栄養政策等の社会保障費抑制効果の評価に向けた医療経済学的な基礎研究

文献情報

文献番号
202009014A
報告書区分
総括
研究課題名
栄養政策等の社会保障費抑制効果の評価に向けた医療経済学的な基礎研究
課題番号
19FA1004
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
西 信雄(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 国際栄養情報センター)
研究分担者(所属機関)
  • 由田 克士(大阪市立大学大学院 生活科学研究科 食・健康科学講座)
  • 松本 邦愛(東邦大学 医学部 社会医学講座)
  • 池田 奈由(国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 国際栄養情報センター 国際保健統計研究室)
  • 野村 真利香(東邦大学医学部社会医学講座医療統計学分野)
  • 杉山 雄大(国立国際医療研究センター研究所糖尿病情報センター医療政策研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
7,685,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
栄養政策が国民の健康・栄養状態を改善し、疾病や介護を予防することによりもたらされる社会保障費抑制効果に関する評価方法はまだ確立されていない。本研究は、我が国の栄養政策の社会保障費抑制効果の評価に向けて医療経済学的な基礎研究を行うことを目的とした。
研究方法
国内外の栄養政策の公衆衛生学的効果及び社会保障費抑制効果とその評価方法に関するレビュー結果を整理した。由田は、全国または地域ベースで実施されてきた減塩を中心とした栄養施策の取り組みに関する情報を収集、整理した。松本は、栄養政策がどのような経済効果をもたらすかに関して、医療費、介護給付費等の直接費用にとどまらず、罹病費用、死亡費用、家族介護負担まで含めた評価を行った。池田は、食事指導の効果の数量的評価および海外における減塩政策による循環器疾患予防に関する医療経済的評価研究に関するレビューを行った。野村は、海外の栄養不良の二重負荷の状況と政策に関するレビューを行った。杉山は、システム・ダイナミクス等のシミュレーション手法を用いて、我が国における塩分摂取の減少等が及ぼした影響を検討した。西は研究を統括し、研究分担者や研究協力者とともに我が国の栄養政策等の社会保障費抑制効果を明らかにするシミュレーションモデルの評価方法を整理した。
結果と考察
①これまでに本邦においてポピュレーションアプローチとして大規模に実施されてきた減塩活動に関する整理とその効果ならびに課題に関する検討を行った。また、減塩に関する新たなポピュレーションアプローチの手法についても検討し、これからの望ましい減塩対策について考察した。
②成人を対象に生活習慣改善を目的とする栄養指導の効果を数量的に評価した縦断研究による査読付き論文で、2010年1月から2020年12月までに発表されたものを研究対象としてレビューを行った。採用した文献15件では、地域や職域、医療機関における様々な健康状態の個人に対して、現状に合わせた多様な方法で栄養指導が実施され、その効果が示されていた。
③疾病費用法(C-COI法)を用いて、都道府県の脳血管疾患の社会的負担を時系列で求めるとともに、多変量解析で決定要因を探った。結果、一人当たりC-COIは都道府県によってばらつきが大きく、ばらつきは固定化していることが明らかになった。決定要因として食塩摂取量は初期段階で有意な相関が認められた。
④先行研究を参考に、英国の減塩政策を日本で実施した場合のマルコフモデルシミュレーションによる費用便益分析を行った。日本のデータを取り入れた減塩政策のシミュレーションモデル作成の足掛かりとするとともに、今後の研究で経済評価手法を精緻化するために必要な課題を示した。
⑤わが国における1950年から2017年まで各年の全死因死亡率を年齢(age)、年代(period)、世代(cohort)の3つの効果に分けるモデルを作成し、死亡率の統計値に合わせて最適化した。今後モデルの適合度を高め、最適化の結果得られた年代効果、世代効果の一部を栄養政策の効果として同定し、政策の効果を推定することとしている。
⑥食塩摂取に関する議論が主に低中所得国を対象としたNCDs予防の文脈においてどのようになされてきたかを概観した後、近年、国際的に議論が進んでいるSustainable Healthy Dietの考え方について関連文書をレビューした。Sustainable Healthy Dietの概念において、WHOガイドラインと呼応させる形で減塩の重要性が間接的に示されていることを確認した。
結論
我が国の栄養政策の社会保障費抑制効果を評価するためには、海外の先行研究を参考にして公衆衛生学的かつ医療経済学的なシミュレーション研究を今後さらに実施する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2022-03-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-03-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202009014Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,990,000円
(2)補助金確定額
9,701,000円
差引額 [(1)-(2)]
289,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 795,992円
人件費・謝金 6,169,916円
旅費 0円
その他 430,300円
間接経費 2,305,000円
合計 9,701,208円

備考

備考
補助金確定額と補助金対象経費実支出額の差額208円については、自己充当。

公開日・更新日

公開日
2022-06-27
更新日
-