HTLV-1母子感染対策および支援体制の課題の検討と対策に関する研究

文献情報

文献番号
202007024A
報告書区分
総括
研究課題名
HTLV-1母子感染対策および支援体制の課題の検討と対策に関する研究
課題番号
20DA1007
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
内丸 薫(国立大学法人東京大学 大学院新領域創成科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 齋藤 滋(国立大学法人富山大学 大学院医学薬学研究部)
  • 森内 浩幸(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科新興感染症病態制御学専攻感染症免疫学講座感染病態制御学分野)
  • 関沢 明彦(昭和大学 医学部 産婦人科学講座)
  • 根路銘 安仁(鹿児島大学医学部保健学科)
  • 宮沢 篤生(昭和大学医学部小児科学講座)
  • 時田 章史(公益社団法人 日本小児科医会 公衆衛生委員会)
  • 山野 嘉久(聖マリアンナ医科大学 医学部)
  • 高 起良(大阪鉄道病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
8,470,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HTLV-1母子感染予防の手段として授乳介入が有用であり、妊婦 HTLV-1 抗体検査が実施されている。2017年先行研究班である厚生労働行政推進調査事業「HTLV-1 母子感染予防に関するエビデンス創出のための研究(板橋班)」による改訂授乳指導マニュアルでは完全人工栄養を推奨(HTLV-1母子感染予防マニュアル)しているが、現場における栄養指導が必ずしも統一されていない可能性も推定され、さらに同班の調査では現状の対策が不十分とするキャリア経産婦が70%以上に及び、心理的なサポートまで含めた支援体制、キャリアとしての母親への相談体制が不十分であることが指摘されている。また、総合対策の推進体制の一環とされる都道府県母子感染対策協議会の状況についても必ずしも十分機能していない可能性が指摘されている。本研究は、これらの研究成果を踏まえ、HTLV-1 キャリア妊婦の現状・支援体制・ニーズに関する情報収集と課題整理を行い、自治体と連携した支援体制の構築、および授乳指導の標準化の推進を目的とする。
研究方法
以下の5つの課題を設定して研究を実施した。
1.HTLV-1 キャリア妊婦の現状・支援体制・ニーズに関する情報収集、課題整理 
1-1) HTLV-1キャリア登録ウェブサイト「キャリねっと」を用いたアンケート調査と分析
1-2)産婦人科医による授乳指導の実態調査
日本産婦人科医会の協力を得て産婦人科におけるHTLV-1キャリアマザーに対する授乳指導を含めた実態調査を実施する。
2.自治体と連携したキャリア妊婦、家族の相談支援体制の検討
2-1)東京地区の実態調査のため東京都の保健所を対象に実態調査を行う。
2-2)東京ネットワークの運用と問題点の検討
先行研究班(板橋班)で構築された連携システムである東京ネットワークの運用と実績の集計、連携会議の開催による課題の抽出を行う。
2-3)事例検討
神奈川県、大阪府、鹿児島県、長崎県、富山県をとりあげ、高浸淫地域、大都市圏、非浸淫地域ごとに先行事例の体制、課題などを明らかにする。
2-4)内科側からの検討
日本HTLV-1学会登録医療機関の年次調査データによる検討を行う。
3.児のフォローアップ体制の検討
4.HTLV-1 母子感染予防法のエビデンスの収集と標準化した指導法の確立/普及啓発
板橋班の成果をもとに標準化授乳指導法を確立する。産科婦人科学会のガイドラインの再検討を行う。
5.HTLV-1 母子感染予防に関する研修会の開催・研修資材の作成
結果と考察
HTLV-1キャリア登録サイトキャリねっとの調査、日本産婦人科医会の調査から2017年の母子感染予防マニュアルの改訂後、人工乳を選択するキャリアマザーが増加していると推定されるが、それでも短期母乳を選択する母親は一定程度存在すると考えられる。先行研究班から継続されている短期授乳の感染リスクについての検討から、短期授乳でも人工乳と比較して感染リスクは増加しないことが示され、母子感染予防マニュアルの改訂の検討を開始する。短期母乳を選択した母親を中心に、地域ごとのネットワークをなどでキャリアマザーに対する支援策を充実させ、その実効性を検証することが必要である。内科を中心とした母親に対するキャリア相談との連繋はいまだ十分ではなく、スムーズな連携を目指して相談体制の周知や周産期領域との連繋体制の構築などが求められる。児のフォローアップについては3歳時点での児の抗体検査をどのように位置づけるかについても改めて検討が必要である。
結論
HTLV-1総合対策が開始されて10年、また2017年にHTLV-1母子感染予防マニュアルが改訂されてから4年のHTLV-1母子感染対策の現状の課題の抽出とその解決策の提言に向けての検討を行った。2017年の母子感染予防マニュアルの改訂後、人工乳を選択するキャリアマザーが増加していると推定されるが、それでも短期母乳を選択する母親は一定程度存在すると考えられる。先行研究班から継続されている短期授乳の感染リスクについての検討から、短期授乳でも人工乳と比較して感染リスクは増加しないことが示され、母子感染予防マニュアルの改訂の検討を開始する。短期母乳を選択してもそのまま長期母乳に移行してしまう母親が20%程度は存在し、短期母乳を選択した母親を中心に、地域ごとのネットワークを含めてキャリアマザーに対する支援策を充実させ、その実効性を検証することが必要である。児のフォローアップは30%程度しか行われていないが、3歳時点での児の抗体検査をどのように位置づけるかについても検討が必要である。内科を中心とした母親に対するキャリア相談との連繋はいまだ十分ではなく、スムーズな連携を目指して相談体制の周知や周産期領域との連繋体制の構築などが求められる。

公開日・更新日

公開日
2021-07-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-07-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202007024Z