たばこ関連疾患の予防のための効果的な禁煙教育及び普及啓発活動に関する研究

文献情報

文献番号
200805030A
報告書区分
総括
研究課題名
たばこ関連疾患の予防のための効果的な禁煙教育及び普及啓発活動に関する研究
課題番号
H20-特別・指定-025
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
木田 厚瑞(日本医科大学内科学講座呼吸器・感染症・腫瘍内科部門)
研究分担者(所属機関)
  • 相澤久道(久留米大学医学部内科学講座呼吸器・神経・膠原病内科部門)
  • 久保惠嗣(信州大学医学部内科学第一講座)
  • 茂木孝(日本医科大学内科学講座呼吸器・感染症・腫瘍内科部門)
  • 佐藤直樹(日本医科大学内科学講座循環器・肝臓・老年・総合病態部門)
  • 土橋邦生(群馬大学医学部保健学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
COPDは近年、ようやく注目されるに至った肺の生活習慣病である。その発症と増悪の両面において喫煙習慣は深く関わっておりその対策は喫緊の課題である。本研究では「近年の科学情報にもとづき全ての医療者が連帯し全ての喫煙習慣のある患者に1分間ないし5分間の禁煙運動を進める」につなげていくことを目的とした。
研究方法
1)医師、看護師、検査技師、理学療法士などの医療者の喫煙に対する認識調査、2)最近の喫煙健康被害に関する文献検索とそのまとめの作成、3)1分間および5分間禁煙教育用のリーフレットと簡単な手引き書の作成、を実施した。本年度は若年女性に禁煙の必要性を訴えるための資料を作成した。
結果と考察
本年度の調査研究において多職種の医療者における喫煙実態がある程度、明らかになった。医療者の中の喫煙率が必ずしも低くないこと、喫煙者は禁煙教育に不熱心なこと、5A(Ask, Advice, Assess, Assist, Arrange)が知られているがこのうち1分間内禁煙アドバイスとしてのAsk, Adviceはほぼ応じられる知識を得ているが、さらに内容を深めた5分間内禁煙アドバイスでのAdvice, Assessでは十分、応じられないことが示唆された。
喫煙による健康被害ではビッグスリーといわれるCOPD、肺がん、虚血性心疾患をグループ化した対策という視点が重要である。特に受動喫煙によりCOPDの発症があるという疫学データは重要であり政策に反映させる必要がある。特に小児、高齢者などの弱者を含めた受動喫煙対策を早急に立てる必要がある。
結論
すべての医療者の連帯による禁煙運動が有用と考えられるが医療者が有している情報は十分ではなく継続的に新情報を提供し、禁煙教育のスキルアップを図り、また関心度を高めていく必要がある。現時点では全医療者の連帯による禁煙運動の展開していくためには効率的な準備を進めることが必要である。

公開日・更新日

公開日
2010-06-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200805030C

成果

専門的・学術的観点からの成果
COPD患者の発症予防、増悪防止という見地から禁煙はCOPDガイドラインで最重要視されている。本研究は学術的な立場から禁煙の必要性を文献的に渉猟しそのまとめを作成した。特にCOPDを中心とした禁煙を推進するために全ての医療者が全ての喫煙者に1分間ないし5分間の短時間、働きかけるという方法は従来にない手法である。またこの方法は英国の一般医(GP)の学術団体GPIAG (General Practice Airways Group) が科学的な裏づけのある方法として推奨しているものである。
臨床的観点からの成果
COPDの臨床的な特徴は気管支喘息と異なり肺だけの病変ではなく全身諸臓器に並存症と発症するという点にある。たばこが起こすビッグスリーの病変とはCOPD,肺がん、虚血性心疾患であるがこれらは共存する可能性が高い。COPDでは多職種にわたる医療者のチーム医療として治療が進められなければならないがこの考えに合致したものである。他方、1分間ないし5分間の短時間、働きかけるという方法は簡便であり容易に実施できるという特徴がある。
ガイドライン等の開発
日本呼吸器学会ではCOPDのガイドラインの改定作業を進めている(2009)。禁煙教育は最重要な治療法であるが先に班長、木田らが開業医に対して実施したアンケート調査結果では患者指導の資料、方法が不明であるとする意見が多数を占めた。日本呼吸ケア・リハビリテーション学会では先の新COPDガイドラインを補完する開業医、コメデイカルに対する解説書を編集の予定であるがこの中に簡便な禁煙教育の方法として取り入れることを計画中である。
その他行政的観点からの成果
わが国の禁煙施策は先進国の中では極めて低いstage IIという評価を受けている。欧米諸国のstage IVに達するには多くの障壁を解決する必要がある。本研究で提案した全ての医療者が喫煙患者に遭遇した場合に1分間ないし5分間の短時間、働きかけるという方法は禁煙のプロセスとなっている5Aの過程を踏まえたものであり全国的な運動として展開できる可能性が高い。今後は日本医師会、日本看護協会など医療者の団体のご協力を頂きながら進めていくことが考えられる。
その他のインパクト
禁煙運動は学術団体だけで進めることは容易ではなくとくにメデイアの協力が必要である。班長、木田は「肺の生活習慣病COPD」(中公新書、2008)を刊行しその中で各種の生活習慣病に共通するという視点でCOPDを捉えることの重要さを指摘した。今後はマスメデイアが取り上げやすいような形として1分間ないし5分間の短時間の禁煙教育の推進を働きかける予定である。これはわが国での新しい禁煙運動となって広まることが期待できる。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
中田 淳、佐藤直樹ら. 第73回日本循環器学会総会
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-