検疫所における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の抗原・抗体検査等の導入に向けた評価研究

文献情報

文献番号
202019030A
報告書区分
総括
研究課題名
検疫所における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の抗原・抗体検査等の導入に向けた評価研究
課題番号
20HA2006
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
亀井 美登里(埼玉医科大学 医学部社会医学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
2,310,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の新たな検査方法の国内外の開発状況、海外での活用事例の収集等行い整理する。また、症状の有無や発症時期、渡航地や行動歴から事前確率の高い集団を見積もり、簡易抗原検査の偽陽性、偽陰性を減らせるか検証し、簡易抗原検査の偽陰性を想定した上で、妥当な追加検査や経過観察方法を立案する。検疫におけるCOVID-19と季節性インフルエンザの鑑別診断のあり方等を整理する。各検査法について検疫の現場に導入するにあたりメリット、デメリット、必要な人員体制、費用、効果的な活用方法等について日本の検疫所での実運用の観点からも評価を行う。また、新たな検査方法の円滑な導入を検討し、もってCOVID-19に関する日本の検疫の質の向上や効率化を実現することにより、将来、地方海空港でも使用できる簡易抗原検査等を用いたマニュアルの基礎資料に資することを目的とする。
研究方法
1.国内外の抗原・抗体検査等の開発状況を収集し整理。
2.日本の検疫所における国内外の抗原・抗体検査等の性能比較に関する研究。
3.検疫におけるCOVID-19と季節性インフルエンザの鑑別診断について。
4.諸外国における空港(入国後)での検査実施状況の調査。
5.諸外国におけるPCR検査、抗原検査の状況について。
6.各検査法について検疫の現場に導入するにあたり必要な人員体制、費用、効果的な活用方法等について、それぞれメリット、デメリットを整理する。
7.検疫に関するマニュアル基礎資料の作成。
結果と考察
結果
1.国内外の抗原・抗体検査等の開発状況を収集し整理した結果、国内外において多くの簡易抗原・抗体検査キットの開発・販売が行われていた(表1,2)。また、一部の簡易抗原検査キットは承認されていたが、簡易抗体検査キットはいずれも未承認であった。
2.日本の検疫所における国内外の抗原・抗体検査等の性能比較に関する研究を行った結果、我が国の空港検疫において、簡易抗原検査キットを導入した場合、偽陰性率は71.2%であった。また、有症状者に限定した場合の偽陰性率は56.5%、さらに発症早期に限定した場合の偽陰性率は27.3%であった。
3.検疫におけるCOVID-19と季節性インフルエンザの鑑別診断のあり方等を整理したところ、確定患者と明らかな接触があった場合や、特徴的な症状(インフルエンザにおける突然の高熱、COVID-19における嗅覚味覚障害など)がない場合は、臨床症状のみで両者を鑑別することは困難であった。また、インフルエンザとCOVID-19の混合感染は、COVID-19 による入院患者の 4.3-49.5%に認められた。なお、2020-2021年流行シーズンの季節性インフルエンザ患者は例年に比べて極端に少なく、妥当な評価ができる状況に至らなかったと考える。
4.諸外国における空港(入国後)での検査実施状況を調査した結果、COVID-19検査状況は、事前のPCR検査証明書の確認か、PCR検査結果で確認を行っていた。
5.諸外国における空港(入国後)での検査実施状況の概要は、表3の通りである。
6.各国におけるPCR検査、抗原検査の実施状況を調査した結果、諸外国の多くはPCR検査による確認が行われていた(表4)。
各検査法について検疫の現場に導入するにあたり、必要な人員体制、費用、効果的な活用方法等について、それぞれメリット・デメリットを整理した。その結果、簡易抗原検査はPCR法に比べ判定時間が短く、専門技術者が必要ないため現状で対応することが可能である等、PCR法と比較して多くの長所があった。特に、定量抗原検査ならば、検体は唾液でも可能であり、PCR検査に比べて判定時間が短く、検査手順も簡便、専門的技術者も必要とせず、環境整備等に係る負担も小さいため、地方海空港検疫でも十分導入可能であり、その利便性は高いと考える(表5)。
7.検疫に関するマニュアルを検討する際の基礎資料として活用。

考察
日本の検疫所における国内外の抗原・抗体検査等の性能比較に関する研究を行った結果等から、検疫において、有症状者、発症時期、渡航地などを勘案して簡易抗原検査キットを使用した場合、偽陰性は最大27.3%と比較的低いが、PCR法との併用が必要である。しかし、定量抗原検査ならば、検体は唾液でも可能であり、PCR検査に比べて判定時間が短く、検査手順も簡便、専門的技術者も必要とせず、環境整備等に係る負担も小さいため、地方海空港検疫でも十分導入可能であり、活用できるものと考える。
結論
COVID-19の検疫において、症状等勘案したうえで定量抗原検査法を地方海空港検疫で導入可能であり、活用できる。

公開日・更新日

公開日
2022-03-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-03-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202019030C

収支報告書

文献番号
202019030Z