成人の侵襲性細菌感染症サーベイランスの充実化に資する研究

文献情報

文献番号
202019015A
報告書区分
総括
研究課題名
成人の侵襲性細菌感染症サーベイランスの充実化に資する研究
課題番号
19HA1005
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
大石 和徳(富山県衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 阿部 修一(山形県立中央病院 感染症内科・感染対策部)
  • 池辺 忠義(国立感染症研究所 細菌第一部)
  • 大島 謙吾(東北大学病院 総合感染症科)
  • 笠原 敬(奈良県立医科大学 感染症センター)
  • 神谷 元(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 金城 雄樹(東京慈恵会医科大学 細菌学講座)
  • 窪田 哲也(高知大学教育研究部医療学系臨床医学部門)
  • 黒沼 幸治(札幌医科大学医学部呼吸器・アレルギー内科学講座)
  • 鈴木 基(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 砂川 富正(国立感染症研究所 感染症疫学研究センター)
  • 高橋 英之(国立感染症研究所 細菌第一部)
  • 田邊 嘉也(Niigata University)
  • 常 彬(国立感染症研究所 細菌第一部)
  • 土橋 酉紀(国立感染症研究所感染症疫学センター)
  • 西 順一郎(鹿児島大学病院医学部・歯学部附属病院小児科)
  • 藤田 次郎(琉球大学大学院 感染症・呼吸器・消化器内科学(第一内科))
  • 丸山 貴也(国立病院機構三重病院 臨床研究部)
  • 村上 光一(国立感染症研究所 感染症危機管理研究センター)
  • 渡邊 浩(久留米大学医学部感染制御学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
12,650,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
成人侵襲性細菌感染症サーベイランス体制を構築し、侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)、侵襲性インフルエンザ菌感染症(IHD)、侵襲性髄膜炎菌感染症(IMD)、劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)の届出症例毎の患者情報と原因菌を収集し、原因菌の血清型や遺伝子型等の関連性を明らかにする(https://www.niid.go.jp/niid/ja/ibi/3679-ibi-top.html)。
研究方法
研究デザインは前向き観察研究で、IPD, IHD, STSSについては、国内10道県で感染症発生動向調査(NESID)に報告された症例を登録し、その基本情報を各自治体から研究分担者に連絡した。IMD については全47都道府県で小児〜成人を対象に同様の調査を実施した。
結果と考察
① 成人IPD:
1) 23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)のIPDに対するワクチン効果: 20歳以上の成人IPD症例を対象として、Broom’s 法によりPPSV23接種のワクチン効果(VE)を推定した(Shimbashi R, et al. Emerg Infect Dis, 2020)。PPSV23含有血清型に対しては42.2%であった。また、年代別では、20〜64歳ではVEは59.0%であり、65歳以上に対しては39.2%であった。2) 2017年〜2019年における全IPDの罹患率は約2.0(/10万人)であった。同期間の主要血清型の血清型特異的罹患率(/10万人年)の評価では、血清型12Fが0.36から0.17と低下していた。また、2020年の本研究班におけるIPDの登録症例は163例と例年の約半数に減少しており、COVID-19流行の影響と考えられた。3) 血清型3,19AによるIPD症例の約8割が菌血症を呈する肺炎を呈し、血清型10A, 23AによるIPDではその約1/3が髄膜炎を呈していた。これらの所見から血清型がIPDの病型決定に重要な役割を果たすことが示唆された。4) WHOが支援する「Pneumococcal Serotype Replacement Distribution Estimate Project」に参加し、2編の研究班としての共著論文が発表された。5)小児・成人のIPDの疫学情報のホームページ(https://ipd-information.com)をデータをアップデートした。
②成人IHD: 2014年〜18年に登録された成人IHD患者200症例の臨床細菌学的データの解析において、65歳以上では肺炎が大半を占め、15〜64歳では肺炎の割合は40%程度で、菌血症は35%であった。原因菌の95%はNTHiであった。
③IMD: 全年齢のIMD症例98例の解析から、国内承認の髄膜炎菌ワクチンに含有されていない血清群Bによる症例が21%と2番目に多かった。このため、マスギャザリングの感染症対策の一環として、国内における血清群Bに対するワクチンの国内承認が急務と考えられた。
④成人STSS: 243例の解析から、患者年齢中央値は、S. pyogenes (69歳)が、S. agalactiae (74歳)及びS.dysagalactie subsp. equismilis (80歳)より低かった。また、推定侵入門戸不明が50%以上を占めたが、推定侵入門戸が判明している症例では皮膚(33%)が最多であった。上記3菌種のいずれでも患者の致命率は35〜50%と高かった。
結論
PPSV23接種による65歳以上の成人のIPDに対するワクチン効果(39.2%)が明らかになった。2017年〜19年のIPD罹患率(/10万人年)の評価が可能となり、12F血清型特異的な罹患率は2019年には低下していた。また、2020年に成人IPD症例の登録数が約半数に減少した。血清型3,19AによるIPD症例の約8割が菌血症を伴う肺炎であるのに対し、血清型10Aおよび23Aによる症例はその約1/3が髄膜炎であった。これらの所見から血清型がIPDの病型決定に重要な役割を果たすことが示唆された。
成人IHD患者の解析において、65歳以上では肺炎が大半を占めること、15〜64歳では肺炎の割合は40%に減少し、菌血症は35%に増加することが判明した。
IMD症例98例の解析から、血清群Bによる症例が21%と血清群Yに次いで2番目に多かった。国内における血清群Bに対するワクチンの国内承認が急務と考えられた。
STSS 243例の解析において、原因菌別の患者年齢はS. pyogenes (69歳)が、S. agalactiae (74歳)及びS.dysagalactie subsp. equismilis (80歳)より若かった。

公開日・更新日

公開日
2022-03-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-03-29
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収支報告書

文献番号
202019015Z