「不妊に悩む方への特定治療支援事業」のあり方に関する医療政策的研究

文献情報

文献番号
202007003A
報告書区分
総括
研究課題名
「不妊に悩む方への特定治療支援事業」のあり方に関する医療政策的研究
課題番号
H30-健やか-一般-002
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
前田 恵理(秋田大学大学院医学系研究科衛生学・公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 小林 廉毅(東京大学 大学院医学系研究科 公衆衛生学分野)
  • 石原 理(埼玉医科大学 医学部 産科婦人科)
  • 左 勝則(チャア スンチ)(埼玉医科大学 医学部)
  • 桑原 章(徳島大学病院産科婦人科)
  • 齊藤 和毅(東京医科歯科大学大学院 茨城県小児周産期地域医療学講座)
  • 寺田 幸弘(秋田大学医学系研究科機能展開医学系産婦人科学講座)
  • 林 浩康(日本女子大学 人間社会学部社会福祉学科)
  • 杉本 公平(獨協医科大学越谷病院 リプロダクションセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
10,560,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
今年度は「不妊に悩む方への特定治療支援事業」(以下、特定不妊治療費助成事業)について年齢制限(寺田、桑原、左、前田)や所得制限(小林)の観点からの検討を行った。既に生殖補助医療を保険適用化した韓国の調査(石原)や、周産期医療への影響に関する検討(齊藤)も行い、保険適用化の議論に資する研究を目指した。さらに、里親・特別養子縁組制度の情報提供に関する量的・質的調査(杉本、林)を実施し、治療後までの支援も含めた検討を行った。
研究方法
2012年~2016年の日本産科婦人科学会生殖データの分析、2018年までの高知県医療機関と全国公表済生殖データの対比、埼玉県のデータを用いた助成回数ごと年齢別累積生産率の検討、コンジョイント分析、2017年から生殖補助医療を保険適用化している韓国に関する文献的調査、子宮内膜調整法が周産期予後に及ぼす影響に関する研究、医療機関での生殖補助医療説明会でのアンケート、情報提供経験者への半構造化面接を実施した。
結果と考察
年齢制限完全実施で36歳以下の若い年齢層の治療周期は有意に増加し、40~45歳の治療は有意に減少していた。県単独事業により年齢制限を設けない高知県の医療機関と全国の2018年までの公表データの解析からも同様の結果が得られた。特定不妊治療費助成事業の年齢制限には、若年での治療の推進に一定の効果があったと考えられ、2022年4月から予定される生殖補助医療の保険適用化においても、年齢による治療効果の違いを考慮した制度設計が求められる。また、埼玉県の6回の申請あたりの累積生産率は35歳未満で58.4%、35-39歳で49.3%、3回まで助成金が認められている40-42歳では17.2%であった。多変量解析においては年齢のみが唯一生産と関連する患者背景要因で、年齢と累積生産率の関係は明らかであった。以上より、挙児希望のある夫婦の早い年齢での治療を後押しする制度づくりが重要である。
コンジョイント分析では、世帯年収の高い者は、どの自己負担額でも一貫して受療意思が高かった一方で、所得制限付きの助成金額によっては高収入者と低~中収入者の受療選択確率が逆転する可能性も示された。2021年1月から助成額が30万円/回に拡大され、所得制限も撤廃されたが、今後の治療周期数の推移や財政への影響について注視していく必要がある。 
韓国で2018年に実施された生殖補助医療件数は101,655件であったが、治療成績については非公表で、政策評価に関わる情報は開示されていなかった。本邦でも自律的な質向上につながるような医療機関の認定審査体制や、政策の効果検証が可能な仕組みを維持するためのモニタリングについて、継続的な改善や維持が必要である。
また、ホルモン補充周期における凍結融解胚移植では自然排卵周期での移植と比較して分娩の進行が滞るリスクが高いことが明らかとなった。生殖補助医療を推進した場合の周産期医療全体への影響について継続的な評価が今後とも必要である。
里親・特別養子縁組制度の情報提供については、医療機関での生殖補助医療説明会でのアンケートから、医療者が情報提供を一定程度行えるような研修、パンフレット等の資料や福祉専門家等との連携といった準備、情報提供に否定的な患者に対する心理社会学的支援体制が両制度の普及を促進していくと考えられた。情報提供経験者への半構造化面接からは、①不妊治療機関は治療開始前あるいは治療初期段階で里親・養子縁組に関する情報を提供すること、②患者によって情報を必要とするタイミングは異なるため、情報の濃度を変えて複数回提供することが望ましい、③具体的な情報提供や説明会のあり方については、児童相談所やその主管課、民間養子縁組あっせん機関などと検討し、連携・協働する必要がある、④不妊治療を経て子どもを授かった養親当事者の方の話を聴く機会、家族と交流する機会を提供すること、⑤カウンセリングの提供により夫婦の意識共有を促すことについて提言できる。
結論
本研究から、生殖補助医療の保険適用化の議論に資する研究結果が多く示された。特別養子縁組制度・里親制度に関する患者への情報提供体制の整備に向けた具体的な提案も示された。

公開日・更新日

公開日
2021-07-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-09-20
更新日
2022-10-19

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202007003B
報告書区分
総合
研究課題名
「不妊に悩む方への特定治療支援事業」のあり方に関する医療政策的研究
課題番号
H30-健やか-一般-002
研究年度
令和2(2020)年度
研究代表者(所属機関)
前田 恵理(秋田大学大学院医学系研究科衛生学・公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
-
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2022-09-20
更新日
2022-10-19

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202007003C

収支報告書

文献番号
202007003Z