外出が困難な認知症高齢者へのAIを用いた介入手法の開発と、遠隔AI操作によるコミュニティづくりの研究

文献情報

文献番号
202017002A
報告書区分
総括
研究課題名
外出が困難な認知症高齢者へのAIを用いた介入手法の開発と、遠隔AI操作によるコミュニティづくりの研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H30-認知症-一般-003
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
澤見 一枝(奈良県立医科大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 川口 昌彦(奈良県立医科大学 麻酔科学教室)
  • 木村 満夫(公立大学法人 奈良県立医科大学 医学部 看護学科)
  • 水主 千鶴子(修文大学看護学部)
  • 森崎 直子(姫路大学 看護学部)
  • 服部 園美(和歌山県立医科大学保健看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
1,106,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
認知症高齢者が、遠隔地コミュニケーション機器を用いた外出疑似体験や、遠隔中継での交流体験を行うことによって、現実見当識や認知・心理機能・QOLの向上を促進すること。また、認知機能やADLが低下し外出できない高齢者が、在宅にいながらロボットとの対話・脳トレーニングやダンスによって機能維持、向上ができること。さらに、外出困難な高齢者たちが、ロボットや遠隔中継によって仲間づくりができ、コミュニティづくりを促進すること。これらの介入の円滑な展開のために、認知症予防サポーターを養成し、サポーターによる介入の効果を検証すること。
研究方法
対象:2018・19年からの継続登録者、2020年に新規登録した高齢者およびサポーター
介入:1.認知症予防サポーターセミナー:高齢者の居宅を訪問して介入するためのサポーターの養成では、1回3時間(3コマ)4回コース(計12コマ)のセミナーを開催し、修了者フォローアップ研修ではスキルと活動経過を確認する。
2.外出困難な高齢者、認知症高齢者宅にロボットを設置する。高齢者はロボットに毎日話かけ、ロボットは人工知能で内容を判断し会話を進める。座位でダンスができる高齢者は毎日ロボットとダンスを実施する。遠隔コミュニケーションでは、研究者がロボットにコールし高齢者がロボットの手を挙げると、遠隔対話がスタートする。研究者がパソコン画面に映る高齢者に話しかけると、高齢者宅のロボットから声が出る。高齢者にはロボットとの会話という形で、研究者との会話が進行する。2020年2月以降は訪問活動を中止し、遠隔コミュニケーションだけで介入と調査を実施している。
3.高齢者が居宅で機能維持を図れるように、居宅のテレビに映せるDVD動画を配布:認知トレーニング課題と座位でのダンスを組み合わせた「脳トレダンスDVD」を配布し(上肢をある程度挙上できる;MMT3程度、少し動ける高齢者が対象)、日々の活動の補助ツールとしての活用状況を確認する。
結果と考察
認知症予防サポーター養成セミナー:COVID-19予防対策のために開始が遅延したが、2020年度は8月から開始し、1回3コマ×4回で12コマの講座を修了した。高齢者の居宅訪問は中止し、サポーターは遠隔コミュニケーションのサポートのみを実施している。対象の高齢者はロボットとの会話と回想法、遠隔コミュニケーションによって有意な認知テスト、心理尺度の向上があった(p < 0.05)。
ロボットによる認知トレーニング:外出困難な高齢者、認知症高齢者宅にロボットを設置し、ロボットとの会話、回想法、遠隔コミュニケーションによって、認知・心理尺度の有意な向上があった。
居宅のテレビに映せるDVD動画の配布:認知トレーニング課題と座位でのダンスを組み合わせた「遠隔画面で一緒に踊りましょう」を配布、ステイホーム中の活動維持に用い、継続性を確認できた。
結論
認知機能や身体機能の低下のために外出困難な高齢者にとって、ロボットを介した遠隔コミュニケーションは認知的にも心理的にも有効な手段であった。これはコロナ渦においても支障なく、継続して実施可能な方法である。しかしコロナ蔓延以前には、居宅への訪問を契機として、歩行可能な高齢者が外出困難な高齢者宅に集まるといったコミュニティが形成されており、アフターコロナにおいては、このような養成したサポーターによる訪問活動の成果の拡大が期待できる。

公開日・更新日

公開日
2021-10-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-10-08
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202017002B
報告書区分
総合
研究課題名
外出が困難な認知症高齢者へのAIを用いた介入手法の開発と、遠隔AI操作によるコミュニティづくりの研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H30-認知症-一般-003
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
澤見 一枝(奈良県立医科大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 川口 昌彦(奈良県立医科大学 麻酔科学教室)
  • 木村 満夫(公立大学法人 奈良県立医科大学 医学部 看護学科)
  • 水主 千鶴子(修文大学看護学部)
  • 森崎 直子(姫路大学 看護学部)
  • 服部 園美(和歌山県立医科大学保健看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
認知機能や歩行機能が低下して外出困難な高齢者に対し、遠隔2地点を中継して交流する方法の効果を検証する。さらに居宅訪問によって認知症進行予防を行うための「認知症予防サポーターセミナー」を月1回・全12回を1コースとして毎年開催し、修了者は研究者と共に外出困難な高齢者の居宅を訪問して支援する。また、高齢者の居宅にロボットを設置して対話する。さらにロボットを介した遠隔コミュニケーションによる認知症進行予防策を実施し効果を検証する。
研究方法
1.高齢者の「思い出の場所」にサポーターが出向き、2地点を映像でつないで、あたかもその場を散策しているように現地のサポーターと回想を語り合う。この介入を継続的に実施し、これによる認知得点・心理尺度の変化を明らかにした。
2.認知症予防サポーターセミナー受講者の活動:12回の受講を修了したサポーターは、研究者とともに外出困難な高齢者の居宅を訪問して介入および認知・心理スケールの調査を行った。さらに、地域住民とのワークショップにおけるファシリテーター, また自主サークルの開催などの活動を展開していたが、2020年度は新型コロナ対策のため、対人接触を中止し、遠隔コミュニケーションのサポートのみを実施している
3.居宅に設置したロボットとの対話と研究者との遠隔コミュニケーション:高齢者は居宅に設置したロボットに毎日話しかけ、ロボットは人工知能で内容を判断し会話を進める。座位でダンスができる高齢者は毎日ロボットとダンスを実施する。遠隔コミュニケーションでは、研究者がロボットにコールし高齢者がロボットの手を挙げると、遠隔対話がスタートする。研究者がパソコン画面に映る高齢者に話しかけると、高齢者宅のロボットから声が出る。高齢者にはロボットとの会話という形で、研究者との会話が進行する。2020年度は、新型コロナ予防対策のため、高齢者への介入は、ロボットとの会話と遠隔コミュニケーションだけが継続的に実施できている。
結果と考察
1.「思い出の場所」と高齢者をつなぐ遠隔コミュニケーションでは、継続的な「思い出の場所の回想」によって、認知・心理得点の有意な向上があった。また、思い出を介して高齢者同士の交流が促進された。
2.認知症予防サポーターの活動:高齢者の居宅訪問では、認知症であっても安心していられる居宅で、本人のペースで回想を中心とした介入を行い、認知・心理得点の向上があった。1対1で関係性が築きやすく、歩行可能な高齢者が外出できない高齢者の居宅に集まり、サポーターの訪問を受けるというコミュニティも形成された。自力で外出困難な高齢者宅に集まることで、社会的サポート力の向上が期待できた。サポーターと高齢者へのインタビューでは、サポーターと高齢者の1対1の「特別な関係性」を築くことで信頼関係の深まりを実感し、双方の充実感や満足感が高まっており、アフターコロナにおいては、このような養成したサポーターによる訪問活動の成果の拡大が期待できる。
3.居宅に設置したロボットとの対話と研究者との遠隔コミュニケーションの結果:毎日のロボットとの対話によって会話量が倍増し、「常に話し相手がいる」という心理的な好影響も見られた。この結果、認知・心理得点の有意な向上があり、ロボットとのダンスによる運動効果もあった。外出困難な高齢者は、他者と接する機会が極端に少なく、このために認知・心理・身体的な機能低下が加速するが、たとえ相手がロボットであっても、話し相手がいて回想を聴いてもらい、反応を返してもらうことによる会話の満足感が生じていた。この遠隔による認知テストや心理尺度調査の実施は、コロナ渦で対面できなくても支障なく実施できることが特筆すべき利点である。遠隔コミュニケーションは、遠隔対話アプリ (Robot Phone) を使用して遠隔操作を行い、対象の様子はパソコンに写った映像によって確認できる。これによって、対象の様子を見ながらコミュニケーションおよび評価を進めることができる。さらに、訪問のための移動時間が短縮されるため、頻回なコミュニケーションが容易となり、アフターコロナの社会においても利便性が高いと考えられる。
結論
サポーターの活動では、特に訪問活動の成果が大きかったことから、コロナの終息後には訪問活動を再開する計画である。また、ロボットの居宅設置や遠隔コミュニケーションでは、ロボットと毎日対話することによって相手の話の内容を理解しようとする、話を合わせる、楽しめるといった認知的・心理的な活性化が促されていたため、ロボット設置を拡大する計画である。この方法の認知テストや心理尺度調査の実施は、コロナ渦で対面できなくても支障なく実施できることが利点である。今後は、この機能の利便性をさらに向上させたい。

公開日・更新日

公開日
2021-10-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-10-08
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202017002C

収支報告書

文献番号
202017002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,283,000円
(2)補助金確定額
1,283,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 300,000円
人件費・謝金 606,000円
旅費 200,000円
その他 0円
間接経費 177,000円
合計 1,283,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2021-10-08
更新日
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