加熱式たばこの健康影響評価のためバイオマーカーを用いた評価手法の開発

文献情報

文献番号
202009032A
報告書区分
総括
研究課題名
加熱式たばこの健康影響評価のためバイオマーカーを用いた評価手法の開発
課題番号
20FA1004
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
大森 久光(国立大学法人熊本大学 大学院生命科学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 井上 博雅(鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科)
  • 黒澤 一(東北大学 高等教育開発推進センター 学生生活支援部 保健管理室)
  • 緒方 裕光(女子栄養大学 疫学・生物統計学研究室)
  • 欅田 尚樹(産業医科大学 産業保健学部)
  • 稲葉 洋平(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
5,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、加熱式たばこを使用する家族における尿中ニコチン代謝物およびたばこ特異的ニトロソアミン代謝物(NNAL)の分析を基盤とし、分担者全員で新たにリクルートした対象者により、バイオマーカー特に曝露マーカーを用いた評価法の開発を行うとともに、加熱式たばこによる受動喫煙が人の健康に及ぼす影響について結論を得ることを目的とする。
研究方法
研究①:紙巻たばこ、加熱式たばこ、紙巻および加熱式たばこ使用者およびその家族を対象とした曝露の実態調査
研究②:飲食店従業員(アルバイトを含む)を対象とした曝露の実態調査
研究③:加熱式たばこ喫煙者おおびその家族の1年後追跡調査
研究①②③の実施により、研究④⑤を導き出す。
研究④:曝露マーカーによる評価方法の開発
研究⑤:呼吸機能、炎症などの臨床バイオマーカーの抽出・選定
受動喫煙の健康リスクに関するメタアナリシス
結果と考察
研究①: リクルートに関する体制づくりを、各協
力機関と先行して実施した。倫理委員会承
認後、すみやかにリクルートを開始した。
令和2年度は、リクルート目標(本人
10 名ずつ、家族(配偶者、子供)20 名ず
つに対して、紙巻たばこ喫煙者本人9名、
その配偶者 8 名および子供 11 名、加熱式
たばこ喫煙者本人 7 名、その配偶者 5 名お
よび子供 8 名、紙巻たばこおよび加熱式た
ばこ併用者本人 6 名、その配偶者 4 名およ
び子供 14 名、全体で本人 22 名、家族 50
名(配偶者 17 名、子供 33 名)をリクルー
トした。
コロナ禍の状況で、当初やや遅れを生じ
ていたが、協力機関とともにリクルートを
強化して、ほぼ目標に近い数のリクルート
数を達成した。
研究②:令和2年度は、リクルートに関する体制
づくりを、各協力機関と先行して実施した。
倫理委員会承認後、すみやかにリクルート
を開始した。
現在 8 名のリクルートが完了している。
また、研究協力機関とともに協力可能飲食
店の選定を行っているが、令和 2 年度のコ
ロナ禍の状況で遅れが生じた。
コロナ禍において、飲食店従業員のマス
ク着用、アクリル板の設置、換気の強化等飲
食店における喫煙の状況の変化についても
情報を収集している。現在の状況を反映し
た調査になるよう、より厳密に聞き取り等
を行う。
今後の新型コロナウイルス感染症の流行
状況に影響を受ける可能性があると考えら
れるが、可能な限りリクルートを試みる。
研究③:令和2年度は、本人 15 名、家族 21 名の
リクルートが完了しており、引き続きリク
ルートを継続し、研究期間内にほぼ完了で
きる見込みである。質問票の分析も完了で
きる見込みである。
研究④:リクルートした喫煙者 19 名(紙巻たば
こ喫煙者 7 名、加熱式たばこ喫煙者 6 名,
紙巻たばこおよび加熱式たばこ併用者 6
名)の尿試料について,ニコチン代謝物と
NNAL 分析を行なった。
ニコチン代謝物量は,3 区分に大きな違
いは認められなかった。これは,加熱式た
ばこ主流煙の分析結果とも合致した。
NNAL 量は,加熱式たばこ喫煙者が主流煙
の分析値と同様の傾向ではなく,10 倍以上の濃度差は認められなかった。
研究⑤:本年度は、新型コロナウイルス感染症
(COVID-19)の蔓延により、臨床の現場
でのリクルートおよび呼気 CO 検査、呼気
NO 検査および呼吸機能検査の実施が困難
であった。
本人および配偶者より、健診データを提
供してもらっている。
1) メタボリックシンドロームの構成要因、2) 呼吸器疾患関連(呼吸機能、呼気 NO)に有意な変化を認めな
かった。呼気一酸化炭素(Carbon monoxide:
CO): 紙巻たばこから加熱式たばこへの
変更により、有意に低下を示した。3) 炎症のバイオマーカー(白血球、高感
度 CRP、Fibrinogen):有意な変化を認め
なかった。
受動喫煙と脳卒中,精神疾患,睡眠障害,
肺がん,乳がん,COPD には正の関連が認
められた.受動喫煙はこれらの健康影響の
リスクを有意に高くし,罹患リスクの要因
(危険因子)となることが示唆された.
結論
本研究成果の発信により、「改正健康増進
法」で経過措置として店内を喫煙可能とし
ている施設において屋内禁煙化の選択を促
すことにつながることが期待される。
最終的には、本研究の成果が、国民の受動
喫煙に対する認知の向上、受動喫煙による
疾病および喫煙関連疾患の予防に貢献する
ことが期待される。

公開日・更新日

公開日
2022-04-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-04-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202009032Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,000,000円
(2)補助金確定額
5,592,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,408,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,506,886円
人件費・謝金 1,659,956円
旅費 0円
その他 226,191円
間接経費 1,200,000円
合計 5,593,033円

備考

備考
令和2年度補助金収支報告にあたって:
「補助金確定額」と「支出の合計」に差が生じた理由:
新型コロナウイルス感染症流行に伴い、流行地での研究参加者のリクルートを十分に実施することが困難であったため。

公開日・更新日

公開日
2022-08-09
更新日
-