免疫学的輸血副作用の把握とその対応に関する研究

文献情報

文献番号
200735010A
報告書区分
総括
研究課題名
免疫学的輸血副作用の把握とその対応に関する研究
課題番号
H17-医薬-一般-053
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
高本 滋(愛知医科大学医学部輸血部)
研究分担者(所属機関)
  • 倉田 義之(四天王寺国際仏教大学人間福祉学科)
  • 半田 誠(慶応義塾大学医学部輸血・細胞療法部)
  • 岡崎 仁(日本赤十字社血液事業本部中央血液研究所)
  • 飯島 毅彦(杏林大学医学部麻酔科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
6,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
輸血副作用の全国的な報告体制の確立及び輸血関連急性肺障害(TRALI)など免疫学的副作用の実態把握、対応策の追求を目的とする。本年度は1.副作用報告表の統一化、2.副作用の実態把握及び保存前白血球除去(白除)の有用性評価、3.TRALIに関する基礎的、臨床的検討を課題とした。
研究方法
1.研究班で症状項目表、診断項目表を作成し、副作用把握に積極的な特定5施設に有用性評価を依頼した。
2.特定5施設、全国216施設を対象とし、副作用の実態調査、白除による有用性を検討した。
3.ドナー抗白血球抗体陽性TRALI例の抗体の特異性、力価と発症との相関を検討した。遺伝子導入による人好中球抗原(HNA)発現細胞株を作製し、抗体検出系としての有用性を検討した。心臓外科手術例を男性由来と由来を問わないFFP投与の2群に分け、呼吸機能低下に及ぼす影響を検討した。
結果と考察
1.両項目表について有用性、利便性が評価された。
2.特定5施設でのバッグ当りの副作用発生率は1.5%、製剤別ではRCC 0.6%、FFP 1.0%に対し、PCは3.7%と有意に高率であった。内訳では溶血、感染症は少なく、殆どが免疫学的副作用と判断され、中でも蕁麻疹、掻痒感等のアレルギー反応が2-3%と高頻度であった。白除により副作用はRCCで有意に減少、FFPでは不変、PCでは減少傾向はあるも明らかでなく、全国調査では有意差はなかった。
3.抗HLA抗体の特異性に一定の傾向はなく、力価と発症との相関は明らかでなかった。抗好中球抗体検出系としてFCMによる5 cell-lineage IFT法、HNAパネルの2種類を開発した。重症副作用例を検討した結果、抗体の殆どは既存HNA以外の抗原を認識していた。心臓外科手術例に対し二群間に差はなく、男性由来製剤の有利性はなかった。
結論
症状項目表、診断項目表が普及すれば、全国共通な認識の基に輸血副作用に関する報告、集計が可能となり、我国の報告体制確立の一歩として期待される。バッグ当りの副作用頻度は約1.5%であり、製剤別頻度ではRCC<FFP<PCの順であった。白除の効果は一部に認められたが、全体として明確ではなかった。TRALIについては未だ不明な点が多く、更なる症例の蓄積が必要である。女性由来製剤排除には更なる根拠を要し、並びに我国での低発症率、ドナー数減少等の諸問題を考慮に入れた慎重な検討が必要と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2008-11-13
更新日
-

文献情報

文献番号
200735010B
報告書区分
総合
研究課題名
免疫学的輸血副作用の把握とその対応に関する研究
課題番号
H17-医薬-一般-053
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
高本 滋(愛知医科大学医学部輸血部)
研究分担者(所属機関)
  • 倉田義之(四天王寺国際仏教大学人間福祉科)
  • 半田誠(慶應義塾大学医学部輸血・細胞療法部)
  • 岡崎仁(日本赤十字社血液事業本部中央血液研究所)
  • 飯島毅彦(杏林大学医学部麻酔科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
輸血副作用の全国的な報告体制の確立及び輸血関連急性肺障害(TRALI)など免疫学的副作用の実態把握、対応策の追求を目的とする。1.副作用報告表の統一化、2.副作用の実態把握及び保存前白血球除去(白除)の有用性評価、3.TRALIに関する基礎的、臨床的検討を課題とした。
研究方法
1.研究班で症状項目表、診断項目表を作成し、有用性を評価した。
2.特定5施設、全国216施設を対象とし、副作用の実態調査、白除による有用性を検討した。
3.TRALI確診、疑診計222例について、製剤別の発症頻度、抗白血球抗体の陽性率、特異性等について検討した。抗白血球抗体の検出系として5 cell-lineage IFT 法、遺伝子導入による好中球抗原パネルの2法を開発し、有用性を検討した。心臓外科手術例について、男性又は女性、由来の異なるFFP投与による呼吸障害への影響を検討した。
結果と考察
1.両項目表について対象施設から有用性、利便性が評価された。
2.バッグ当り副作用発生率は1.5%、製剤別ではRCC 0.6%、FFP 1.0%に対し、PCは3.7%と有意に高率であった。内訳では溶血、感染症は少なく、殆どが免疫学的副作用であり、特に蕁麻疹等のアレルギー反応が2-3%と高頻度であった。白除により副作用はRCCで有意に減少、FFPでは不変、PCでは減少傾向はあるも明確でなく、全国調査では有意差はなかった。
3.製剤別発症率は10万バッグ当りPC、RBC、FFPで2.1、0.48、0.42であった。ドナーの抗体陽性率は対照15%に比べTRALIで44%と高率であったが、抗HLA抗体の特異性に一定の傾向はなかった。抗好中球抗体検出系として2法は有用であったが、意義については今後の検討を要する。女性製剤群は対照に比べ術後呼吸障害が有意に多く、男性製剤群は対照と差はなかった。
結論
症状及び診断項目表が普及すれば、全国共通な認識の基に輸血副作用の報告、集計が可能となり、我国の報告体制確立の一歩として期待される。バッグ当りの副作用頻度は約1.5%であり、製剤別頻度ではRCC<FFP<PCの順であった。白除の効果は一部に認められたが、全体として明確ではなかった。TRALIについては未だ不明点が多く、更なる症例の蓄積を要する。女性由来製剤排除には更なる根拠を要し、我国での低発症率、ドナー数減少等の諸問題を考慮に入れた慎重な検討が必要である。

公開日・更新日

公開日
2008-11-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200735010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
輸血副作用の全国的報告体制確立のため、症状項目中心の一次、診断項目を含めた二次報告表を作成し、全国的な普及を進めている。副作用発生率は全国(283施設)では1.53%と特定6施設の1.68%に近づいており、ヘモビジランスへの認識が高まっている。製剤別(6施設)ではバッグ当りRCC 0.72%、FFP 1.65%に対し、PCは3.81%と有意に高く、特に実患者当りでは13.6%と高率であった。内訳では溶血、感染症は少なく、殆どが免疫学的副作用であり、特に蕁麻疹等のアレルギー反応が高率であった。
臨床的観点からの成果
副作用頻度に関し、実患者当りでは予想以上に高率であること(PCでは従来のバッグ当り3.81%に対し13.6%)が明らかとなった。今後、PC輸血時の副作用軽減対策が必要と考えられる。致死的な副作用、輸血関連急性肺障害(TRALI)については国際的にも原因究明が進んでいないが、一因と考えられる抗白血球抗体については安価で信頼のおける検出法の開発が必要である。また、抗白血球抗体陽性者の多い女性由来の血液製剤については術後呼吸障害への影響が示唆されており、今後行政的な施策が必要となる可能性もある。
ガイドライン等の開発
特記事項は無し。
その他行政的観点からの成果
輸血副作用の全国的な報告体制の確立については浜口班(H20-医薬-一般-010)との協力の下、オンライン報告を進めている所であるが、参加施設を拡大するなど、さらにこれを推進してゆく必要がある。一方、TRALIに関しては、女性由来の血液製剤による術後呼吸障害への影響が示唆されているが、未だ不明な点も多く、症例の蓄積を必要とする。献血事業における女性由来製剤の排除策導入にはさらなる根拠を要し、我国での低発症率、ドナー数減少の可能性などの諸問題を考慮に入れた慎重な検討が必要と考える。
その他のインパクト
特記事項は無し

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
31件
その他論文(英文等)
4件
学会発表(国内学会)
54件
学会発表(国際学会等)
14件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
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公開日・更新日

公開日
2017-05-22
更新日
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