プリオン病のサーベイランスと感染予防に関する調査研究

文献情報

文献番号
202011029A
報告書区分
総括
研究課題名
プリオン病のサーベイランスと感染予防に関する調査研究
課題番号
20FC2001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
山田 正仁(金沢大学 医薬保健研究域医学系 脳老化・神経病態学(脳神経内科学))
研究分担者(所属機関)
  • 水澤 英洋(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター)
  • 高尾 昌樹(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 病院)
  • 齊藤 延人(東京大学 医学部附属病院)
  • 北本 哲之(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 阿江 竜介(自治医科大学 地域医療学センター)
  • 金谷 泰宏(東海大学 医学部)
  • 原田 雅史(徳島大学 大学院医歯薬学研究部)
  • 佐藤 克也(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 村山 繁雄(東京都健康長寿医療センター 老年病理学研究チーム)
  • 太組 一朗(聖マリアンナ医科大学 医学部)
  • 矢部 一郎(北海道大学 大学院医学研究院)
  • 青木 正志(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 小野寺 理(新潟大学 脳研究所)
  • 三條 伸夫(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 村井 弘之(国際医療福祉大学 医学部)
  • 塚本 忠(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 病院)
  • 田中 章景(横浜市立大学 大学院医学研究科)
  • 濵口 毅(金沢大学 医薬保健研究域医学系)
  • 道勇 学(愛知医科大学 医学部)
  • 望月 秀樹(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 阿部 康二(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 松下 拓也(九州大学 大学病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
59,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
稀少かつ致死性感染症であるプリオン病の発症・感染機序の解明・克服をめざし、①全例サーベイランスによる疫学的研究を通じて、わが国における発生状況や新たな医原性プリオン病の出現を監視し、②遺伝子・髄液検査の普及、画像診断の改良、患者・家族への心理カウンセリング等の支援を進め、③プリオン対応の滅菌法も含めた感染予防ガイドラインの改訂を進め、プリオン病患者などの外科手術を安全に施行できる指針を提示し、④手術後にプリオン病と判明した事例を調査して、二次感染対策をとるとともにリスク保有可能性者のフォローアップを行い、⑤プリオン病の臨床研究コンソーシアムJACOPと協力してプリオン病の自然歴を解明し、開発中の治療薬・予防薬の全国規模の治験研究を支援する。
研究方法
全国を10ブロックに分けて地区サーベイランス委員を配置し、脳神経外科、各種検査(遺伝子、髄液、画像、脳波、病理)とカウンセリングの専門委員を加えてサーベイランス委員会を組織し、各都道府県のプリオン病担当専門医と協力して全例調査をめざす。プリオン蛋白質遺伝子検索と病理検索、画像読影、髄液14-3-3蛋白・タウ蛋白の測定、RT-QUIC法などの診断支援を提供し、検査の感度・特異度、診断精度の向上を図る。インシデント委員会を組織し、疑い事例を評価し該当事例に対する対策とリスク保有可能性者のフォローを支援する。
結果と考察
サーベイランス委員会は、平成11年4月の発足より令和3年2月までに5856例を検討し3975例をプリオン病と認定し、本邦におけるプリオン病の実態を明らかにした。その内訳は、孤発性CJD 3030例(76%)、硬膜移植後CJD 92例(2%)、遺伝性CJD 676例(17%)、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病(GSS)156例(4%)、致死性家族性不眠症(FFI)4例であった。今年度プリオン蛋白遺伝子解析を行った304例中88例に変異を認め、V180I変異が63例で最多であった。
脳波のPSD(周期性同期性放電)はCJD全体60%、孤発性CJD(sCJD)70%、遺伝性CJD 24%、硬膜移植後CJD 61%で出現し、PSD非出現群に比べて出現群ではMRI異常高信号が大脳皮質と基底核の両方に出現しやすかった。これまでに蓄積された4153症例の髄液研究では、sCJDの髄液中のバイオマーカー(14-3-3蛋白WB/ELISA、総タウ蛋白、RT-QUIC法)の感度は79.3%/81.4%、80.1%、70.6%、特異度は81.2%/80.4%、86.4%、97.6%で、RT-QUIC法での擬陽性症例が25例あった。
平成29年度に運用を開始した自然歴調査とサーベイランス研究の一体化を本年度も推進し、委員会での討議をタブレット端末によるWeb会議で行うことができた。未回収例の解消に努め、着実な進捗が見られた。新規インシデント事例は2件であった。1件は貸出機器を介した事例であり、厚生労働省の協力を得て調査を行った。2018年末までの全18件のうち7事例で10年間のフォローアップ期間が終了し、二次感染事例は確認されていない。
当班で得られた最新情報は、学会や論文での発表だけでなく直ちにプリオン病のサーベイランスと感染対策に関する全国担当者会議あるいはホームページなどを通じて周知され、適切な診断法、治療・介護法、感染予防対策の普及に大きく貢献している。
結論
プリオン病サーベイランス事業の継続により、わが国におけるプリオン病の疫学的特徴を明らかにした。診断に必要な画像・脳波・遺伝子・髄液バイオマーカーの諸検査の重要性を明らかにし、インシデント事例の発生に対応し二次感染予防に努め、診療と感染予防の2つのガイドラインを刊行した。自然歴調査とサーベイランス調査の一体化とともに、調査データのデジタル化を推進した。

公開日・更新日

公開日
2021-07-01
更新日
2021-07-20

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
総括研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-07-01
更新日
2021-07-20

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202011029Z