化学物質感受性の個人差を決定する遺伝子的要因の検索とその作用機構解析

文献情報

文献番号
200736010A
報告書区分
総括
研究課題名
化学物質感受性の個人差を決定する遺伝子的要因の検索とその作用機構解析
課題番号
H17-化学-一般-010
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
永沼 章(東北大学 大学院薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 久下周佐(東北大学 大学院薬学研究科)
  • 黄 基旭(東北大学 大学院薬学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
32,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健康影響が懸念されている化学物質や重金属類に対する感受性決定遺伝子を網羅的に検索・同定し、その作用機構を解明することを目的とする。
研究方法
高発現またはノックダウンさせることによって化学物質感受性に影響を及ぼす遺伝子群を網羅的に検索し、同定された遺伝子の一部については遺伝学的および生化学的手法を用いて作用機構解析を行った。
結果と考察
前年度までに、ヒト遺伝子のうち機能の判明している約50,000の遺伝子に対応するsiRNAライブラリーをヒト由来培養細胞(293細胞)に導入して各遺伝子をそれぞれノックダウンするという方法で化学物質感受性に影響を与える遺伝子の基本的なスクリーニング法を確立したが、本年度は、より確実な検索法の確立を目指し、siRNA発現プラスミドライブラリーではなく、合成siRNA断片を一つずつ細胞に導入するという方法を検討し、発現抑制によって細胞にメチル水銀高感受性を与える遺伝子として10種、逆に、発現抑制によって細胞にメチル水銀耐性を与える遺伝子として13種の遺伝子を同定することに成功した。また、これまでに本研究において同定された遺伝子うち、発現抑制によってメチル水銀高感受性を与えるPRKAA1(AMP-activated protein kinase(AMPK)の触媒サブユニット)の作用機構解析を行い、グルコース依存的な作用であることに加えて、活性化されたAMPKを脱リン酸化して不活性化させる因子であるprotein phosphatase 2C (PP2C) がメチル水銀毒性を増強させる働きを有することが示唆された。同様にメチル水銀毒性に影響を与えるWhi2および蛋白輸送システムに関わる遺伝子群についても検討し、これらがメチル水銀毒性の発現に重要な役割を果たしていることが判明した。一方、亜ヒ酸感受性に影響を与えるReg1やアドリアマイシン感受性に影響を与える脱ユビキチン化酵素遺伝子群についても、それぞれ作用機構解析を行い、興味深い新知見を得ることが出来た。本研究の成果は、今後の化学物質毒性に関する研究の進展にも大きく貢献するものと期待される。
結論
新しい高効率の感受性決定遺伝子検索法が確立され、これによって多くの化学物質感受性決定遺伝子を同定することに成功した。本知見は、今後の化学物質感受性決定因子に関する研究の発展に大きく寄与するものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200736010B
報告書区分
総合
研究課題名
化学物質感受性の個人差を決定する遺伝子的要因の検索とその作用機構解析
課題番号
H17-化学-一般-010
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
永沼 章(東北大学 大学院薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 久下周佐(東北大学 大学院薬学研究科)
  • 大橋一晶(東北大学 大学院薬学研究科)
  • 黄 基旭(東北大学 大学院薬学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健康影響が懸念されている化学物質や重金属類に対する感受性決定遺伝子を網羅的に検索・同定し、その作用機構を解明することを目的とする。
研究方法
高発現またはノックダウンさせることによって化学物質感受性に影響を及ぼす遺伝子群を網羅的に検索し、同定された遺伝子の一部については遺伝学的および生化学的手法を用いて作用機構解析を行った。
結果と考察
本研究によって、ヒト遺伝子のほとんど全てに対応するsiRNA発現プラスミドライブラリーまたは合成siRNAを用いて、ノックダウンすることによってメチル水銀に対するHEK293細胞(ヒト由来細胞)の感受性に影響を与えるヒト遺伝子群を検索する方法が確立された。また、高発現によって細胞の化学物質感受性に影響を与えるヒト遺伝子の検索法も樹立しさらに、ヒト細胞を用いる方法に比べて簡便で信頼性の高い検索方法として、遺伝子欠損酵母を用いた検索方法も樹立した。これらの方法を用いた検索によって、メチル水銀、亜ヒ酸およびアドリアマイシンの毒性に影響を与える遺伝群を数多く同定することに成功した。本研究で同定された遺伝子群はそのほとんどが初めて化学物質感受性に関与することが判明したものであり、この事実は本研究で開発された遺伝子検索法の有用性を明確に示している。本研究によって同定された遺伝子の一部については作用機構解析を行い、興味深い新知見が多数得られたことから、本研究の成果は、今後の化学物質毒性に関する研究の進展にも大きく貢献するものと期待される。
結論
新しい高効率の感受性決定遺伝子検索法が確立され、これによって多くの化学物質感受性決定遺伝子を同定することに成功した。本知見は、今後の化学物質感受性決定因子に関する研究の発展に大きく寄与するものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-01-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200736010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
化学物質による健康被害を最小限に止めるためには、遺伝的ハイリスク(高感受性)グループを特定して、それらの人々を対象とした安全性評価が必須である。本研究によって、はヒトのほとんど全ての遺伝子に対応するsiRNAを用いた網羅的スクリーニング方法が樹立された。本法を用いることによって、感受性決定に関わる遺伝子群の全容解明が可能となり、その意義は計り知れないものがある。実際に、化学物質毒性に関わることが予想もされたなかった因子が同定されるなど学術的にも大きく貢献した。
臨床的観点からの成果
いくつかの化学物質に対して実際にスクリーニングを行い、数多くの感受性決定遺伝子群を同定することが出来た。この知見は、当該化学物質中毒の予防や治療の方法を確立する上での非常に有用な知見を提供するものである。
ガイドライン等の開発
特になし。
その他行政的観点からの成果
スクリーニングで同定された遺伝子群について化学物質毒性との関係を更に詳細に検討することによって、安全性評価に必須の遺伝子産物が明らかになるものと期待される。
その他のインパクト
多くのシンポジウムに招待され講演を行った。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
16件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
44件
学会発表(国際学会等)
8件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hwang GW, Sasaki D, Naganuma A
Overexpression of Rad23 confers resistance to methylmercury in Saccharomyces cerevisiae via inhibition of the degradation of ubiquitinated proteins
Mol Pharmacol , 68 , 1074-1078  (2005)
原著論文2
Hwang GW, Furuoya Y, Naganuma A et al.
Overexpression of Bop3 confers resistance to methylmercury in Saccharomyces cerevisiae through interaction with other proteins such as Fkh1, Rts1 and Msn2
Biochem Biophys Res Commun , 330 , 378-385  (2005)
原著論文3
Hwang GW, Ishida Y, Naganuma A
Identification of F-box proteins that are involved in resistance to methylmercury in Saccharomyces cerevisiae
FEBS Lett , 580 , 6813-6818  (2006)
原著論文4
Hwang GW, Naganuma A
DNA microarray analysis of transcriptional responses of human neuroblastoma IMR32 cells to methylmercury
J Toxicol Sci , 31 , 537-538  (2006)
原著論文5
Kita K, Miura N, Naganuma A, et al.
Potential effect on cellular response to cadmium of a single-nucleotide A→ G polymorphism in the promoter of the human gene for metallothionein IIA
Hum Genet , 120 , 553-560  (2006)
原著論文6
Hwang GW, Furuchi T, Naganuma A
Ubiquitin-conjugating enzyme Cdc34 mediates cadmium resistance in budding yeast through ubiquitination of the transcription factor Met4
Biochem Biophys Res Commun , 363 , 873-878  (2007)
原著論文7
Hwang GW, Kuge S, Naganuma A, et al.
siRNA-mediated inhibition of phosphatidylinositol glycan Class B (PIGB) confers resistance to methylmercury in HEK293 cells
J Toxicol Sci , 32 , 581-583  (2007)
原著論文8
Hwang GW, Furuchi T, Naganuma A
The ubiquitin-conjugating enzymes, Ubc4 and Cdc34, mediate cadmium resistance in budding yeast through different mechanisms
Life Sci (in press)  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-06-01
更新日
-