歯科における医療安全対策(管理)ガイドライン作成に関する研究

文献情報

文献番号
200732060A
報告書区分
総括
研究課題名
歯科における医療安全対策(管理)ガイドライン作成に関する研究
課題番号
H18-医療-一般-036
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
海野 雅浩(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 麻酔・生体管理学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 森崎 市治郎(大阪大学歯学部附属病院 障害者治療部)
  • 小谷 順一郎(大阪歯科大学 歯科麻酔学講座)
  • 渋井 尚武(日本歯科大学附属病院 小児・矯正歯科)
  • 深山 治久(鶴見大学歯学部 歯科麻酔学講座)
  • 三輪 全三(東京医科歯科大学歯学部附属病院 育成系診療科)
  • 馬場 一美(昭和大学歯学部 歯科補綴学教室)
  • 端山 智弘(東京都歯科医師会)
  • 高橋 民男(藤沢市歯科医師会)
  • 土屋 文人(東京医科歯科大学歯学部附属病院 薬剤部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医療安全・医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本邦における歯科領域でのインシデント発生の状況、発生頻度、原因等の実態を把握分析し、インシデントの予防策、対応策に関するガイドライン作成を目的とした。
研究方法
平成18年度に開発した歯科用のインシデント情報収集用ソフトウェアを用いてインシデント事例の収集分析を行った。対象は国内の6大学の歯学部附属病院、10総合病院歯科、口腔外科、6障害児者等専門歯科診療所および6地区歯科医師会に所属する開業形態の歯科診療所とした。 収集したインシデント事例の分類、類型化,原因および対応,予防法について標準化を行った。それを基に.歯科における医療安全対策(管理)ガイドライン(案)を作成した。さらにガイドライン作成に資するためにアメリカ合衆国での医科、歯科におけるインシデントに対する取り組みも調査した。
結果と考察
収集されたインシデント総数は706例であった。内訳は処置・手術に係るものが全体の21%を占めてもっとも多く、ついで与薬・薬剤、検査・採血に係るインシデントが上位を占めた。処置・手術の内訳では組織の損傷が最も多かった。誤飲・誤嚥も2番目に多かった。インシデントのレベルは軽度のものが大部分であったが、潜在的深刻事例も見られた。インシデントの原因としては確認不足、不注意、うっかりミス、思いこみなどのヒューマンエラーに起因する事例が多かった。ヒューマンエラーを低減できるシステムの構築が必要である。収集したインシデントの分析から個別事例に対する対応策や予防策を標準化した安全対策(管理)ガイドラインを作成した。ガイドラインはインシデントの原因や危険因子を類型化させることでて一連の診療過程(接遇、診断、治療計画、診療遂行)を安全に遂行させるのに役立つものと考える。ガイドラインを普及し有効に活用することで国民が安全な歯科医療を享受する環境が整備されると期待される。
結論
歯科用のインシデント情報収集用ソフトウエアを開発して、本邦における歯科領域でのインシデント事例の収集を行った。収集した事例の総数は706例であった。事例の内訳では処置・手術に係るものが最も多く、ついで与薬・薬剤、検査・採血に係るインシデントが上位を占めた。収集したインシデント事例を分析し、事例に対応した歯科における医療安全対策(管理)ガイドラインを作成した。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200732060B
報告書区分
総合
研究課題名
歯科における医療安全対策(管理)ガイドライン作成に関する研究
課題番号
H18-医療-一般-036
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
海野 雅浩(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 麻酔・生体管理学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 森崎 市治郎(大阪大学歯学部附属病院 障害者治療部)
  • 小谷 順一郎(大阪歯科大学 歯科麻酔学講座)
  • 渋井 尚武(日本歯科大学附属病院 小児・矯正歯科)
  • 深山 治久(鶴見大学歯学部 歯科麻酔学講座)
  • 三輪 全三(東京医科歯科大学歯学部附属病院 育成系診療科)
  • 馬場 一美(昭和大学歯学部 歯科補綴学教室)
  • 端山 智弘(東京都歯科医師会)
  • 高橋 民男(藤沢市歯科医師会)
  • 土屋 文人(東京医科歯科大学歯学部附属病院 薬剤部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医療安全・医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本邦における歯科領域でのインシデントの内容、発生状況、発生頻度、原因等については把握されていないため、インシデント発生時の、効果的な対応策や予防策についてもマニュアルやガイドラインは整備されていない。そこで本研究では歯科診療で発生するインシデントの実態把握と歯科における安全管理体制の確立のためのガイドラインを作成することを目標とした。
研究方法
インシデント情報収集用ソフトウエア(インシデント情報集積・解析システム)を開発し、事例の収集と分析を行った。収集の対象は5大学の歯学部附属病院、10総合病院歯科、口腔外科等、6障害児者等専門歯科診療所および6地区歯科医師会に所属する個人開業形態の歯科診療所とした。収集したインシデント事例の種類、原因、対応策、予防策について分析、類型化、標準化を行ってガイドラインを作成した。ガイドライン作成に資するためアメリカでの医療安全対策やシステム作りに対する取り組みを調査した。
結果と考察
開発したインシデント情報収集用ソフトウエアは情報集積部と情報解析部からなり、インターネットーを介して入力でき、簡便性、効率性、匿名性、セキュリテイーが保たれる仕様とした。インシデント事例の内
訳は 処置・手術に係るものが21%を占め、ついで与薬・薬剤、検査・採血に係る事例が上位を占めた。針刺し事故も多かった。処置・手術の内訳では口腔内諸組織の損傷が多く、ついで誤飲・誤嚥であった。インシデントのレベルは軽度なものが多かったが、潜在的深刻事例も認められた。インシデントの原因としては確認不足、不注意、うっかりミス、思いこみなどのヒューマンエラーに基づくものが多かった。本研究の結果、これまで明らかでなかった歯科におけるインシデントの実態を把握でき、歯科領域では初めての事例を基盤とした(Evidenceに基づいた)歯科領域における安全管理ガイドラインを作成できた。
結論
インシデント情報収集用ソフトウエアを開発運用して、インシデント事例706例を収集して分類した。インシデント事例の収集、分析、類型化をもとに頻度の高い事例および頻度は低くても歯科医師が対応できなければならない事例についてインシデント事例の原因、対応策、安全対策・管理についてガイドラインを作成した。

公開日・更新日

公開日
2008-04-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200732060C

成果

専門的・学術的観点からの成果
歯科における安全体制構築のためEvidenceに基づいた医療安全管理ガイドライン作成を目指した。初年度、歯科におけるインシデント実態把握のため、独自にインシデント情報収集システムを開発した。本システムは報告者が開業歯科診療所等よりインターネットを介して簡便に報告出来る仕様とした。次年度、本システムを運用して得られたインシデント事例を分析、類型化し、原因および対応、予防策について標準化を行った。歯科領域においては初となる、収集された事例分析に立脚した歯科における医療安全管理ガイドラインを作成した。
臨床的観点からの成果
各医療機関における医療安全管理体制構築は急務といえるが、歯科診療における安全管理に関する研究は緒についたばかりである。本研究では新たなインシデント事例収集システムを開発し、歯科における医療安全対策(管理)ガイドラインを作成した。本ガイドライン運用により危険因子に対する対応策、予防策の標準化が可能となり、歯科におけるインシデント発生の予防、医療安全管理体制の強化により歯科医療の質と安全の向上がなされ、国民が安全な歯科医療を享受する環境が整備されると期待される。
ガイドライン等の開発
本研究においては歯科における独自のインシデント情報収集システムを開発し、5大学の歯学部附属病院、10総合病院歯科、口腔外科等、6障害児者等専門歯科診療所および6地区歯科医師会に所属する個人開業形態の歯科診療所において本システムを運用した。収集されたインシデント事例706件の分析結果を基に、可能な限りインシデントを類型化し、原因および対応、予防策について標準化を行った。特に頻度が高い事例および頻度は低くとも患者生命に影響を及ぼすなど重要な事例についてガイドラインを作成した。
その他行政的観点からの成果
歯科診療においては歯の切削や抜歯など直接生体に侵襲を加える外科的な外来診療が主体で、それらが医療事故と直結することも少なくない。誤飲・誤嚥例や患者全身状態が悪化する事例等が本調査でも多く報告されていた。わが国の歯科医療は開業形態の歯科診療所を主体としており、歯科における医療安全構築には歯科の特性に配慮し、個々の歯科診療形態に則した管理が必要であり、本研究によって新たに開発したインシデント情報システムおよび歯科医療安全管理ガイドラインは、今後の国民の歯科医療における安全性向上に寄与するものである。
その他のインパクト
近年、歯科医療においても安全管理の整備等が急務となり医療安全における社会的機運も高まっているが、財団法人日本救急医療財団の支援のもと、本研究班にて研究成果発表会開催の機会を得た。テーマを「歯科における安全管理対策」と題し、平成19年11月30日、大阪大学弓倉記念ホールにて開催された。基調講演「本研究の背景と歯科における安全対策」、シンポジウム「歯科におけるインシデント収集」、パネルデスカッション「歯科におけるインシデント事例」、「歯科における安全管理対策」を企画運営し、研究発表及び討議を行った。

発表件数

原著論文(和文)
2件
(タイトル)電子タグ(Radio frequency identification: RFID)を用いた医療機器安全管理の試み. 歯科におけるインシデント発生の現状と安全管理への取り組み.
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
(タイトル)総説 局所麻酔の合併症 -びらんと潰瘍 -.
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
17件
(発表学会)医療の質・安全学会,医療情報学連合大会,日本歯科医学教育学会,日本口腔感染症学会,口腔病学会
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
日本救急医療財団助成金(医療安全・医療技術評価総合研究推進事業) 「歯科における安全管理対策」2007年11月30日(大阪大学弓倉ホール,大阪)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2020-05-27
更新日
-