所得・資産・消費と社会保険料・税の関係に着目した社会保障の給付と負担の在り方に関する研究

文献情報

文献番号
200801021A
報告書区分
総括
研究課題名
所得・資産・消費と社会保険料・税の関係に着目した社会保障の給付と負担の在り方に関する研究
課題番号
H19-政策・一般-021
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
金子 能宏(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障応用分析研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 岩本 康志(東京大学大学院 経済学研究科)
  • 小塩 隆士(神戸大学大学院 経済学研究科)
  • 田近 栄治(一橋大学大学院 経済学研究科)
  • ホリオカ、チャールズ・ユウジ(大阪大学 社会経済研究所)
  • 山田 篤裕(慶應義塾大学 経済学部)
  • 八塩 裕之(京都産業大学 経済学部)
  • 稲垣誠一((財)年金シニアプラン総合研究機構)
  • 西山 裕(国立社会保障・人口問題研究所 政策研究調整官)
  • 東 修司(国立社会保障・人口問題研究所 企画部)
  • 米山 正敏(国立社会保障・人口問題研究所 企画部)
  • 野口 晴子(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障基礎理論研究部)
  • 山本 克也(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障基礎理論研究部)
  • 小島 克久(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障応用分析研究部)
  • 尾澤 恵(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障応用分析研究部)
  • 酒井 正(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障基礎理論研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
9,082,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
所得・資産格差が問題となっている今日、社会保障の給付と負担の在り方を、所得格差の諸要因と所得からの貯蓄を通じた資産格差を含めて、検討することが求められている。その際、社会保障の財源には公費負担が、税財源にも控除や累進税率など再分配機能があるので、社会保険料と税を関係づけて検討する必要がある。また、社会保障負担を所得・資産・消費のいずれに求めるかという選択は、ライフサイクルにおける負担と給付の関係も考慮する必要がある。従って、本研究では、ライフサイクルの変化に対応する持続可能な社会保障制度構築に資するために、所得・消費・資産と社会保険料・税の関係に着目した社会保障の給付と負担の在り方について、実証分析と制度分析及び国際比較を合わせて総合的に研究する。
研究方法
所得・消費・資産の実態把握のために、「国民生活基礎調査」の目的外使用許可を得て、所得格差や所得分布の変化に関する実証分析を行った。ライフサイクルの観点から、引退過程と健康・受診状況等との関係についてアンケート調査を実施し、これに基づく実証分析を行った。社会保険料と公費負担、控除制度と給付との関係については、法制度とも関係が深いため、制度分析を行った。国際比較研究として、OECDの所得格差比較研究に協力し、税財源による社会保障制度を持つカナダとの研究協力と成長著しく所得変動の大きい東アジア諸国との比較研究のうち韓国との研究協力を合わせたカナダ・韓国・日本の社会保障比較研究を行った。
結果と考察
わが国の所得格差は、近年は若干の縮小傾向にあるが、高齢化が所得格差を拡大させる要素になっている。マイクロシミュレーション分析により、税制による再分配を図るためには、住民税課税ベース拡大と還付型税額控除の導入が有効であることが示された。国際比較によれば、日本では、子供のいる世帯の相対貧困率がOECD平均の貧困率よりも高く、この世帯への給付と負担の在り方が課題であることが示された。高齢者間の再分配は、カナダのクローバック制度を参考に年金の給付と負担の見直しでも可能である。
結論
日本の所得再分配政策は、大半が若年層から高齢層へという所得移転に基づくものであるため、少子高齢化の下では財政的基盤が脆弱になるだけでなく、若年者や子育て世帯などへの効果的な救済も難しくなる。社会保障と税による再分配は、同一世代内の再分配を図ることと給付と負担と税制の連携に着目して進める必要がある。

公開日・更新日

公開日
2009-08-25
更新日
-