般社団法人 日本血液製剤機構 経営戦略部)
  • 野島 清子(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
  • 菅河 真紀子(東京医科歯科大学 大学院 医歯学総合研究科 政策科学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
3,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
グロブリン製剤の需要増加などにより、原料血漿の安定的確保は喫緊の課題となっている。本研究は、安定的な血漿分画製剤の原料血漿の確保の方策を探るためのものである。
研究方法
2015年の献血者データベース、国立社会保障・人口問題研究所の公表資料の将来推計人口、欧米の原料血漿採取に関する資料や公表論文やWebサイト等の各種公開情報などをもとにして分析した。
加えて、医療現場におけるグロブリン製剤の使用実態に関しては、社会保険組合医科レセプト情報を用い75歳未満の患者約525万人の全種グロブリン製剤の使用状況について分析した。
結果と考察
人口規模が大きく人口の集積状況が良く、かつ献血施設が立地している都道府県内の市区町村から広く献血者が集められるところ、さらに他都道府県からの人口流入が見込まれるところが重要であることが確認できた。人口減少の自治体間の不均一性を反映したものである。
米国では免疫グロブリン製剤の需要増に伴い増加する原料血漿必要量を確保するため、分画事業者は傘下の採血業者が運営する採漿センターを増設し、安価で効率的に有償採漿ドナーを確保することで対応を図っている。わが国では必要血漿量の確保及び確保コストの抑制が採血事業者である日本赤十字社に求められるが、血漿分画事業者においては免疫グロブリン製剤の収率改善に努めることが重要である。
血漿分画製剤の原料として、我が国でどのような感染症マーカーをスクリーニングする必要があるかは生物由来原料基準に明記されているが、外資系メーカーの欧米の採漿センターにおいては、生物由来原料基準で求められている項目よりも多くの試験項目がスクリーニングされ、採血事業者/採漿センターの自社規格により安全性が担保されている現実が見えてきた。外資系血漿分画製剤メーカー3社の欧米の採漿センターへのアンケート調査により、特にヒトパルボウイルスB19 DNAのミニプールNATおよびHAV RNAのミニプールNATを全ての原料血漿に対して実施していること、また、輸血用の採血は実施しておらず分画用の血液に特化して採漿していることが分かった。
血液法の一部改正により日本赤十字社以外の採血事業者の新規申請が可能となったことを受け、生物由来原料基準の見直しの必要性やスクリーニング項目に関する指針等の作成の必要性を検討しなければならない。
 医療現場でのグロブリン製剤の使用量急増の原因だと思われていた「慢性炎症性脱髄性多発神経炎;Chronic Inflammatory Demyelinating Polyneuropathy(以下、CIDPとする。)」に対する使用量は、継続的に増加傾向にはあったものの認可の前後で有意な増加は認められなかった。しかし、濃厚製剤の上市については10%製剤の登場によって治療時間が短縮化され、入院から外来、在宅へと治療形態が変化しており、特に継続的投与を必要とする低及び無ガンマーグロブリン血症において使用量が有意に増加していたことが確認された。入院によって妨げられていた隠れた治療ニーズが、外来治療が可能になることによって掘り起こされたものと考えられる。
結論
献血人口が少ないなど立地に問題があり効率的に原料血漿を確保するには不向きである。血漿成分献血者が多く確保できるにも関わらず血漿成分献血者が少ない都市での献血の種別を見直し、血漿献血者を増やしていく必要がある。
 また、わが国同様、独占事業者が血液事業を担っている国々で採血漿専用献血ルームを設けているフランス、カナダ及びオーストラリアが、わが国の前述の地域における血漿成分献血に特化した献血ルームを運営する際の参考になる。
血漿分画事業の事業構造は日米で同様であるが、日本では薬価下落による収益性の低下が危惧される。基礎的医薬品制度による薬価維持、免疫グロブリン製剤の収率向上や国内需要を満たした製剤の海外輸出等による連産バランスの改善によって収益性を確保していかねばならない。
 血液法の一部改正により日本赤十字社以外の採血事業者の新規申請が可能となったことを受け、本研究では、生物由来原料基準の見直しの必要性の検討、またはスクリーニング項目に関する指針等の作成が必要である。
 グロブリン製剤については、治療時間の短縮化が促進されると継続的投与を必要とする疾患において更なるニーズが創生されるものと考えられる。今後、グロブリン製剤の需要を正確に把握するとともに、適正使用の推進、適応症の範囲を慎重に同定する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2021-05-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-05-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202025009B
報告書区分
総合
研究課題名
血漿分画製剤の原料となる血漿の採漿方法及び品質確保のための研究
課題番号
19KC1001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
河原 和夫(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科政策科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 津野 寛和(日本赤十字社 血液事業本部)
  • 木村 洋一(一般社団法人 日本血液製剤機構 経営戦略部)
  • 野島 清子(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
  • 平安山 知子(九州大学病院 遺伝子・細胞療法部)
  • 菅河 真紀子(東京医科歯科大学 大学院 医歯学総合研究科 政策科学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
原料血漿の採漿基準、安全対策、製造に伴う問題、医療現場での使用状況等について国内外の状況を調査し、今後の安全で安定供給を視野に入れたわが国の原料血漿採漿方法に関する政策提言を行うことである。
研究方法
わが国の献血者や人口データ、厚生労働省の審議会等資料、社会保険組合医科レセプト情報及び公表論文やWebサイト、海外機関への質問、海外の血漿分画事業に関する会議に出席するなどして情報を収集して分析した。
結果と考察
置換血小板を導入した場合は、少なくともネガティブ予測を当面満たすことができる。今後、血漿採血が増加することからコスト増大するが、それは血漿採血の採漿単価が飛びぬけて高いためである。スクリーニング検査とNATのコストは、日赤のHBs-Agの検査を廃止することで節約されるコストは、約2.7億円であった。
海外の成分献血基準は、スペイン、オーストラリア、フランスでは50kg 以上、採血可能年齢は、スペインでは男女共に18-65歳、オーストラリアでは男女共に18~70歳(初回献血者)または18~80歳(定期、頻回献血者)となっている。採血回数は、スペインでは年間24回まで、かつ上限採血量25リットルであり、オーストラリアでは年間25回までで、1回採血量は循環血液量の 13% で開始し、上限18%まで増量となっている。
外資系メーカーでは分画用血漿に対して、HBV,HIV,HCVのNAT検査は求められてないこともありHBs抗原、HCV抗体、HIV-1/2抗体実施されていないこと、ボランタリーにシャーガス抗体、HTLV-1/2抗体、サイトメガロウイルス検査が実施されている等の特徴が見られた。輸血用にボランタリーに実施されているHEVとウェルトナイルウイルス(WNV)のNAT検査は分画用には実施されていないことが分かった。
免疫グロブリン製剤の需要増加は国内だけではなく海外においても同様の傾向を示している。米国では平均9%/年と日本より増加のペースが速く、直近10年間で供給量が2倍程度増加している。米国における使用疾患の内訳では原発性免疫不全症(PID)が最も多く、次いで自己免疫性疾患であるCIDP、MGが続いていた。 
増加する需要に必要な原料血漿を確保するため、分画事業者は各社とも傘下の採漿業者が運営する採漿センターを増やすなどの対応を図っており、2018年度では米国内で確保された原料血漿の9割以上が分画事業者によるものである。採漿は有償が中心であり、原料血漿必要量の増加を背景に積極的なドナーリクルート活動が展開されている。
 九州大学病院での免疫グロブリン製剤の年間総使用量は2010年から2018年までで、平均27,106(22,700 – 32,295)g/年であった。10年前の2010年は29,734gで、最も少ないのは2014年であった。その後の使用量は毎年増大しており、2016年12月のCIDPの運動機能低下の進行抑制の適応承認後は2017年31,124g、2018年32,295gとなり、2019年は半期で19,590gであった。
カナダの免疫グロブリン製剤の自給率は、この10年で急減し、かつては50%程度を維持できていたものの現在は13.5%程度に過ぎない。そこで、2019年から2024年における血液事業5か年計画の一つとしてグロブリン製剤の原料となる血漿の安定的確保が織り込まれた。
オーストラリア赤十字社は、免疫グロブリンの国内自給率を60%まで引き上げることとしている。この目標達成のために行われ、ビジネスモデル作り目標に到達するために推奨事項を設定している。
人口及び献血者データから将来、原料血漿を効果的に採取できる立地が同定できた。医療では10%のグロブリン製剤の登場によって治療時間が短縮化され、入院から外来、在宅へと治療形態が変化していた。
結論
需要が高まる免疫グロブリン製剤をめぐっては、単に需給バランスを議論することなく、維持療法中止の目安や対象となる患者が明確化による使用の適正化が図られる可能性や、グロブリン製剤の需要を正確に把握するとともに、適正使用の推進、適応症の範囲を慎重に同定する必要がある。
今後免疫グロブリン製剤の適応疾患における新規治療法による需要減少の可能性についても注視していく必要がある。
また、血漿成分献血者が多く確保できる献血施設での献血の種別を見直し、血漿献血者を増やさねばならない。その際、フランス、カナダ及びオーストラリアが参考になる。
血漿分画事業の事業構造は日米で同様であるが、日本では薬価下落による収益性の低下が危惧される。
日本赤十字社以外の採血事業者の新規申請が可能となったことを受け、スクリーニング項目に関する指針等の作成が必要である。

公開日・更新日

公開日
2021-05-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2021-05-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202025009C

収支報告書

文献番号
202025009Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,700,000円
(2)補助金確定額
3,700,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 140,142円
人件費・謝金 2,933,927円
旅費 0円
その他 625,931円
間接経費 0円
合計 3,700,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2021-05-28
更新日
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