新たな手法を用いた肝炎ウイルス検査受検率・陽性者受診率の向上に資する研究

文献情報

文献番号
202021006A
報告書区分
総括
研究課題名
新たな手法を用いた肝炎ウイルス検査受検率・陽性者受診率の向上に資する研究
課題番号
20HC1001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
是永 匡紹(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター 肝炎情報センター)
研究分担者(所属機関)
  • 立道 昌幸(東海大学医学部)
  • 榎本 大(大阪市立大学大学院医学研究科 肝胆膵病態内科学)
  • 江口 有一郎(医療法人ロコメディカル ロコメディカル総合研究所)
  • 井上 貴子(名古屋市立大学大学院 医学研究科)
  • 日浅 陽一(愛媛大学大学院 医学系研究科 消化器・内分泌・代謝内科学)
  • 内田 義人(埼玉医科大学 消化器内科・肝臓内科)
  • 相崎 英樹(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 日高 勲(山口大学医学部附属病院 肝疾患センター)
  • 井出 達也(久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門)
  • 小川 浩司(北海道大学病院 消化器内科)
  • 寺井 崇二(新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科分野)
  • 柿崎 暁(群馬大学大学院医学研究科 肝臓内科)
  • 井上 淳(東北大学病院消化器内科)
  • 末次 淳(岐阜大学医学部附属病院)
  • 永田 賢治(国立大学法人宮崎大学 医学部内科学講座消化器血液学分野)
  • 島上 哲朗(金沢大学 附属病院 地域医療教育センター)
  • 井上 泰輔(山梨大学医学工学総合研究部)
  • 加治屋 幹人(広島大学大学院医系科学研究科)
  • 村上 智昭(京都大学大学院 医学研究科)
  • 池上 正(東京医科大学 茨城医療センター)
  • 杉山 文(広島大学大学院 医系科学研究科 疫学・疾病制御学)
  • 廣田 健一(札幌医科大学 医療情報企画室)
  • 遠藤 美月(大分大学医学部附属病院医療安全管理部)
  • 瀬戸山 博子(熊本労災病院 消化器内科)
  • 考藤 達哉(国立国際医療研究センター国府台病院 肝炎・免疫研究センター)
  • 加藤 彰(JCHO下関医療センター)
  • 横須賀 收(千葉大学 大学院医学研究院)
  • 板倉 潤(武蔵野赤十字病院 消化器科)
  • 近藤 泰輝(仙台厚生病院 消化器センター 肝臓内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成26年~令和元年の6年間「効率的な肝炎ウイルス検査陽性者フォローアップシステムの構築」「職域等も含めた肝炎ウイルス検査受検率向上と陽性者の効率的なフォローアップシステムの開発・実用化に向けた研究」内で①職域肝炎ウイルス検査促進とモデル地域で陽性者に対する新規フォローアップシステム開発②地方公共団体が実施主体である肝炎ウイルス検診・フォローアップ事業の問題点抽出③電子カルテアラートシステムを用いた院内肝炎ウイルス陽性者への受診勧奨の課題④院外非専門医から紹介を高めるシステム⑤働く陽性者に対する両立支援の必要性を検討し、非受検者が多く存在する職種や地域が明らかとなり、開発したシステムを全国に水平展開することで、肝炎ウイルスの周知向上、陽性者の医療機関受診率・受療率の上昇が確認された一方で、各システムに反応しない陽性者・医師、システムを導入しても十分な向上が得られない地域が存在することが明らかになった。
本研究は、開発してきた既存システムを改良し全国へ展開するだけに留まらず、受検者・陽性者に対して新規手法を用いて、背景因子や受診行動に応じた最適なアプローチの方法を検討し、実用化することを目的とする。
研究方法
・ 職域肝炎ウイルス検査受検率・陽性率を解析することでその必要性・課題を確認し受診システム開発
・院内の手術時に見つかる肝炎ウイルス陽性者の受診阻害要因を明らかにし、拠点病院以外の医療機関での実態調査を行うとともに、非専門医科へ肝炎医療コーディネーター(Co)を配置することによる効果、また特定科(眼科・歯科)医師自身による啓発モデルを開発
・肝炎ウイルス検査受検者が陽性・陰性に関わらず、その結果を長期間、覚えているように意識づける方法を開発
・自治体が行う肝炎ウイルス検診陽性者受診確認状況を担当分担員が連携し、毎年調査を実施、更に受診確認方法に新規手法(QRコード、検査医師利用)をモデル地区で検討
・「治療と仕事の両立支援」に対する通院患者さんの認知度、癌になっても働く意志について多施設共同で実態調査

結果と考察
・Nudgeを用いた受検勧奨が有効であることを論文化し(Environ Health Prev Med. 2021 ) 協会けんぽ10支部に展開、A支部では2017~3年間で累積約120万にたいして約9.4万人に肝炎ウイルス検査を受検させることに成功した。陽性率は自治体実施主体の肝炎ウイルス検診より低率であったが、60歳代より50歳代の陽性率が高いこと、またレセプト用いることで2017~2018年の陽性者の約60%が医療機関を受診していることを確認した。繰り越しにより遅れていたJMDCからレセプトデータの解析が進んだ
・分担医療機関の医療安全講習会等でHCV最新治療・HBV再活性化についてのアンケートを行い、その認知度調査から内科以外で認識度が低いことが非紹介要因とわかり論文化した(Int Med.2021)。
・非専門医科からの陽性者紹介に院内肝Coの有用性が明らかとなったが、拠点病院ではCoの約25%が活動をしておらず、非専門医科には殆どCoが存在しないことが明らかとなった(肝臓 2021)。
・検査結果、HCV排除後もHCV抗体が持続陽性であることを認識することを目的に陰性・排除カードを作成、分担研究員外来で配布を行ったところ陰性結果を認識している患者は5%未満であった。
・術前肝炎ウイルス検査数が多い眼科医が多く属する日本眼科医会、および観血的治療が多い歯科医師会(愛知県)と連携し、アンケート調査や陽性者受診勧奨促進をモデル地域・病院で開始、非専門医の立場を理解することが紹介促進に結び付く可能性が示唆された。更に繰越により眼科医会では群馬・北海道と水平展開され、歯科ではアンケート調査を論文化した(肝臓 2021)。
・陽性者の受診確認方法をQRコードや検査委託医療機関に変更するだけで飛躍的に精検率が向上し(川崎モデル)、繰越により他自治体で水平展開が可能となった。
・「治療と仕事の両立支援」に関するアンケート調査の倫理委員会申請を行い20施設以上で行う準備が終了し、繰越により3000例以上が集積、その中間解析にて、両立支援の周知不足、がんになっても仕事を継続したい肝疾患の患者が半数いることが明らかになった。
開発したシステムの全国展開・調査内容の解析、コミュニケーションツール作成を来年度に行う。
結論
自治体検診のみならず職域にも陽性者は多く存在し、検査促進とともにレセプトや検査医師を利用した受診勧奨システムを利用する施設の増加を目指す必要がある。非専門医対策には拠点病院自らが院内肝Coの配置改善、特定科(眼科・歯科)との連携により他科の環境にあわせた受診勧奨方法の開発が考慮される。検査結果を忘れさせない工夫や肝炎に対する知識向上も肝炎撲滅には必須である。

公開日・更新日

公開日
2021-06-04
更新日
2023-03-07

研究報告書(PDF)

倫理審査等報告書の写し
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2021-06-04
更新日
2023-03-07

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202021006Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
43,000,000円
(2)補助金確定額
43,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 20,430,883円
人件費・謝金 6,695,817円
旅費 2,385,068円
その他 10,490,690円
間接経費 3,000,000円
合計 43,002,458円

備考

備考
差額 2,458円は、その他の経費が超過したため、分担研究者が自己資金より支出した。

公開日・更新日

公開日
2023-03-07
更新日
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