ゲーム障害の診断・治療法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
202018048A
報告書区分
総括
研究課題名
ゲーム障害の診断・治療法の確立に関する研究
課題番号
20GC1022
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
松崎 尊信(独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター 精神科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
6,201,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2019年WHOは「ゲーム障害」を精神疾患に収載したICD-11を承認した。日本におけるゲーム障害の実態について、まだ不明な点が多く、相談機関や専門的治療を行っている医療機関も限られている。本研究では、
○ゲーム障害の実態調査
○相談機関向け対応ガイドライン、教育機関向け対応マニュアルの作成
○ゲーム障害の標準的治療法の開発と効果検証
○ゲーム障害に関する研究のreview
を実施し、ゲーム障害の対策を提言し、ゲーム障害の相談・治療ニーズに適切に対応できる体制整備に寄与することを目的とする。
研究方法
1) わが国の10-79歳を代表するサンプルにおけるインターネット、ゲームの使用時間に着目し、よく使うインターネットサービスとゲームの種類との関連について解析した。
2) 全国の精神保健福祉センターを対象に、年間の相談件数、相談内容、相談対応などに関する調査を実施した。
3) 札幌市内において児童思春期のメンタルケアを担当する小児科医・精神科医62名を対象とし、郵送によるアンケート調査を実施した。
4) 和歌山県内の県立普通科高校1〜3年生343人を対象に、スマートフォンの利用時間や利用アプリ等について調査した。子どもでもわかりやすいようにビジュアル化した「ビジュアルカード」を開発し、担当教員や養護教諭が、児童生徒に聞き取りをおこなうための項目案、および、ゲーム障害の判定フローチャートを作成した。
5) ゲーム障害対策案の提言をするために、国内外の研究論文をレビューした。
6) スクリーニング尺度のレビュー、および、スクリーニング尺度日本語版を作成した。
7) ゲーム障害に対する認知行動療法をベースとした治療プログラムを開発した。
結果と考察
1) インターネット使用時間もゲーム時間も、大多数は長時間使用者ではないが、一部に極めて長時間使用する者が存在した。インターネット使用時間は男女差が小さいが、オンラインゲーム時間は男性で長かった。インターネット時間もゲーム時間も平日よりも休日に長い者の割合が高かった。インターネットの利用サービス別にインターネット使用時間の分布をみると、オンラインゲームに次いで動画サイト、SNSが長時間の者の割合が高かった。
2) 全国の精神保健福祉センターの回答から、ゲーム依存の相談業務に関して、様々な課題があげられた。
3) ゲームに関連した問題で医療機関を受診する症例は少なくなかった。
4) 一日のスマートフォンの利用時間は内閣府調査等よりも長く、男子生徒よりも女子生徒のほうが若干長時間の傾向があった。主な利用は動画視聴であり、音楽、漫画、SNSなど、多様な用途で用いていた。
5) ゲーム障害対策は欧米諸国とアジアで大きく異なっており、文化的背景や政府が介入するかどうかも大きいと考えられた。大きく2つに分けると、アクセス制限などの積極的な制限を行う対策と、教育や情報共有・プログラム参加などリスクを減らす対策に分けられた。
6) 2019年以降に刊行されたゲーム障害スクリーニング尺度をレビューした結果、ICD-11ゲーム障害の診断基準に基づき開発された尺度で良好な信頼性・妥当性が確認されている尺度が複数検索された。10歳から使用可能な尺度や親評定版の存在する尺度があり、それらを本研究の患者・家族調査に用いることとし、尺度翻訳ガイドラインに従い日本語訳を作成した。
7) 久里浜医療センターで実施している認知行動療法プログラムに対して大幅な修正を加え、かつ、様々な資料を加えて包括的な治療プログラム(Comprehensive Treatment Program for Gaming Disorder, CAP-G))を作成した。
結論
1) 頻度は低いが、極めて長時間使用する者が存在し、ゲームは男性で頻度が高く、平日より休日で時間が長くなった。オンラインゲームをする者は、ネット使用時間が長い傾向があり、特定のゲーム種類を行うものが長時間使用になりやすい傾向が示された。
2) 今後、詳細な調査を実施し、現状を把握することにより、より現場に即したマニュアルを作成する。
3) 医療機関に通院しているゲームに関連した問題を抱える症例は少なくないが、専門的な治療を提供している医療機関はほとんどなかった。増加するゲーム障害への医療のニーズに対して、十分な対応医療機関が存在しないことが分かった。
4) 今後も実態調査を継続し、児童生徒が自ら実施可能なチェックリストの開発を進め、実際の教育現場での検証を行う。
5) 本邦の現状からは、ゲーム障害のリスクを減らす対策に重きをおく形が期待される。
6) 本年度の研究成果を踏まえ、来年度以降の患者・家族調査を実施する。
7) 新たに開発した認知行動療法プログラムの効果について、次年度の介入研究により検証していく。

公開日・更新日

公開日
2021-09-14
更新日
-

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公開日・更新日

公開日
2021-09-14
更新日
-

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収支報告書

文献番号
202018048Z