社会保障と労働市場政策:格差社会のセイフティネットの構造

文献情報

文献番号
200801047A
報告書区分
総括
研究課題名
社会保障と労働市場政策:格差社会のセイフティネットの構造
課題番号
H20-政策・若手-017
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
神林 龍(一橋大学経済研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 永瀬 伸子(お茶の水大学人間文化創成科学研究科)
  • 大森 義明(横浜国立大学経済学部)
  • 駒村 康平(慶應義塾大学経済学部)
  • 玄田 有史(東京大学社会科学研究所)
  • 野口 晴子(国立社会保障人口問題研究所)
  • 川口 大司(一橋大学経済学研究科)
  • 宮里 尚三(日本大学経済学部)
  • 山田 篤裕(慶應義塾大学経済学部)
  • 両角 良子(富山大学経済学部)
  • 妹尾 渉(平成国際大学法学部)
  • 酒井 正(国立社会保障人口問題研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
2,707,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の目的は、世帯に対する社会保障諸制度と、労働市場への介入を通じた最低限度の保障とを同時に考察することによって、社会全体でみたときの適切な社会保障制度のあり方を提示することである。
研究方法
 研究は3ヵ年で行われ、毎年10回程度の定例研究会と、毎年1回程度行われるコンファレンスを実施した。各研究分担者は自ら課題を選択し個別で研究を遂行する一方、定例研究会およびコンファレンスへ出席し研究成果を報告、最終的に学術論文をまとめることが要請される。
結果と考察
本年度に開催された定例研究会、コンファレンス、各分担者の研究結果を総合すると次のような知見が得られた。
 まず、日本における労働市場のパフォーマンスが世帯所得の分布や家族形態の選択に与える影響が、既存研究を通じて検討された。
 中心となったのは、いわゆるワーキングプアの存在を統計的に確認することで、年代的地域的に偏在していることがわかった。本研究を通じてまず強調された整合的解釈は、従来の日本の労働市場の機能のなかで労働条件が悪化したとする見方である。 ただし、日本の労働市場の制度的制約も看過できない。同時に、このような賃金格差の縮小が必ずしも貧困の改称につながらないことも指摘されており、格差をさまざまな角度から多角的に評価する重要性も浮き彫りにされている。
 貧困形成に関して本研究で指摘された重要な論点のひとつは、家族形成の問題である。さらに、本研究では、従来労働市場の機能とは切り離されて考えられてきた諸制度(生活保護、医療保険、介護保険、企業年金、労災保険、障害者扶助)が一定の役割を果たしていることが示唆された。加えて、教育課程という労働市場とは離れた場面での準備を社会保障的側面から問い直すことの重要性も指摘された。
 以上のように、労働市場と社会保障制度との関係のもとでセイフティネットを再解釈する場合、いくつかの重要な論点について、データの整理や従来の見解の検証が必要なことが明らかになった。
結論
 1990年代以降、急速に変化したといわれる労働市場の様態が、実は社会保障制度に対する適当な反応として理解できる側面があることが示唆される。もちろん、このことは現在の労働市場と社会保障制度との関連が効率的な関係を保っていることを意味するわけではない。様々な点により気を配り、現状を判断しつつ政策提言に結びつけることが必要であろう。

公開日・更新日

公開日
2009-04-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-10-13
更新日
-