加熱式たばこなど新たなたばこ製品の成分分析と受動喫煙による健康影響の評価手法の開発

文献情報

文献番号
202009001A
報告書区分
総括
研究課題名
加熱式たばこなど新たなたばこ製品の成分分析と受動喫煙による健康影響の評価手法の開発
課題番号
H30-循環器等-指定-001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
稲葉 洋平(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 加奈江(戸次 加奈江)(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 高橋 秀人(国立保健医療科学院)
  • 中村 純(大阪府立大学 大学院生命環境科学研究科 獣医学専攻 実験動物学教室)
  • 牛山 明(国立保健医療科学院 )
  • 杉田 和俊(麻布大学 獣医学部)
  • 欅田 尚樹(産業医科大学 産業保健学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
24,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
加熱式たばこは,たばこ産業のパンフレットによると主流煙の有害化学物質の90-99%が削減と記載されている.最近では,加熱式たばこが紙巻たばこよりも高い成分も報告されるようになった.本研究班は,世界で最も加熱式たばこが普及している我が国において,加熱式たばこの有害化学物質量の調査及び受動喫煙の評価法開発を目的としている.世界に先駆け,これらの新しいタイプの製造たばこに関する科学的な知見を創出していくことが,最も普及している日本に課せられた急務であり世界保健機関(WHO)からも期待されている.本研究班は,改正健康増進法の健康影響評価の一助になるための科学的根拠の積み上げも目的としている.
研究方法
今年度は、加熱式たばこの加熱温度による有害化学物質の発生量の違いを調査した。この違いを評価するために自動喫煙装置を使用して主流煙の捕集を行い、各種分析に供した。次に、芳香族アミン類、金属類の分析法の確立を行なった。これら成分は、LC/MS/MSとICP/MS/MSを使用して分析を行った。さらに2年度に確立した手法を用いてフラン類,ピリジン類、水銀の実態調査を行った。また、加熱式たばこの副流煙分析法を開発し、ニコチン、たばこ特異的ニトロソアミン類の分析を行った。電子たばこについては低出力の電子たばこに関しては、一酸化炭素、フェノール類の分析を行い、高出力電子たばこに関しては、カルボニル類及びオキシド類の分析も行った。
結果と考察
今年度は,加熱式たばこ(glo,glo pro)の加熱温度の違いによる有害化学物質の発生量の違いが生じるのか?に関して主流煙の各種有害化学物質の分析を行った.その結果,加熱温度が高いglo proがgloよりもニコチン・たばこ特異的ニトロソアミン量は高い結果となった.次に,発がん性物質である4-アミノビフェニル,o-トルイジンを含む芳香族アミン類と鉛,ヒ素,水銀などをはじめとする金属類の分析法の確立を行なった.また,昨年度開発した手法を用いて,加熱式たばこから発生するフラン類,ピリジン類の実態調査を行った.結果として,フラン類では,対象としたフルフラール,2-フランメタノール,2(5H)-フラノン,5-メチルフルフラールについて,多種類の銘柄を有するgloから標準たばこよりも高く検出される傾向が見られた.また,ピリジン類については,燃焼成分として標準たばこからも高濃度発生するピリジンや環境たばこ煙のマーカー成分として知られるエテニルピリジンの発生が確認された.次に,昨年度から継続して電子たばこ(高出力製品)から発生するカルボニル類及びオキシド類の分析も行った.最近,電子たばこも高出力製品の販売を見かけるようになった.販売量は調査が難しいものの,インターネット販売では,多くの種類の販売が認められている.そこで,いくつかの電子たばこ製品を購入し,分析に供した.次に低出力型の電子たばこの数日間使用による一酸化炭素とフェノール類の発生について調査を行った.その結果,5日間の使用によって,一酸化炭素,フェノール類が検出され,製品によっては紙巻たばこよりも高値となった.
次に改正健康増進法において経過措置となっている加熱式たばこの受動喫煙による健康影響を評価するために,加熱式たばこ副流煙捕集法の確立を行い,ニコチンと発がん性物質を含むたばこ特異的ニトロソアミン類の分析を行った.その結果,加熱式たばこからニコチン,メンソール,TSNAsが定量されたことから,加熱式たばこからも副流煙が発生することが分かった.今後,この捕集法を使用して,各種有害化学物質の分析を継続する必要があると考えている.
結論
この3カ年の研究を通して,我が国で販売される加熱式たばこの有害成分量,加熱装置の互換機使用による有害成分量などの調査を複数の成分分析法を開発することによって行ってきた.燃焼による有害化学物質の低減は確認されたが,低減されていない成分もわかった.また,副流煙の分析法も確立した.今後は,新たな加熱式たばこへの対応,受動喫煙に関するリスク評価研究を進める.

公開日・更新日

公開日
2023-07-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-07-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202009001B
報告書区分
総合
研究課題名
加熱式たばこなど新たなたばこ製品の成分分析と受動喫煙による健康影響の評価手法の開発
課題番号
H30-循環器等-指定-001
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
稲葉 洋平(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 加奈江(戸次 加奈江)(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 高橋 秀人(国立保健医療科学院 )
  • 中村 純(大阪府立大学 大学院生命環境科学研究科 獣医学専攻 実験動物学教室)
  • 牛山 明(国立保健医療科学院 )
  • 杉田 和俊(麻布大学 獣医学部)
  • 欅田 尚樹(産業医科大学 産業保健学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
加熱式たばこは,たばこ産業のパンフレットによると主流煙の有害化学物質の90-99%が削減と記載されている.最近では,加熱式たばこが紙巻たばこよりも高い成分も報告されるようになった.本研究班は,世界で最も加熱式たばこが普及している我が国において,加熱式たばこの有害化学物質量の調査及び受動喫煙の評価法開発を目的としている.世界に先駆け,これらの新しいタイプの製造たばこに関する科学的な知見を創出していくことが,最も普及している日本に課せられた急務であり世界保健機関(WHO)からも期待されている.本研究班は,改正健康増進法の健康影響評価の一助になるための科学的根拠の積み上げも目的としている.
研究方法
加熱式たばこ製品から発生する有害化学物質の分析法を確立し,日本市場で毎年新たに投入される加熱式たばこの実態調査を行った.同時にWHOたばこ研究室ネットワークに参画し,加熱式たばこの成分分析法を行い,国際標準化に向けて共同研究を進めた.また,電子たばこについても研究を進めた.また,改正健康増進法で求められている加熱式たばこの受動喫煙による健康影響評価を行うために「加熱式たばこ副流煙捕集法・分析法の開発」を行った.
結果と考察
この3カ年で「フェノール類」「フラン類,ピリジン類」「芳香族アミン類」「金属類,水銀も含む」の分析法を開発してきた.加熱式たばこの新製品に関しては,これまでの加熱装置よりも加熱温度を上昇させ,有害化学物質の発生量が上昇していることが確認された.また,たばこ産業以外から販売されている加熱装置(互換機)の調査も行った.この互換機の温度設定によっては,紙巻たばこに匹敵する有害化学物質が発生する製品が販売されており,購入者には知ることが出来ない状況であった.電子たばこは,出力の大きさによって有害化学物質が発生することを確認した.一方で低出力の電子たばこであっても5日間の使用で,一酸化炭素,フェノール類の発生が確認された.電子たばこの国内販売リキッドに含まれる化学物質を調査したところ,D-α-トコフェロールは含有されていなかった.香料成分に関しては,フレーバーごとに同一成分が検出される傾向が確認された.また,検出された成分の中には,有害性が指摘されるものも含まれていることから,今後は,電子たばこの主流煙中における濃度や喫煙者への曝露の実態についても調査の必要性が考えられた.
加熱式たばこによる受動喫煙の健康影響を評価するための第1段階として,「加熱式たばこ副流煙の捕集・分析法の確立」を行い,ニコチン,メンソール,たばこ特異的ニトロソアミン類の分析を行った.紙巻たばこの副流煙の分析値より低いものの,加熱式たばこであったても発がん性物質が検出された.今後は,この副流煙捕集法を使用して,他の有害化学物質の分析を実施していく計画である.
結論
この3カ年の研究を通して,我が国で販売される加熱式たばこの有害成分量,加熱装置の互換機使用による有害成分量などの調査を複数の成分分析法を開発することによって行ってきた.燃焼による有害化学物質の低減は確認されたが,低減されていない成分もわかった.また,副流煙の分析法も確立した.今後は,新たな加熱式たばこへの対応,受動喫煙に関するリスク評価研究を進める.

公開日・更新日

公開日
2022-05-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-04-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202009001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
未だ不明な部分が多い加熱式たばこなど新たなたばこから発生する成分の分析分析結果を学会発表、論文発表で行なった。また、製品評価が行われていない「加熱式たばこ互換装置」の成分分析を行なった。また、電子たばこから発生する有害化学物質の実態調査を行なった。
臨床的観点からの成果
本研究班では、ヒトを対象とした研究を行なっていない。しかし、本研究班の加熱式たばこの主流煙・副流煙の分析結果と今後、行われるだろう加熱式たばこ喫煙者・受動喫煙者の曝露量との関連性を評価することによって、加熱式たばこの健康影響が理解出来るようになることが期待される。
ガイドライン等の開発
世界保健機関(WHO)が組織するたばこ研究室ネットワーク(TobLAbNet)に参加し、たばこ主流煙のカルボニル類、揮発性有機化合物の分析法を開発し、公開した(WHO TobLabNet SOP)。この成果は、WHOホームページ上でも確認できる。
その他行政的観点からの成果
改正健康増進法の本施行が2020年4月から開始され、加熱式たばこの受動喫煙による健康影響評価が課題となっている。本研究班では、加熱式たばこから発生する副流煙の捕集・分析法を確立した。その結果、副流煙にはニコチンと発がん性物質であるたばこ特異的ニトロソアミン類が含有されていた。今後も他の有害化学物質の成分分析を継続することによって、行政課題を解決する一助になるのではないかと考えている。
その他のインパクト
紙面掲載 たばこニコチン加熱式も注意を「一部紙巻に匹敵」読売新聞(関西版)2020年11月15日 社会面31ページ
特別シンポジウム「新型タバコの科学と社会インパクト」 新型タバコの成分分析の最新情報 第79回日本癌学会学術総会.2020.10.1-3.講演(広島、Web)

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
7件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
22件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Inaba Y, Uchiyama S, Kunugita N
Spectrophotometric determination of ammonia levels in tobacco fillers of and sidestream smoke from different cigarette brands in Japan.
Environ Health Prev Med. ,  (23) , 15-  (2018)
原著論文2
Uchiyama S, Noguchi M, Takagi N. el al
Simple Determination of Gaseous and Particulate Compounds Generated from Heated Tobacco Products.
Chem Res Toxicol. ,  (31) , 585-593  (2018)
原著論文3
内山茂久
加熱式タバコから発生する化学物質
現代化学 ,  (10) , 21-24  (2018)
原著論文4
Bando M, Inaba Y, Yunokawa T.
Challenges and action on environmental health for theTokyo Olympic Games and Paralympic Games in 2020.
J. Natl. Inst. Public Health. ,  (68) , 17-26  (2019)
原著論文5
WHO Tobacco Laboratory Network (TobLabNet)
WHO TobLabNet SOP 8 - Standard operating procedure for determination of aldehydes in mainstream cigarette smoke under ISO and intense smoking conditions
WHO TobLabNet official Method  (2018)
原著論文6
WHO Tobacco Laboratory Network (TobLabNet)
WHO TobLabNet SOP 9 - Standard operating procedure for determination of volatile organics in mainstream cigarette smoke under ISO and intense smoking conditions
WHO TobLabNet official Method  (2018)
原著論文7
Uchiyama, S.; Noguchi, M.; Sato, A. el al
Determination of Thermal Decomposition Products Generated from E-cigarettes
Chemical Research in Toxicolog ,  (33) , 576-583  (2020)
原著論文8
中村正和, 田淵貴大, 尾崎米厚, 他
加熱式たばこ製品の使用実態,健康影響,たばこ規制への影響とそれを踏まえた政策提言
日本公衆衛生雑誌 ,  (67) , 3-14  (2020)
原著論文9
稲葉 洋平
加熱式たばこの調査研究からわかってきた課題 
ビルと環境 ,  (165) , 38-43  (2019)
原著論文10
稲葉洋平
たばこの煙の健康影響と受動喫煙のエビデンス 
公衆衛生情報 ,  (49) , 8-9  (2020)
原著論文11
Nakamura J, Nakamura M
DNA-protein crosslink formation by endogenous aldehydes and AP sites.
DNA Repair (Amst) , 88 (102806)  (2020)
原著論文12
稲葉洋平、牛山明
加熱式たばこ製品の有害性
保健医療科学 ,  (69) , 144-152  (2020)
原著論文13
戸次加奈江、稲葉洋平、牛山明
喫煙による室内汚染 ―三次喫煙という新たな課題
保健医療科学 ,  (69) , 138-143  (2020)
原著論文14
内山茂久, 欅田尚樹 
電子タバコから発生する化学物質と健康影響
現代化学 ,  (3) , 54-57  (2020)
原著論文15
内山茂久
加熱式タバコ,電子タバコ等非燃焼式タバコから発生する化学物質の分析 
ファルマシア ,  (56) , 729-732  (2020)
原著論文16
Nakamura J, Holley DW, Kawamoto T. et al
The failure of two major formaldehyde catabolism enzymes (ADH5 and ALDH2) leads to partial synthetic lethality in C57BL/6 mice.
Genes Enviro ,  (42) , 21-  (2020)
原著論文17
Nakamura J.
Potential Doxorubicin-Mediated Dual-Targeting Chemotherapy in FANC/BRCA-Deficient Tumors via Modulation of Cellular Formaldehyde Concentration.
Chem Res Toxicol. , 33 (10) , 2659-2667  (2020)
原著論文18
Nakamura J, Carro S, Gold A. et al
An unexpected butadiene diolepoxide-mediated genotoxicity implies alternative mechanism for 1,3-butadiene carcinogenicity. Chemosphere.
Chemosphere ,  (266) , 129149-  (2021)

公開日・更新日

公開日
2022-07-14
更新日
-

収支報告書

文献番号
202009001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
24,000,000円
(2)補助金確定額
23,999,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 16,404,107円
人件費・謝金 5,144,850円
旅費 43,440円
その他 2,406,767円
間接経費 0円
合計 23,999,164円

備考

備考
差額の164円は自己資金になります。

公開日・更新日

公開日
2022-05-10
更新日
-