栄養素及び食品の適切な摂取のための行動変容につながる日本版栄養プロファイル策定に向けた基礎的研究

文献情報

文献番号
202009027A
報告書区分
総括
研究課題名
栄養素及び食品の適切な摂取のための行動変容につながる日本版栄養プロファイル策定に向けた基礎的研究
課題番号
19FA1019
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
石見 佳子(東京農業大学 農生命科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 多田 由紀(東京農業大学応用生物科学部栄養科学科)
  • 瀧本 秀美(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 栄養疫学・食育研究部)
  • 吉崎 貴大(東洋大学 食環境科学部食環境科学科)
  • 横山 友里(地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
5,255,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健全な食生活には適切な食品の選択が求められる。我が国では、消費者の適切な食品選択に資するため栄養表示制度が定められているが、諸外国ではそれに加えて、食品の栄養価を総合的に判断できる「栄養プロファイル」が活用されている。世界保健機関(WHO)の定義によると栄養プロファイルとは「疾病予防及び健康増進のために、栄養成分に応じて、食品を区分またはランク付けする科学」である。そこで本研究では、我が国において未だ策定されていない日本版栄養プロファイルの試案の作成に向けた情報収集、課題整理、試案の作成を行うことを目的とした。
研究方法
日本版栄養プロファイル試案の作成においては、WHO Technical meeting 2010報告書、WHO Guiding principles and framework manual for FOPL 2019及び諸外国の栄養プロファイルを参考に、日本の公衆栄養の状況を考慮して加工食品及び調理済み食品をカテゴリー分類し、対象項目の閾値を設定した。料理別の食塩の閾値を設定するため、1)日本人の食事摂取基準の食塩目標量、2)「健康な食事」で示された成人の適切な食塩摂取量の範囲内の者とそれより多く摂取している者とで、各料理カテゴリー別の熱量及び栄養素摂取量の比較を行なった。また、消費者の知識および新しい栄養プロファイルに対する印象や理解、要望などを明らかにするため、フォーカス・グループ・インタビューを実施した。
結果と考察
【加工食品】カテゴリー特異的(閾値設定)モデルを選択し、国民健康・栄養調査の食品分類を基に15カテゴリーに加工食品を分類した。対象項目を脂質(飽和脂肪酸)、ナトリウム、熱量とし、脂質は熱量の30%、飽和脂肪酸は熱量の7%、ナトリウムは1.25 mg/kcalを閾値基準とし、各カテゴリーについて閾値を設定した。設定した閾値について、諸外国の閾値との比較を行ったところ大きな乖離はなかったが、閾値未満の食品の割合が低いカテゴリーがあった。今後、消費者に対する調査や関連団体との意見交換等を踏まえて、さらに実用的なものに改訂する必要がある。
【調理済み食品】一つの料理として喫食される食品を中心に、食事バランスガイドの基準により分類した。厚生労働省が示す「健康な食事」の基準を参照して熱量の閾値を決定し、それを基に脂質、ナトリウムの閾値を設定した。閾値を満たす食品の確認には日本食品標準成分表2015年版(七訂)の資料にある38種類の惣菜の食材割合と収載値を用いた。主食、副菜、主菜、副菜・主菜、その他に属する食品は、それぞれ0、8、7、15、8個であり、閾値を全て満たした食品は、副菜2、主菜1、副菜・主菜7個であった。汁物・スープでは、日経POSデータの販売上位食品の栄養成分表示値を用い、熱量、脂質、ナトリウムの閾値を設定した。熱量、脂質の閾値を満たす商品はあったが、ナトリウムの閾値を満たす商品はなかった。今後はより実態に即したNPモデルの構築に向けて改良を続ける。
【料理】全ての料理で1)及び2)の「適正群」では「過剰群」に比べ有意に食塩量が少なかった。また、1)食塩目標量を適用した解析結果と2)「健康な食事」の基準を適用した解析結果を比べると、目標量を満たした「適正群」と「健康な食事」の基準を満たした「適正群」の料理に含まれる食塩相当量は、「健康な食事」の基準による「適正群」の方が高かったものの、平均値の差は0.03~0.55gであり極端に高くなかった。よって、食塩の目標量達成までの過程において、「健康な食事」の基準による料理の栄養プロファイルを当面の閾値とすることは現実的であると考えられた。
【フォーカス・グループ・インタビュー】加工食品を購入する際に重視していることの頻出度上位は、美味しさ、消費(味)期限、熱量、価格、添加物であった。既存の栄養成分表示の印象として、一日の摂取量に占める割合(%DV)や、摂りすぎかどうかの判断基準がわからないという意見が多かったことから、栄養プロファイルをわかりやすく示す必要性が示唆された。健康的な食生活に資する表示のあり方について結果をまとめ、次年度のフィージビリティスタディの基礎資料とする。
結論
調理済み食品を含む加工食品の日本版栄養プロファイル試案の基礎資料を作成した。ナトリウムについては、設定した閾値未満の食品の割合が低いカテゴリーがあることから、さらに改良する必要がある。国民健康・栄養調査結果を用いて、食塩の適正・過剰摂取群の料理の特徴を比較した。食塩相当量に対する調味料・香辛料類の寄与は、料理の種類にかかわらず共通していた。加工食品等の購入時に消費者が栄養プロファイルを有効活用するためには、注意喚起が必要な項目をわかりやすく表示することが重要であることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2022-03-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-03-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202009027Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,217,000円
(2)補助金確定額
6,102,000円
差引額 [(1)-(2)]
115,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,777,638円
人件費・謝金 1,232,691円
旅費 3,756円
その他 2,125,915円
間接経費 962,000円
合計 6,102,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-05-06
更新日
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