HIV検査体制の改善と効果的な受検勧奨のための研究

文献情報

文献番号
202020013A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV検査体制の改善と効果的な受検勧奨のための研究
課題番号
19HB1001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
今村 顕史(東京都立駒込病院 感染症科)
研究分担者(所属機関)
  • 西浦 博(京都大学 大学院医学研究科 社会健康医学系専攻)
  • 本間 隆之(山梨県立大学 看護学部)
  • 土屋 菜歩(東北大学東北メディカル・メガバンク機構)
  • 佐野 貴子(嶋 貴子)(神奈川県衛生研究所 微生物部)
  • 後藤 直子(日本赤十字社 血液事業本部 技術部 安全管理課)
  • 井戸田 一朗(しらかば診療所)
  • 加藤 眞吾(株式会社ハナ・メディテック)
  • 貞升 健志(東京都健康安全研究センター 微生物部)
  • 渡會 睦子(東京医療保健大学 医療保健学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
65,715,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動 研究分担者 西浦博 国立大学法人 北海道大学(~令和2年7月31日)→国立大学法人 京都大学(令和2年8月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、「検査所の利便性向上」、「受検アクセスの改善」、「HIV診断検査の充実」の「3つの柱」に分け、これまでの検査の再評価を行い、従来の検査法の改善や新たな取り組みの検討を行う。そして、これまで受検勧奨が十分に届いていない地方のハイリスク層への新たな受検勧奨モデルを構築していくことを目指す。
研究方法
地方での検査体制を強化するために、疫学に関する分担研究から地域ブロック別の疫学データと地域特性を考慮して、東北、北陸、九州の3地域を対象に選定し、地域特性や検査ニーズ等を比較検証し、地方に共通な課題、または各県に独自の課題を抽出する。そして、各分担研究の方策を組み込みながら、COVID-19流行下での検査の在り方、郵送検査の信頼度向上と「プレ検査」としての新たな利用法の開発、受検勧奨が十分でなかった地方のハイリ スク層への新たな受検勧奨モデルを構築していく。
結果と考察
地方での検査体制を強化するために、選定した地域の自治体保健所調査や検査データ等多方面からの調査を引き続き行った。COVID-19の流行により北陸3県、北東北3県のMSMを対象とした郵送検査実施のHIV検査サイトを構築し、それを介しての郵送検査を実施し、検査サイトを通じて検査前後のアンケート調査を行った。
保健所におけるHIV検査件数の動向を、統計モデルを用いて時系列解析をすることで、2020年第1~2四半期で件数がどの程度減少したかを推定した。COVID-19流行の影響により「本来HIV陽性が発見できたはずの感染者」が多く見逃がされていることが浮き彫りになった。
MSMおよびゲイ・バイセクシャル男性の、COVID-19流行下におけるHIV検査受検行動の把握を目的としてインターネット調査を行った。HIV検査を受けたいと思った614人中,32.6%がCOVID-19の予防のためにHIV検査を控えたと回答した。
全国の保健所等にHIVと梅毒の検査に関するアンケート調査を実施し2020年の情報を得た。回収率は保健所で57%(305/531施設)、特設で74%(15/19施設)と例年よりかなり低かった。COVID-19により休止、縮小等の変化があった保健所は約7割であった。また、COVID-19下での保健所等での対応状況をまとめた事例集を作成した。
HIV郵送検査の現状について、郵送検査会社に対してアンケート調査を行い、検体、検査法、検査結果の通知法等に関する実態調査を行った。全体のHIV年間検査数は105,808件であり、昨年と比較して15.0%減少した。団体検査の推定受検者率は42%であった。
MSM対象のNPO法人によるHIV検査会を実施した。実施回数は7回、91名が受検した。また協力施設である民間クリニックにおけるHIV検査実施状況調査では、検査数は2001年本調査開始以降最多であり、COVID-19流行により保健所等でのHIV検査数が減少した一方で、民間クリニックの検査数は減少せず、検査のニーズは保たれていた。
インターネットサイト「HIV検査・相談マップ」の研究では、年間サイトアクセス数は、2020年は147万件であり、過去最高となった前年と比較して34%減となった。
唾液を検体として用いた検査は、検査として有用である可能性があるとし、唾液検体を用いた場合のHIV遺伝子検査について、感度を保ったまま安全に検体を郵送する方法を開発した。
HIV検査ガイドライン「診療におけるHIV-1/2感染症の診断ガイドライン2020」を作成した。新たに薬事承認されたHIV-1/2抗体確認検査法と既に使用されている核酸増幅検査法(NAT)の結果の解釈を中心に記載し、2020年10月に日本エイズ学会ホームページに掲載された。
結論
今後、各分担研究の方策を組込みながら、COVID-19流行下での検査の在り方、郵送検査の信頼度向上と「プレ検査」としての新たな利用法の開発、地方ハイリスク層への受検勧奨など、新たな受検勧奨モデルを構築していく。
本研究班によって構築される検査体制は、長期的な戦略としても、我が国におけるHIV早期診断に直接的な影響を与えていくことが期待される。その結果、エイズ発症者が減少し、早期治療による長期合併症予防、さらには感染拡大を防ぐという、我が国のエイズ対策の大きな目標に貢献する社会的意義の高いものであると考えられる。また、現在のCOVID-19流行下のような社会環境の変化に応じた幅広い検査の機会は、HIV感染症の正しい知識を受検者に与え、その後の感染予防を促すという、重要な役割も担っている。したがって本研究班の活動は、検査の受検拡大を進めると同時に、HIV感染症の社会啓発にも寄与することも期待される。

公開日・更新日

公開日
2021-07-05
更新日
2022-06-09

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-07-05
更新日
2022-06-09

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202020013Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
67,905,000円
(2)補助金確定額
67,316,674円
差引額 [(1)-(2)]
588,326円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 18,778,214円
人件費・謝金 16,381,022円
旅費 163,456円
その他 29,803,982円
間接経費 2,190,000円
合計 67,316,674円

備考

備考
差異588,326円の理由につきましては、自己負担金4,498円(加藤眞吾4,332円、佐野貴子166円)および返納金592,824円(土屋菜歩)の発生によるものです。

公開日・更新日

公開日
2021-07-05
更新日
2022-06-09