Health Impact Assessmentに関する包括的研究

文献情報

文献番号
200801006A
報告書区分
総括
研究課題名
Health Impact Assessmentに関する包括的研究
課題番号
H18-政策・若手-005
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
藤野 善久(産業医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 松田晋哉(産業医科大学 医学部 )
  • 森晃爾(産業医科大学 産業医実務研修センター)
  • 梶木繁之(産業医科大学 産業医実務研修センター)
  • 二渡了(北九州市立大学 国際環境工学部)
  • 乙間末廣(北九州市立大学 国際環境工学部)
  • 松本亨(北九州市立大学 国際環境工学部)
  • 加藤尊秋(北九州市立大学 国際環境工学部)
  • 楠田哲也(北九州市立大学 国際環境工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
3,643,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本年度は、これまでの研究をふまえ、下記について研究調査を実施した。
1) HIAが実施される法律的、制度的、社会的背景の分析
2) 環境分野における影響評価手法とHIAとの関連
3) HIAの企業活動への応用
研究方法
1)については、海外における事例を収集するとともに、各地域において、HIAがどのような法律的、制度的、もしくは社会的な背景のもとで実施されているのかについて情報の収集と分析を行った。

2)についても過去の研究を継続し、学会、文献検索、専門家インタビュー等を行った。

3)については、企業におけるパイロットスタディを実施するとともに、企業施策に対応したHIAガイドラインの開発を行った。
結果と考察
1) HIAが実施される法律的、制度的、社会的背景の分析
HIAが実施されている法律的、制度的、および社会的背景に沿った、下記のように分類した。
① 法律・制度による要求
② 合意形成・住民参加・民主主義の実現
③ 政策決定者の諮問・意思決定支援
④ 意見表示・ロビー活動
⑤ Healthy Public Policyのツールとして

2) HIAの企業活動への応用
企業施策に対してHIAを実施するための理論的枠組みとして、労働安全衛生マネージメントシステム(OSHMS)におけるHIAの取り扱いについて検討を行った。また、パイロットスタディでは、某企業における安全衛生に関する新方針の提案に対してHIAを実施した。新方針による健康上の便益、不利益を広範囲に把握し、新方針実施のための推奨意見を作成した。産業保健や安全衛生に関する方針の企画に際して、HIAは有効な手法となりうることを示した。
また、これらのパイロットスタディを通じて得られた実証結果、経験をフィードバックして、企業施策用のHIAスクリーニングツールを開発した。
結論
国内でHIAが普及するためには、今後、法制度、社会制度からの議論が必要である。

環境分野における既存のEIAやSEAとHIAの統合は、現時点では非常に困難である。一方で、既に欧州を中心とした海外では、EIAやSEAにおいて健康への配慮が要求されており、国内においても検討を始める必要がある。

企業活動におけるHIAは、CSR、安全配慮、環境配慮などの点からも親和性が高く、国内でHIAを早期に導入できる領域と成り得ることを示した。

公開日・更新日

公開日
2009-04-02
更新日
-

文献情報

文献番号
200801006B
報告書区分
総合
研究課題名
Health Impact Assessmentに関する包括的研究
課題番号
H18-政策・若手-005
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
藤野 善久(産業医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 松田晋哉(産業医科大学 医学部)
  • 森晃爾(産業医科大学 産業医実務研修センター)
  • 梶木繁之(産業医科大学 産業医実務研修センター)
  • 二渡了(北九州市立大学 国際環境工学部)
  • 乙間末廣(北九州市立大学 国際環境工学部)
  • 松本亨(北九州市立大学 国際環境工学部)
  • 加藤尊秋(北九州市立大学 国際環境工学部)
  • 楠田哲也(北九州市立大学 国際環境工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、諸外国におけるHIAの取り組みについて検討し、国内でHIA導入を進めるための包括的研究を実施した。
研究方法
本研究では、大きく3つのテーマに沿って研究を実施した。
1)HIAの情報収集、諸外国における制度背景の調査、手法の調査
学会、文献等による情報収集を行った。

2)環境分野におけるHIA導入の検討
EIA/SEAとHIAの関連を調べ、また制度的根拠について調査した。

3)HIAを企業活動に応用するための調査研究
国内で即時にHIAを導入することが可能な領域として、企業活動および産業保健分野に着目し、企業施策に対してパイロットスタディを実施した。
結果と考察
1)HIAの情報収集、諸外国における制度背景の調査、手法の調査
海外におけるHIAの事例および法制度について網羅的に整理した。その結果を踏まえて、HIAを5つの類型に分類した
① 法律・制度による要求
② 合意形成・住民参加・民主主義
③ 政策決定者が意思決定に必要な情報として実施するHIA
④ 意見表示(利害関係者らによる)・ロビー活動
⑤ Healthy Public Policyの活動として


2)環境分野におけるHIA導入の検討
環境分野において、EIAやSEAに加えて新たにHIAが普及してきた背景には、EUアムステルダム条約やSEAキエフ議定書において、健康への配慮が含まれたことが大きく影響している

3)HIAを企業活動に応用するための調査研究
企業施策は、社会的健康規定要因を介して、従業員や家族、周辺住民などに健康影響を与えていることが事例の検証によって明かとなった。また、企業および企業施策に対してHIAを実施する正当性、必要性について、CSR、環境配慮、労働安全衛生マネージメントシステム、コンプライアンス、および赤道原則といった、様々な視点から体系的に整理した。以上の検証を踏まえて、企業版HIAガイドラインの開発を行った。
結論
HIAについての概念、方法論、背景、制度については網羅的に整理できた。また、国内においてHIAの啓蒙・普及には大きく貢献できた。
また国内におけるEIA/SEAとの統合については、SEAが社会的に定着しておらず、現時点では極めて困難であると考えられた。
HIAの新しい分野として、企業活動におけるHIAの応用という領域を開発した。企業活動におけるHIAは、CSR、安全配慮、環境配慮などの点からも親和性が高く、国内でHIAを早期に導入できる領域と成り得ることを示した。

公開日・更新日

公開日
2009-04-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200801006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
HIAの概念、方法論、背景、制度などについて海外事例を中心に網羅的に整理した。国内におけるHIAの啓蒙・普及に大きく貢献した。また、海外専門家とのネットワークを構築した。
さらにEIA/SEAとHIAの統合について、シンポジウムなどを通して、環境分野の専門家らとの議論の契機となった。
さらに、HIAの新しい分野として、企業活動におけるHIAの応用という領域を開発したことは、本研究の成果として強調したい。企業活動におけるHIAは、国内でHIAを早期に導入できる領域となり得ることも示した。
臨床的観点からの成果
本研究には該当しない
ガイドライン等の開発
藤野善久、永田智久、黒木直美、森晃爾 「HIAガイドライン(企業活動への応用):スクリーニング編」(2009)
その他行政的観点からの成果
現時点では該当なし
その他のインパクト
日本公衆衛生学会自由集会
日本HIA研究会の設立
国際シンポジウム:健康影響評価とエコとピア指標の構築(名古屋大学エコトピア科学研究所、2009年2月14日)
国際シンポジウム:社会疫学のHIAへの応用と社会科学との融合(日本福祉大学、2009年2月15日)
平成21年の日本学術会議(基礎医学・健康・生活科学委員会パブリックヘルス分科会)・日本公衆衛生学会共催・市民公開シンポジウム(予定)

発表件数

原著論文(和文)
5件
うち2編は投稿中
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
ガイドライン(書籍)
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
9件
学会発表(国際学会等)
2件
国際HIA学会に日本から初の演題発表となった。
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
3件
ガイドラインの開発、トレーニングコース開催、コンサルタントの実施など
その他成果(普及・啓発活動)
7件
研究会設立、国際シンポジウム2件、市民公開シンポジウム1件、トレーニングコース設立、専門誌での特集など

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
藤野善久、松田晋哉
Health Impact Assessmentの基本的概念および日本での今後の取り組みに関する考察
日本公衆衛生雑誌 , 54 , 73-80  (2007)
原著論文2
藤野善久、松田晋哉
「新しい自律的な労働時間制度」に関するHealth Impact Assessment
産業衛生学雑誌 , 49 , 45-53  (2007)
原著論文3
藤野善久
自治体中心の新たな健康政策 - Health Impact Assessmentの導入.健康影響評価の概要とその応用の可能性.
公衆衛生  (2009)
原著論文4
藤野善久、二渡了
環境影響評価(EIA),戦略的環境影響評価(SEA)における健康関連評価項目に関する事例検討.
投稿中  (2009)
原著論文5
藤野善久、永田智久、黒木直美、土肥誠太郎、他
某グループ企業における安全衛生活動の新方針案に関するHealth Impact Assessment
投稿中  (2009)

公開日・更新日

公開日
2014-05-21
更新日
-