文献情報
文献番号
202017004A
報告書区分
総括
研究課題名
独居認知症高齢者等が安全・安心な暮らしを送れる環境づくりのための研究
課題番号
19GB1001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
粟田 主一(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) 自立促進と精神保健研究チーム)
研究分担者(所属機関)
- 堀田 聰子(慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科)
- 石崎 達郎(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
- 稲垣 宏樹(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
- 岡村 毅(東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム)
- 角田 光隆(神奈川大学 法学部)
- 川越 雅弘(公立大学法人埼玉県立大学 大学院保健医療福祉学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
21,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、1.文献調査、2.既存統計資料等を活用した実態調査、3.疫学調査、4.事例調査、5.地域生活支援等の取組に関する調査、6.アクション・リサーチを行うことによって,独居認知症高齢者等が安全・安心な暮らしを送れる環境づくりに資するエビデンスを蓄積し、これに基づいて、「独居認知症高齢者等が安全・安心な暮らしを送れる環境づくりための自治体向け・住民向けガイドライン」を作成することにある。
研究方法
1.文献調査では、独居認知症高齢者等のエンドオブライフケアの実態に関する調査を行った。2.既存統計資料等を活用した実態調査では、介護保険データを用いて独居認知症高齢者の在宅継続率・重度化率・施設等への移行先を分析した。3.疫学調査では、東京都板橋区及び足立区の地域在住高齢者を対象とするコホート調査のデータを用いて、独居認知機能低下高齢者の生活実態を分析した。4.事例調査では、「地域で認知症とともによりよく生きる」とは何かを探索することを目的に、1)地域包括支援センターを要とする認知症の人とともに創るケアと地域づくりに向けた探索、2)認知症のある人が日々の記録を書くことの意義に関する探索的研究を行った。5.地域生活の取組に関する調査では、1)分譲マンション等に関与する管理組合及び管理会社等の取組、2)生活困窮者居住支援・生活支援の取組、3)暮らしの保健室の取組について記述的研究を行った。6.アクション・リサーチでは、東京都板橋区に設置した地域拠点の継続的な地域生活支援の実践を通して、新型コロナウイルス感染症流行下における独居認知症高齢者等の生活実態と地域拠点の実践を記述した。
結果と考察
以上の研究から以下のことが明らかにされた。1)独居認知症高齢者の多くは最期まで自宅で過ごすことを希望している。独居認知症高齢者のニーズの多様性に対応するには、多職種の連携のみならず社会や地域全体で支援する必要がある。2)認知症高齢者は非認知症高齢者よりも在宅継続率が低く、独居の認知症高齢者は非独居の認知症高齢者よりも在宅継続率が低い。3)独居の認知機能低下高齢者は、非独居の認知機能低下高齢者よりも、社会的孤立、不良な精神的健康、経済的困窮の出現頻度が高い。4)認知症のある人のQOLを改善する要因として人間関係、社会関与、機能的能力があげられているが、「社会とのかかわり」は多様であり概念整理が必要である。5)専門職と認知症の本人との「出会い直し」や認知症の本人が講師役を務める認知症サポーター養成事業は、専門職の先入観の解消や認知症に対する肯定的意識の醸成に役立つ可能性がある。6)マンションでは、生活課題をもつ独居高齢者に対応できるように、関係者が効率よく連携できる仕組みづくりが必要である。7)「日常生活支援住居施設」は、生活困窮状態にある独居認知症高齢者への居住支援・生活支援を可能とする新たな制度であるが、生活保護受給者に対象が限定されるという問題が残されている。8) ①認知症になる前から関係をつくることができる居場所があり、②日常生活の変化に気づき、③困り事の相談に応じ、一歩踏み込んだ調整を行うことができ、④健康不安を支えながら、暮らし全般の支えの「組み立て」「予測してつなげる・つながる」が実践できる「暮らしの保健室」のような地域拠点が全国に必要である。9)地域拠点は、感染症流行下においても、認知機能低下高齢者の感染及び社会的孤立対策に関する重要な社会資源となり得る。
結論
以上のように、わが国の独居認知症高齢者の生活実態および独居認知症高齢者を支える地域生活支援の実態が明らかにされてきている。さらに、本年度はガイドライン作成に向けたCQリストの作成と体系的文献レビュー及びCQ回答文の作成にも着手している。これらを集約して、次年度はガイドラインを作成する。
公開日・更新日
公開日
2022-02-24
更新日
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