認知行動療法の技法を用いた効率的な精神療法の実施と普及および体制構築に向けた研究

文献情報

文献番号
202018042A
報告書区分
総括
研究課題名
認知行動療法の技法を用いた効率的な精神療法の実施と普及および体制構築に向けた研究
課題番号
20GC1016
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
堀越 勝(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター)
研究分担者(所属機関)
  • 内富 庸介(国立研究開発法人 国立がん研究センター 中央病院支持療法開発部門)
  • 大杉 泰弘(藤田医科大学 連携地域医療学)
  • 岡田 佳詠(国際医療福祉大学成田看護学部)
  • 片岡 弥恵子(聖路加国際大学大学院 看護学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
12,308,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国において認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy; CBT)の有用性が認識され、その有効性を示す結果も一部報告されている。また、厚生労働省認知行動療法研修事業によって、CBTを実施できる専門家が全国規模で育成されてきた。しかしながら、うつ病や不安症の患者数は膨大であり、また、精神科以外の様々な診療科や、地域保健・福祉・産業・教育等の領域でもそのニーズが認められるが、CBTおよびCBTの考え方を用いた支援方法が十分に提供されているとはいい難い。この供給不足の要因の1つとして、わが国で整備されてきたマニュアルでは長時間(一回50-90分)かつ長期間(通常10から16回)の個人療法が求められ、実施負担が大きいという問題点があった。この点を解決するためには、様々な臨床現場において適切な概念化をもとにして効率的にCBTを提供する手法の整備が必須である。
そこで、CBTの技法を用いた精神療法を効率よく提供するための効率型認知行動療法(Streamlined-Cognitive Behavioral Therapy; SCBT)に関して、1.SCBTの実施マニュアル・マテリアルの作成、2.マニュアルに基づくSCBTの研修効果の評価、3.ICT /人工知能技術を用いたコンサルテーションシステムの構築、4.臨床試験によるSCBTの有効性検証を目的とした。
研究方法
本研究は3年計画である。初年度では、CBTを用いた精神療法の効率的な実施に関しての現状把握とGood Practiceの確認を行い、その知見を踏まえてSCBTマニュアル・マテリアル・ウェブサイト暫定版を作成する。整備された素材を用いて研修を行い、様々な医療関係者からのフィードバックを取り入れ、素材を改善・追加する。代表者らは、すでにSCBTをわが国の臨床現場で実践するための枠組みを整理し、多職種に向けての研修も実施してきた。当該年度では、これらのこれまでの実績を整理し、プライマリ・ケア医、精神科医、看護師、助産師、公認心理師といった多職種、および実装科学の専門家らがそれぞれの立場から、臨床現場での適用法を検討し、マニュアル・マテリアル(心理教育リーフレット・用紙)・サポートセッション用の動画・ウェブサイト・アプリ等を作成する。さらに、作成されたマニュアルをもとに、多職種向けにSCBTのための査定・概念化・実施に関する研修を行い、その研修効果を検討するとともに、研修参加者からのフィードバックをもとにマニュアルを改善する。全国各地の臨床家がSCBTを実施する上で有用な介入マテリアルが集約されているウェブサイトを作成すし、このウェブサイトは、将来的にはコンサルテーションシステムとしても活用されることを想定している。
結果と考察
成果物として、SCBTを実施するためのマニュアル・マテリアル、それらを集約したウェブサイト、SCBT実施技能の知恵が蓄積されるコンサルテーションシステムの3点が挙げられる。さらに、臨床試験により実地の臨床現場におけるSCBTの効果に関するデータが得られる。R2年度は、治療者用マニュアルと患者用テキストに分けてマニュアルを作成し、マテリアルの整備を達成した。治療者用マニュアルについては、総論的なSCBTについて解説したマニュアル、ケースをSCBTの理論をもとに概念化するためのマニュアル、各論的なマニュアルとして社交不安症とパニック症に関して、疾患ごとのマニュアルを作成した。社交不安症とパニック症のSCBTにおいて、ロールプレイの動画を参照して学習できるように整備した。また、分担研究者及びgood practiceを行っている医療者とともに、各フィールドにおけるSCBTのニーズについてヒアリングならびに調査を行った。これらは、今後の予備試験、臨床試験だけでなく、普及均てん化の加速を促す役割を担うと期待される。
結論
我が国におけるCBT普及に係る現状と結果を踏まえて、効率的にCBTを提供する手法、すなわち、効率型認知行動療法(Streamlined-Cognitive Behavioral Therapy; SCBT)の治療者用と患者用の両マニュアルを作成した。さらに、実装科学の観点から、プライマリケアや周産期といった領域、職種においては看護師に対してヒアリングを行い、各フィールドにおける治療者のニーズ分析を行なった。認知行動療法を必要としている患者へ十分に行き届くよう、本マニュアルの効果検証を行い、広く活用されることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2021-09-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-09-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202018042Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
16,000,000円
(2)補助金確定額
15,988,801円
差引額 [(1)-(2)]
11,199円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,099,758円
人件費・謝金 2,818,330円
旅費 0円
その他 6,378,713円
間接経費 3,692,000円
合計 15,988,801円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2024-03-26
更新日
-