文献情報
文献番号
202008049A
報告書区分
総括
研究課題名
学会連携を通じた希少癌の適切な医療の質向上と次世代を担う希少がん領域の人材育成に資する研究
課題番号
20EA1021
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
小寺 泰弘(名古屋大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 室 圭(愛知県がんセンター中央病院 薬物療法部)
- 川井 章(国立がん研究センター中央病院 骨軟部腫瘍科・リハビリテーション科)
- 小田 義直(九州大学大学院 医学研究院 形態機能病理学)
- 杉山 一彦(広島大学病院 がん化学療法科)
- 西山 博之(筑波大学医学医療系臨床医学域腎泌尿器外科学)
- 神波 大己(京都大学大学院医学研究科器官外科学講座泌尿器科学)
- 安藤 雄一(名古屋大学医学部附属病院 化学療法部)
- 西田 佳弘(名古屋大学 医学部附属病院 リハビリテーション科)
- 廣田 誠一(兵庫医科大学 病院病理)
- 橋口 陽二郎(帝京大学 医学部 外科学講座)
- 庄 雅之(奈良県立医科大学 消化器・総合外科学教室)
- 本間 明宏(北海道大学 大学院医学研究院 )
- 吉野 孝之(国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院 消化管内科)
- 馬場 英司(九州大学大学院医学研究院社会環境医学講座連携社会医学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
13,320,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書（概要版）
研究目的
臓器横断的にがんを扱う学術団体や各臓器を専門的に扱う学術団体に所属する医療従事者等を支援し、臨床現場におけるニーズの高い希少がんについて可能な限りMinds診療ガイドライン作成マニュアルの方針に沿ってガイドラインを作成するよう促す。また、ガイドライン作成委員会の開催や文献検索に必要な費用を支弁する。これらの学術団体の協力を得て、当該希少がんのガイドラインを持続的に改訂していく体制の構築を促す。さらに、ガイドライン作成のために当該希少がんの診療及び研究に携わる医療従事者が集う機会を利用して、Clinical Questionを解決しうる新たなエビデンスの創出につながる多施設共同の調査や観察研究、さらには特定臨床研究を行う体制を構築することを目指す。以上の活動を通じて、希少癌の診療に習熟しているという観点と希少癌のガイドライン作成に習熟しているという観点での人材育成につなげる。
研究方法
ガイドライン作成作業は、これまでは対面で行われ、本研究費もそれらを開催するために使用されていたが、新型コロナウィルス感染拡大を受けて専らwebで開催されるようになった。そして、先行研究であるがん対策推進総合研究事業「希少癌診療ガイドラインの作成を通した医療提供体制の質向上」（H29-がん対策-一般-013）において開始したガイドライン作成作業は粛々と進められた。また、十二指腸癌診療ガイドラインでは付随研究を行っているが、こうした研究やNational Clinical Database (NCD)を用いた研究に参画してエビデンスを構築する方向へも研究費の用途をシフトさせつつある。一方、癌患者のPatient journeyをたどる試みは病院経営の上でも有用な知見をもたらしているが、そこから希少癌の診療のあり方に関しても多くの示唆が得られると考え、今年度はMedical Note社に依頼して、希少癌に限らず癌患者さん全般における傾向を調査した。
結果と考察
脳腫瘍領域、十二指腸癌、陰茎癌、後腹膜肉腫のガイドラインについては引き続き作成作業、各学会の評価委員会での評価や収取されたパブリックコメントに基づいた修正がなされつつあり、完成、または間近となっている。また、いくつかのビッグデータの構築や付随研究が開始され、一部は論文公表に至った。臓器横断的ゲノム診療の分野では「成人・小児進行固形がんにおける臓器横断的ゲノム診療のガイドライン」の改定が日本臨床腫瘍学会、日本癌治療学会、日本小児血液学会で承認され、ワーキンググループが設立された。EGFR遺伝子増幅要請進行上部消化管がん患者22例を対象とした抗EGFR抗体薬ネシツムバムの有効性、安全性を検証する第Ⅱ相バスケット試験を先進医療Bによる臨床試験が予定されている。ガイドライン作成作業は、新型コロナウィルス感染拡大を受けて、2020年度初頭には多くの活動が中断された。その後、作成委員会は再開されてガイドライン作成は粛々と進められているが、作成委員会が対面ではなく専らwebで開催されるようになったことで、多忙な作成委員の時間を有意義に使うことができた。新型コロナウィルス感染拡大は学術集会等の在り方にとどまらず、ガイドラインの作成においても大きな転換点となり得ると考えられる。一方で、文献検索に始めるシステマティックレビューにはプロである図書館司書や業者の支援を受けることが望ましいとの提言を先行研究で発出したところであり、本研究の中でも現時点では後腹膜腫瘍診療ガイドラインのみが国際医学情報センターの支援を受けているが、今後は本研究費の使途の一部はこのようなアウトソーシングの費用に置き換わっていくものと思われる。
結論
希少癌診療ガイドラインの作成には臓器別のガイドライン作成に関わっている関係各学会の主体的な関与が不可欠である。疾患によっては複数の学会の関与を要し、調整が必要である。ガイドライン作成のプロセスにおいて多施設共同の研究やビッグデータの構築を含む付随的な研究が行われる可能性が生じ、エビデンスの増加が期待できる。また、癌ゲノム診療による臓器横断的な薬物療法のあり方は希少癌の治療に資するものと期待されるが、バスケット試験として新規分子標的薬の臨床試験を増やすことは喫急の改題である。令和３年度内に十二指腸癌診療ガイドライン、後腹膜肉腫診療ガイドライン、陰茎癌診療ガイドライン、脳腫瘍診療ガイドライン2021年版（小児腫瘍編）が完成する。こうしたガイドライン作成の過程で活発な人材交流が行われ、人材育成がなされつつあるのも本研究の成果と考えている。
公開日・更新日
公開日
2021-06-16
更新日
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