文献情報
文献番号
200801004A
報告書区分
総括
研究課題名
精神保健医療における診療報酬の在り方に関する研究
課題番号
H18-政策・一般-009
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
樋口 輝彦(国立精神・神経センター)
研究分担者(所属機関)
- 泉田信行(国立社会保障・人口問題研究所)
- 萱間真美(聖路加看護大学)
- 末安民生(慶應義塾大学)
- 佐藤忠彦(社会福祉法人桜ヶ丘社会事業協会)
- 野田寿恵(国立精神・神経センター精神保健研究所社会精神保健部)
- 伊藤弘人(国立精神・神経センター精神保健研究所社会精神保健部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
8,719,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は,「精神保健医療福祉の改革ビジョン」(平成16年9月)に盛り込まれた「長期入院患者の段階的・計画的な地域生活への移行」と「新規入院患者の早期退院」を具体化するために,「退院支援」「地域ケア」および「急性期医療」の質向上を促進する診療報酬の在り方を,医療経済学のアプローチを盛り込みながら検討することである.具体的には,研究1:精神科包括病棟 取得動向調査,研究2:地域連携・退院支援のためのクリニカルパスの開発・作成の実態に関する文献研究,および「退院準備プログラム」による退院支援を行った場合の人的コストの算出,研究3:精神科訪問看護における複数の専門職による同行訪問,退院前訪問,家族ケアの実施状況,研究4:看護師の頓用薬に関する意識,研究5:薬剤師の精神科急性期医療における薬学的管理の実施状況,および精神科急性期薬剤管理指導プロトコル作成,研究6:隔離・身体拘束モニタリング体制の整備とその実態調査,および精神科救急入院料病棟および急性期治療病棟の隔離室等の実態把握,研究7:隔離室使用時の人的投入量調査結果から在院日数適正化へのインセンティブのある支払い方式の開発である.
研究方法
医学・看護学・薬学・経済学の専門家がそれぞれの研究目的に添ってすすめた.
結果と考察
研究1:精神科救急入院料病棟の急激な増加,精神科急性期治療病棟,精神療養病棟の増加が認められた.研究2,3:長期入院患者の地域生活への移行と地域生活の継続のための診療報酬算定外の治療ケアの実施の現状を明らかにした.研究4,5,6:薬剤処方の最適化については,看護師の薬剤師とのコミュニケーションが多剤大量投与に抑制的に働く可能性を見出した.この結果と平行して薬剤師が精神科急性期医療に参画するためのプロトコルを提案した.行動制限の最適化に向けては,一覧性台帳を用いて算出できる隔離・身体拘束施行量の指標を開発し,この指標を用いてモニタリングが行える行動制限最適化データベースソフトを作成した.また隔離室等に関する建築的な基礎資料を得ることができた.研究7:新規入院患者の早期退院の努力を阻害するような経済的インセンティブをもつ診療報酬の要素を確認し,これを改訂するためには『メリハリ型』と言われる包括支払額を一律に引き下げ,入院初期について高く評価する支払体系が短縮化の経済的インセンティブをより強く与え得る可能性を示した.
結論
本研究により長期入院患者の地域生活への移行と地域生活の継続,および急性期医療の質向上と早期退院の促進を具体化するための知見を得ることができた.
公開日・更新日
公開日
2009-04-02
更新日
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