利用者の視点に立った終末期医療と在宅医療のあり方とその普及に関する研究

文献情報

文献番号
200732028A
報告書区分
総括
研究課題名
利用者の視点に立った終末期医療と在宅医療のあり方とその普及に関する研究
課題番号
H18-医療-一般-003
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
濃沼 信夫(東北大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 蘆野 吉和(十和田市立中央病院)
  • 本家 好文(県立広島病院)
  • 川島孝一郎(仙台往診クリニック)
  • 田村 里子(医療法人東札幌病院)
  • 牧本 敦(国立がんセンター中央病院)
  • 伊藤 道哉(東北大学大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医療安全・医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
7,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
増大する社会的な需要に応え、利用者の安心・信頼を確保する終末期医療と在宅医療のあり方とその普及・促進のための戦略について政策提言を行うことを目的とする。すなわち、終末期医療と在宅医療に係る社会の要請の内容の明確化、終末期医療と在宅医療の普及の阻害要因の把握、緩和ケア病棟以外での終末期医療のあり方の検討、がんおよびがん以外の緊急性の高い病態の終末期医療と在宅医療のあり方の検討、終末期医療と在宅医療推進の意義に係る経済面からの検討を行う。
研究方法
全国の在宅療養支援診療所から抽出した医師の協力の下、往診を受ける終末期がん患者を対象に、療養環境、QOL(FACIT-Sp)などについて2週間ごとの自計調査を行い、QOLなどの経時的変化を把握する。一方、全国の中核的病院に入院中の進行がん患者と主たる介護者に対し、QOL(EQ-5D)、HADSなどの調査を実施し、がん終末期患者の療養先選択に影響する要因を検討する。また、レセプト等の調査から、在宅看取りに関する医療費を算定し、終末期における入院療養と在宅療養の医療費の将来推計、訪問看護事業所の大規模化に要する費用の推計を行う。
結果と考察
在宅療養を希望する患者は、病院療養を希望する患者と比べDepression Scaleは低く、Performance
Statusは良好である。在宅療養におけるがん終末期患者のQOLは、病状の進行に伴って活動状況は著しく悪化するが、死亡前のQOLに大きな変化はない。在宅がん死の割合が現行のままの場合、2012年のがん看取りの医療費は4,586億円となるが、在宅死が10%に増えると172億円の節減、15%に増えると345億円の節減が可能となる。また、在宅終末期医療の質の向上には訪問看護ステーションの大規模化が重要と考えられが、スタッフの増強には1施設当たり約4,500万円、新設には約1億円の費用が必要となる。
結論
退院先の選択には本人の身体状況が大きく影響し、退院が可能な状況で在宅移行が選択肢となることがうかがえる。また、入院中の主治医等からの説明が療養先の選択に影響を及ぼす可能性があり、医師の説明責任、家族構成と家族の意思形成、在宅ケアシステムの充実を図ることによって、終末期患者の在宅移行の可能性は高まると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2008-05-08
更新日
-