難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究

文献情報

文献番号
202011055A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究
課題番号
20FC1023
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
田中 篤(帝京大学 医学部内科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 鹿毛 政義(久留米大学 先端癌治療研究センター・分子標的部門)
  • 仁尾 正記(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 江川 裕人(東京女子医科大学 医学部)
  • 井戸 章雄(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 持田 智(埼玉医科大学 医学部消化器内科・肝臓内科)
  • 大平 弘正(福島県立医科大学 医学部)
  • 小森 敦正(独立行政法人国立病院機構長崎医療センター臨床研究センター)
  • 原田 憲一(金沢大学 医薬保健研究域医学系)
  • 伊佐山 浩通(順天堂大学 大学院医学研究科)
  • 長谷川 潔(東京大学 医学部附属病院)
  • 大藤 さとこ(大阪市立大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
13,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の対象疾患は、肝・胆道の指定難病である自己免疫性肝炎(AIH)、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、特発性門脈圧亢進症(IPH)、バッド・キアリ症候群(BCS)の5疾患、および門脈血行異常症に分類される肝外門脈閉塞症(EHO)とフォンタン術後肝合併症(FALD)、さらに肝内結石症、急性肝不全を加えた9疾患である。
本研究では令和元年までにFALD以外の各疾患につき全国疫学調査を行い、国内の実態や患者数を明らかにして、診断基準および重症度分類、診療ガイドラインを作成・改訂した。令和2年度も従来同様、(1)AIH・PBC・PSC・門脈血行異常症、および肝内結石症・急性肝不全(劇症肝炎)についての全国実態調査・定点モニタリングの継続、(2)従来十分に明らかになってこなかった非典型例や移植例、小児発症例の検討、および(3)これらの研究結果を広く医師・一般に周知するためのホームページ作成・更新、および難病講演会への講師派遣、以上を研究の目的とした。
研究方法
これらはいずれも疫学調査であり、主たる施設で倫理審査を受け承認を得たのち、多施設共同研究によって多数の症例を登録して疾患レジストリを構築する。このレジストリに登録された臨床情報をそれぞれの研究目的に合わせて解析することにより、国内の患者動向を把握するとともに、臨床上の疑問に対する解答をエビデンスとして蓄積する。
結果と考察
・門脈血行異常症については定点モニタリングによる疾患レジストリへの更なる症例登録を進めている。今年度からは小児例を含めたより多くの症例登録を目指し、2015年の全国疫学調査において症例の届け出があった成人・小児診療施設をリストアップした。今後これらの施設へ症例登録を依頼する。また、門脈血行異常症はいずれも希少疾患であることから、国内における診療ネットワーク(専門医制度紹介システム)の構築が不可欠であり、国内各地域における専門医のリストアップを行った。
・PBCについては過去に行った全国実態調査により、既に国内9,919例という多数例の疾患レジストリが構築されている。今年度は次回実態調査をEDCへ移行するための準備作業を行っており、次年度に調査を行う。併せてこの疾患レジストリを活用し、さまざまな臨床上の課題について検討を開始すべく、各施設において倫理申請を行った。また、以前より肝移植例についての前向き登録を行っており、今後も継続する。
・PSCについてはAMED・難病プラットフォームと連携し、個人情報・臨床情報・生体試料を備えた疾患レジストリの構築を開始し、国内26施設において倫理手続き(中央倫理審査)が終了した。今後さらに多数の施設へ働きかけ症例登録を呼びかける。また二次性硬化性胆管炎、さらに免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連副作用(irAE)硬化性胆管炎についての全国調査を行うべく倫理申請を予定している。
・AIHについては従来横断調査として行ってきた全国調査を予後情報も含んだ疾患レジストリとすべくEDC構築を行っている。また特殊例であるIgG4関連自己免疫性肝炎、類縁疾患であるirAE肝障害に関する全国調査についての倫理審査も終了し、調査が進行している。さらに急性発症する自己免疫性肝炎は急性肝不全へと進展することがあり、未だに予後が不良であることから、岩手県、新潟県、愛媛県をモデル地域として早期の効率的な患者搬送ネットワークの構築を目指している。
・急性肝不全については毎年行ってきた全国実態調査を今年度も施行し、2019年に発症した急性肝不全227例とLOHF5例が登録された。
・小児期から成人へのシームレスな移行期医療を推進するため、各疾患レジストリ構築に当たり、関連研究班や関連学会と連携しつつ、十分な数の小児診療施設をも対象とし、小児発症例の実態も把握することを目指している。
・AIH、PBC、PSC非典型例(いわゆるAIH-PBC、AIH-PSCオーバーラップ)の実態を明らかにするため、今年度はまず倫理申請を行った。
・本研究班の研究成果を広く国民、及び患者・医療従事者へ周知するため、平成28年10月に本研究班のホームページを作成し、各疾患の現状、診断や治療などについてわかりやすく解説している。令和2年度はこれに加え新型コロナウイルス感染症、およびワクチン接種についての解説も掲載した。さらに患者会との協働により、令和2年11月、また令和3年2月にオンライン講演会を行い、各疾患についての最新の情報提供を行っている。
結論
以上の研究により、肝胆道領域の難病及び研究対象としている疾患の診療レベルの向上、患者の予後改善、及び国の難病施策に大きく貢献した。

公開日・更新日

公開日
2021-07-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
その他
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202011055Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
17,160,000円
(2)補助金確定額
17,160,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,917,327円
人件費・謝金 1,570,210円
旅費 0円
その他 8,779,054円
間接経費 3,960,000円
合計 17,226,591円

備考

備考
自己資金:66,591円

公開日・更新日

公開日
2021-05-27
更新日
2021-12-07