循環器疾患・糖尿病等生活習慣病を予防するための情報通信技術を活用した保健指導プログラム及びその実践のための手引きの作成と検証

文献情報

文献番号
202009007A
報告書区分
総括
研究課題名
循環器疾患・糖尿病等生活習慣病を予防するための情報通信技術を活用した保健指導プログラム及びその実践のための手引きの作成と検証
課題番号
H30-循環器等-一般-007
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
春山 早苗(自治医科大学 看護学部)
研究分担者(所属機関)
  • 田村 須賀子(富山大学大学院医学薬学研究部(医学))
  • 小谷 和彦(自治医科大学 地域医療学センター)
  • 由田 克士(大阪市立大学大学院 生活科学研究科 食・健康科学講座)
  • 中田 由夫(筑波大学 医学医療系)
  • 淺田 義和(自治医科大学 情報センター IR部門)
  • 江角 伸吾(自治医科大学 看護学部)
  • 廣江 貴則(自治医科大学看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
4,465,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究目的は、血圧高値、脂質異常、血糖高値等の脳・心血管疾患危険因子保有者に対するICTを活用した保健指導プログラムを作成・検証するとともに、その実践のための手引きを作成することである。
最終年度の今年度は、昨年度に引き続き、分担研究1「循環器疾患・糖尿病等生活習慣病を予防するための情報通信技術を活用した保健指導プログラム案の検証(A初回面接テレビ電話活用、Bウェアラブル機器・スマホ活用によりセルフモニタリング強化、Cウェアラブル機器・スマホ・ウェブサイト活用により自己管理行動の継続支援強化)」、分担研究2「情報通信技術を活用した保健指導実践のための手引きの作成」、分担研究3「特定保健指導従事者を対象とした調査結果を加味した「食生活改善指導担当者テキスト」の改訂」、分担研究4「特定保健指導従事者を対象とした運動指導担当者研修テキストの作成」を行った。
研究方法
分担1:前述した3プログラムを検証することとし、アウトカム評価は各プログラム群と、ICTを活用しない初回対面保健指導である通常プログラム(対照群)の各群において、特定保健指導前後(2019年度特定健診時と3~6か月の特定保健指導後)の体重・腹囲・BMIの差の有無と、2019年度と2020年度との特定健診結果の差の有無を確認するために対応のあるt検定を行った。
プロセス評価は、ARCSモデルによる保健指導プログラムの評価で9項目の平均値の差を、ICTを活用した保健指導プログラムA、B、Cの各群と対照群とで比較するためのt検定を行った。
昨年度は東日本台風や新型コロナウイルス感染症の影響により、研究協力への承諾を得ていた3施設から研究協力を断られたため、今年度は昨年度から協力を得ている2施設に加え、新たに2施設の協力を得た。しかし,今年度も新型コロナウイルス感染症の影響による保健指導の中断・延期等からリクルートが進まない状況であった。結果、研究参加者はプログラムAは21人、Bも21人、Cは14人(うち1人脱落)で、対照群は38人であった。
分担2:今年度版の手引き(案)を作成し、研究者間の意見交換や2施設の保健師へヒアリングを行い、完成版を作成した。
分担3:作成したテキスト改訂版案について、用語の統一、最新データへの更新等により改訂を完了させた。
分担4:昨年度までに整理した課題を踏まえ、運動指導担当者研修テキストを作成した。
結果と考察
分担1で、2019年度特定健診時と比較した3~6か月の特定保健指導後の体重・腹囲・BMIについて、ICTを活用したA~Cのプログラムは全て減少していたが有意差はなく、ICTを活用しない初回対面指導の通常プログラム(対照群)のみ体重及びBMIが有意に減少していた。特定保健指導前後の2019年度と2020年度の特定健診結果の比較においては、対照群も含めて有意差のある項目はプログラムAの腹囲のみであり、また、有意差はなかったものの改善していた項目は、対照群では5項目に対し、プログラムAでは8項目(腹囲を含む)、プログラムBでは6項目、プログラムCでは7項目であった。
ARCSモデルによるプロセス評価において、プログラムAは、【関連性】、【自信】、【満足感】が対照群よりも有意に低かった。プログラムBは、9項目のうち、【注意】の合計点の平均点が対照群より有意に高く、また有意差はなかったが、9項目のうちの5項目及び【関連性】、【自信】、【満足感】のそれぞれの小計及び総計は対照群よりもプログラムBが高かった。プログラムCについては、対照群と有意差のある項目はなかった。
結論
ICTを活用した3つの保健指導プログラムは、初回対面保健指導の通常プログラムと比較して劣性は認められないことが示唆された。今後は、テレビ電話を活用したプログラムの満足度等が初回対面保健指導の通常プログラムよりも低かった理由を探り、その対策を検討していくことが必要である。また、ウェアラブル機器を活用したプログラムは、セルフモニタリングを強化し、やりがいを感じさせ、モチベーションを高めて保健行動を強化するプログラムであると考えられる。何もかも取り入れるのではなく、個々の行動変容の目的や生活状況に合わせて、活用するICTツールを検討・選択していく必要がある。ICTツールを活用した保健指導プログラムの成果の有無をより明らかにするためには、対象数を増やして、さらなる検証が求められる。
本研究では、完成版の「情報通信技術を活用した保健指導の実践のための手引き」を作成した。今後、これが活用されることにより、ICTを活用した保健指導を実施しやすい環境が作られることを期待する。また、作成した「食生活改善指導担当者テキスト」の改訂版及び運動指導担当者研修テキストにより、これから養成される指導担当者の専門知識や指導技術の向上につながることを望む。

公開日・更新日

公開日
2023-07-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-07-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202009007B
報告書区分
総合
研究課題名
循環器疾患・糖尿病等生活習慣病を予防するための情報通信技術を活用した保健指導プログラム及びその実践のための手引きの作成と検証
課題番号
H30-循環器等-一般-007
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
春山 早苗(自治医科大学 看護学部)
研究分担者(所属機関)
  • 春山 早苗(自治医科大学 看護学部)
  • 田村 須賀子(富山大学大学院医学薬学研究部(医学))
  • 小谷 和彦(自治医科大学 地域医療学センター)
  • 由田 克士(大阪市立大学大学院 生活科学研究科 食・健康科学講座)
  • 中田 由夫(筑波大学 医学医療系)
  • 淺田 義和(自治医科大学 情報センター IR部門)
  • 江角 伸吾(自治医科大学 看護学部)
  • 廣江 貴則(自治医科大学看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、血圧高値、脂質異常、血糖高値等の脳・心血管疾患危険因子保有者に対するICTを活用した保健指導プログラムを作成し、ICT活用保健指導プログラムが初回対面保健指導である通常プログラムと同等以上の効果が得られるかを検証するとともに、その実践のための手引きを作成すること、さらには、現存の研修教材の課題を整理し、特定保健指導従事者を対象とした「食生活改善指導担当者テキスト」の改訂及び運動指導担当者研修テキストを作成することを目的とした。
研究方法
・循環器疾患・糖尿病等生活習慣病を予防するためのICTを活用した保健指導プログラム案の作成(平成30年度)、それらプログラム案の検証(令和元-2年度)
・ICTを活用した保健指導実践のための手引きの作成、特定保健指導従事者を対象とした「食生活改善指導担当者テキスト」の改訂、特定保健指導従事者を対象とした運動指導担当者研修テキストの作成(平成30-令和2年度)
結果と考察
文献検討の結果、検証する保健指導プログラムは以下の3プログラムとした。
A:初回面接においてテレビ電話を活用した保健指導プログラム
B:セルフモニタリングを強化したICT活用保健指導プログラム(ウェアラブル機器・スマートフォン(以下、スマホとする)を活用)
C:自己管理行動の継続支援を強化したICT活用保健指導プログラム(ウェアラブル機器やスマホ、ウェブサイトを活用)
令和元年度は3プログラム間の比較をした。3~6か月の特定保健指導後の体重・腹囲が有意に減少していたのはAのみであった。保健指導の有用感についてプログラム間の有意差はなかった。ARCSモデルによるプログラム評価は、【関連性】及び【満足感】の一部の項目についてBの評価が有意に高かった。初回面接にテレビ電話の「利用あり群」は、【満足感】が「利用なし」群よりも低かった。
令和2年度の検証において、2019年度特定健診時と比較した3~6か月の特定保健指導後の体重・腹囲・BMIについて、ICTを活用したA~Cのプログラムは全て減少していたが有意差はなく、ICTを活用しない初回対面指導の通常プログラム(対照群)のみ体重及びBMIが有意に減少していた。特定保健指導前後の2019年度と2020年度の特定健診結果の比較においては、対照群も含めて有意差のある項目はプログラムAの腹囲のみであり、また、有意差はなかったものの改善していた項目は、対照群では5項目に対し、プログラムAでは8項目(腹囲を含む)、プログラムBでは6項目、プログラムCでは7項目であった。
ARCSモデルによるプロセス評価において、プログラムAは、【関連性】、【自信】、【満足感】が対照群よりも有意に低かった。プログラムBは、9項目のうち、【注意】の合計点の平均点が対照群より有意に高く、また有意差はなかったが、9項目のうちの5項目及び【関連性】、【自信】、【満足感】のそれぞれの小計及び総計は対照群よりもプログラムBが高かった。プログラムCについては、対照群と有意差のある項目はなかった。
結論
1.ICT活用保健指導プログラムのターゲットは、遠隔地勤務の被保険者、保健師等が常在しない分散事業所勤務の被保険者、被扶養者、繰り返し特定保健指導の対象になる者、特定保健指導未利用者が考えられた。
2.ICT活用保健指導プログラムA、B、Cを比較した場合、また、各プログラムと初回対面保健指導の通常プログラムとを比較した場合、アウトカムにおいて劣性を認めるプログラムはなく、同等の効果をもたらすことが示唆された。
3.初回面接においてテレビ電話を活用した保健指導プログラムについて、利用者の満足感等が低い傾向が見られた。
4.スマホアプリと連動したウェアラブル機器を活用したプログラムは利用者の満足感等が高い傾向が示唆された。一部の生活行動や生体情報が記録され、自分の見たいときに見ることができ、スマホアプリによる適時のフィードバック等は、セルフモニタリングを強化し、やりがいを感じさせ、モチベーションを高めて保健行動を強化すると考えられる。
5.「情報通信技術を活用した特定保健指導の初回面接の実施について」(厚生労働省)を補完するもの、またウェアラブル機器等の内容も含めた、「情報通信技術を活用した保健指導の実践のための手引き」作成した。
6.今後養成される指導担当者の専門知識や指導技術の向上に資することを目指し、「食生活改善指導担当者テキスト」を改訂した。
7.運動指導担当者研修テキスト(追補版)について、実際の特定保健指導で運動指導に割ける時間はわずかであることを考慮し、優先順位の高い内容に絞って、また、健康日本21(第二次)で推奨されている内容やICTを活用した運動指導に関する内容を含めるようにし、運動指導担当者研修テキストを作成した。

公開日・更新日

公開日
2023-07-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-07-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202009007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
保健指導にICTを活用することは対面保健指導と比べて効果に影響があるのか否か、平成30年度の国内外の文献検討において、診断された対象への介入・観察研究はみられたが、ハイリスク者や日本の特定保健指導の枠組みで実施された研究はなかった。
本研究ではCOVID-19の影響で当初の目標数よりも対象数が少なくなってしまったが、アウトカムにおいて劣勢は認められなかったことは、保健指導におけるICT活用が加速する状況において重要な点である。
臨床的観点からの成果
保健指導におけるICT活用が進まない要因として、実施側・利用者側のソフト・ハードの環境整備や対面保健指導とは異なる保健指導技術が求められる点がある。本研究の開始当時、「情報通信技術を活用した特定保健指導の初回面接の実施について」(厚生労働省)はわずか2頁で現場の困難・課題に対応するには不十分であった。成果物である「情報通信技術を活用した保健指導の実践のための手引き」はそれを補足することができ、またテレビ電話だけではなく、ウェアラブル機器やスマホアプリ等のICTも含んだものであり実用性が高い。
ガイドライン等の開発
前述の手引きに加えて、新たに特定保健指導に従事する看護師や栄養士等を対象とした研修に使用される教材であり、平成20年度に作成後、見直しされていなかった「食生活改善指導担当者テキスト」を改訂した。また、「運動指導担当者研修テキスト」(追補版)も、実際の特定保健指導で運動指導に割ける時間はわずかであることを考慮し、優先順位の高い内容に絞り、また、健康日本21(第二次)との整合性やICTの活用も含めた新たな運動指導担当者研修テキストを作成した。これらは特定保健指導従事者の資質の向上に資する。
その他行政的観点からの成果
本研究結果や成果物は、「標準的な健診・保健指導プログラム(平成30年版)」や関連する手引き、テキストの見直し・充実に資する情報を提供することができる。また、「情報通信技術を活用した特定保健指導の初回面接の実施について」(厚生労働省)で想定されているICTはテレビ電話であるが、本研究ではスマホアプリと連動したウェアラブル機器の活用等によるセルフモニタリング強化・支援型のプログラムも検討した。ICT化が進む中で多様なメニューが求められるようになることが想定され、その検討等にも資することができる。
その他のインパクト
令和元年度より、栃木県保険者協議会保健活動部会ICT活用ワーキングループへのアドバイザーの依頼があり、研究班メンバーが対応している。その中で、研究成果の紹介や成果物の周知を行っている。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
糖尿病ケアにおける遠隔医療
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
ICTを活用した保健指導プログラムの文献レビュー、プロセス表
学会発表(国際学会等)
2件
EAFONS, European journal of Public Health
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
栃木県保険者協議会における成果物テキストの周知

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2022-07-14
更新日
-

収支報告書

文献番号
202009007Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,804,000円
(2)補助金確定額
5,804,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,216,924円
人件費・謝金 572,353円
旅費 36,710円
その他 2,639,013円
間接経費 1,339,000円
合計 5,804,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2022-04-18
更新日
-