吃音、トゥレット、場面緘黙の実態把握と支援のための調査研究

文献情報

文献番号
202018006A
報告書区分
総括
研究課題
吃音、トゥレット、場面緘黙の実態把握と支援のための調査研究
課題番号
19GC1001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
中村 和彦(弘前大学大学院医学研究科 神経精神医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 金生 由紀子(国立大学法人東京大学大学院医学系研究科 こころの発達医学分野)
  • 菊池 良和(九州大学病院 耳鼻咽喉科)
  • 原 由紀(北里大学 医療衛生学部)
  • 斉藤 まなぶ(弘前大学大学院医学研究科 神経精神医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
3,461,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究では、「顕在化しにくい発達障害」であるトゥレット症、吃音症、場面緘黙症において、①重症度指標と生活困難指標を明確化すること、②簡便なスクリーニングツールの作成や音声不要のコミュニケーション・ツールの開発(タブレット型)を行うこと、③支援機関で対応するための支援マニュアルを作成すること、を目的とする。
研究方法
 本研究においては、幼児期から成人期まで、吃音、トゥレット、場面緘黙をひとつの発達障害群ととらえて研究を行う。2年間の目標を以下に定めて研究を進めていく。
<平成31年度>
マイルストーン①:幼児期早期から青年期の各年代調査を通じて、各障害の重症度指標と生活困難指標を明確化する。
マイルストーン②:当事者や家族への調査をもとに、当事者と相談者が困りごとを共有できる有効な質問項目を選定する。
マイルストーン③:乳幼児健診で言語に関わる障害を早期発見するための質問項目を選定する。
<令和2年度>
マイルストーン①:サービス提供者が利用できる問診用紙の開発やサービス利用者が発話なしでニーズを伝えられるコミュニケーション・ツールを開発する。
マイルストーン②:作成したアセスメントツールの妥当性、信頼性を検証する。
マイルストーン③:支援機関で対応するための支援マニュアルを作成し、適切な対応の統一を図っていく。
結果と考察
(1)吃音症:180名分のデータを収集した。データ解析の結果、吃音者は特定の場面で困り感が増加することが分かった。困難度を検出する問診票をライフステージごとに作成し(幼児7項目、学童期5項目、青年期以降4項目)、信頼性及び妥当性を検証した。また、支援機関で対応する支援マニュアルを作成した。また啓発用プリントを作成した。
(2)トゥレット症: トゥレット症に特異的なQOL尺度であるGTS-QOLの妥当性及び信頼性を検証すると共に、併発症状のうち外向的問題がQOLに大きい影響を及ぼすことを明らかにした。年齢に限らずに半数以上が臨床域の行動上の問題を有しており、思春期以降で性差が認められることを示した。幼児期、学童期(6~12歳)、青年期(13~18歳)、成人期という年齢別に有効な質問項目を選定して、支援マニュアルを作成した。
(3)場面緘黙: 症状が幼児期に限らないこと、家庭内や学校・職場以外の社会的状況においても困難度が高いことを明らかにした。さらに、メモパッドや身振り、ICT機器の活用など、幅広い支援ニーズを明らかにし、これらの成果を踏まえて支援機関で対応するための支援マニュアルを作成した。今後支援体制を整備していく上で非常に有用な知見を得られたと言える。
(4)乳幼児調査:1歳半児調査より約1割に言語の遅れが見られ、約2割に日常生活の困難感があることを明らかにした。また、吃音やチックは月齢19ヶ月でも出現していた。3歳児調査より5%の児は顕著に語彙が少ないことが明らかになったが、語彙の少なさよりも対人コミュニケーション力が日常生活の困難さに影響を与えることがわかった。コミュニケーションに関わる14項目の新尺度を作成した(感度82.8%、特異度96.8%)。5歳においてCLASPを用いた推定有病率は、吃音で保護者評定では0.7%、教師評定では1.2%で、チックは保護者評定が5.4%、教師評定が6.8%であった。いずれもASDやADHD、DCDは4~5割程度併存していた。吃音症、チック症ともに社会適応に影響があり、発達面・心理面から適切な支援が必要であることが示唆された。
結論
  本研究により、顕在化しにくい発達障害すなわち吃音症、チック症、トゥレット症、場面緘黙症の実態把握調査を行った。乳幼児期の調査から、顕在化しにくい発達障害すなわち吃音症、チック症、トゥレット症、場面緘黙症のアセスメントに関して、既存のスクリーニングツールでは早期発見の難しさが示唆された一方で、5歳児時点ではCLASPによる早期スクリーニングが可能であることが明らかになった。また、各年代により症状及び生活困難度の程度が異なることが明らかになった。これらのことから、障害の症状だけでなく、年齢や性別、社会的状況などを考慮した治療あるいは支援の必要性が示唆された。
 また、得られたデータを解析した結果、チック症及びトゥレット症において、生活困難指標、重症度指標に関する有用な項目を特定し、妥当性及び信頼性が確認された。さらに、解析結果及び臨床的知見をもとに、各障害群における支援マニュアルを作成した。
 本研究で作成した質問紙及びマニュアルを活用することで、顕在化しにくい発達障害であるトゥレット症、吃音症、場面緘黙症の方の生活困難度及び重症度が明確になり、より適切な支援につながることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2021-09-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-09-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202018006B
報告書区分
総合
研究課題
吃音、トゥレット、場面緘黙の実態把握と支援のための調査研究
課題番号
19GC1001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
中村 和彦(弘前大学大学院医学研究科 神経精神医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 金生 由紀子(国立大学法人東京大学大学院医学系研究科 こころの発達医学分野)
  • 菊池 良和(九州大学病院 耳鼻咽喉科)
  • 原 由紀(北里大学 医療衛生学部)
  • 斉藤 まなぶ(弘前大学大学院医学研究科 神経精神医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究においては、幼児期から成人期まで、吃音、トゥレット、場面緘黙をひとつの発達障害群ととらえ、各年代の実態を把握し、実態に即した重症度指標及び生活困難度指標を明確化することを第一の目的とした。第二の目的としては、重症度及び生活困難度を特定する有用な質問項目を選定すること、その妥当性及び信頼性を検証することである。さらに、各障害群が適切な支援につながるよう支援マニュアルを作成することを目的とした。
研究方法
(1) 吃音症の実態把握と支援のための調査研究
令和2年2月より外来等において幼児期 22名、学童期 74名、思春期 101名、青年期 73名の計270名に各種ツールによる調査、解析を行う。
(2)トゥレット症の実態把握と支援のための調査研究
日本トゥレット協会会員、東京大学医学部附属病院に通院中の患者、瀬川記念小児神経学クリニック、北新宿ガーデンクリニック、神奈川県立こども医療センター児童思春期精神科に通院中の患者に各種ツールの質問紙を送付解析を行う。
(3) 場面緘黙症の実態把握と支援のための調査研究
当事者団体である言の葉の会、研究協力者に相談にきた方を対象とし、質問紙調査を行い解析を行う。
(4) 吃音、トゥレット、場面緘黙の早期発見尺度の検証及び併存症の調査研究
調査対象は、弘前市における乳幼児健診(1歳6ヶ月児健診(27名)、3歳児健診(1587名)、5歳児健診(1088名)を対象として各種ツールを用いて解析を行う。
結果と考察
(1)吃音症:180名分のデータを収集した。データ解析の結果、吃音者は特定の場面で困り感が増加することが分かった。困難度を検出する問診票をライフステージごとに作成し(幼児7項目、学童期5項目、青年期以降4項目)、信頼性及び妥当性を検証した。また、支援機関で対応する支援マニュアルを作成した。また啓発用プリントを作成した。
(2)トゥレット症: トゥレット症に特異的なQOL尺度であるGTS-QOLの妥当性及び信頼性を検証すると共に、併発症状のうち外向的問題がQOLに大きい影響を及ぼすことを明らかにした。年齢に限らずに半数以上が臨床域の行動上の問題を有しており、思春期以降で性差が認められることを示した。幼児期、学童期(6~12歳)、青年期(13~18歳)、成人期という年齢別に有効な質問項目を選定して、支援マニュアルを作成した。
(3)場面緘黙: 症状が幼児期に限らないこと、家庭内や学校・職場以外の社会的状況においても困難度が高いことを明らかにした。さらに、メモパッドや身振り、ICT機器の活用など、幅広い支援ニーズを明らかにし、これらの成果を踏まえて支援機関で対応するための支援マニュアルを作成した。今後支援体制を整備していく上で非常に有用な知見を得られたと言える。
(4)乳幼児調査:1歳半児調査より約1割に言語の遅れが見られ、約2割に日常生活の困難感があることを明らかにした。また、吃音やチックは月齢19ヶ月でも出現していた。3歳児調査より5%の児は顕著に語彙が少ないことが明らかになったが、語彙の少なさよりも対人コミュニケーション力が日常生活の困難さに影響を与えることがわかった。コミュニケーションに関わる14項目の新尺度を作成した(感度82.8%、特異度96.8%)。5歳においてCLASPを用いた推定有病率は、吃音で保護者評定では0.7%、教師評定では1.2%で、チックは保護者評定が5.4%、教師評定が6.8%であった。いずれもASDやADHD、DCDは4~5割程度併存していた。吃音症、チック症ともに社会適応に影響があり、発達面・心理面から適切な支援が必要であることが示唆された。
結論
吃音症、チック症、トゥレット症、場面緘黙症の実態把握調査を行った。乳幼児期の調査から、顕在化しにくい発達障害すなわち吃音症、チック症、トゥレット症、場面緘黙症のアセスメントに関して、既存のスクリーニングツールでは早期発見の難しさが示唆された一方で、5歳児時点ではCLASPによる早期スクリーニングが可能であることが明らかになった。また、各年代により症状及び生活困難度の程度が異なることが明らかになった。これらのことから、障害の症状だけでなく、年齢や性別、社会的状況などを考慮した治療あるいは支援の必要性が示唆された。
 また、得られたデータを解析した結果、チック症及びトゥレット症において、生活困難指標、重症度指標に関する有用な項目を特定し、妥当性及び信頼性が確認された。さらに、解析結果及び臨床的知見をもとに、各障害群における支援マニュアルを作成した。本研究で作成した質問紙及びマニュアルを活用することで、顕在化しにくい発達障害であるトゥレット症、吃音症、場面緘黙症の方の生活困難度及び重症度が明確になり、より適切な支援につながることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2021-09-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-09-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202018006C

収支報告書

文献番号
202018006Z