文献情報
文献番号
200731043A
報告書区分
総括
研究課題名
筋萎縮性側索硬化症の画期的診断・治療法に関する研究
課題番号
H17-難治-一般-044
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
祖父江 元(名古屋大学大学院医学系研究科 神経内科学)
研究分担者(所属機関)
- 糸山 泰人(東北大学大学院医学系研究科 神経内科学)
- 田中 啓二(東京都医学研究機構東京都臨床医学総合研究所 生化学 分子遺伝子学)
- 岡野 栄之(慶應義塾大学医学部 生理学)
- 郭 伸(東京大学大学院医学系研究科 神経内科学)
- 高橋 良輔(京都大学大学院医学系研究科 神経内科学)
- 中野 今治(自治医科大学 神経内科学)
- 船越 洋(大阪大学大学院医学系研究科 分子再生医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究班の目的は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態に基づく治療法開発に向けて病態を担う病態関連分子を探索・同定し、これを分子標的として有効な分子標的治療を開発することである。
研究方法
ALSを克服するため、基礎系、臨床系研究者を結集し集約的な研究の推進体制を構築した。研究内容をサブセクション毎に主任および分担研究者の各テーマに沿った独自の研究を発展させつつ情報交換を密に行い、研究組織としての有機的協力態勢を強化した。
結果と考察
新規標的分子の探索同定・ALS病態解明の分野では、CNV(copy number variation)が発症に係わることを示し、診断マーカーとしての髄液シスタチンC濃度測定の有用性を明らかにした。また、オートファジーが病態に果たす役割を解明し大きな成果を得た。さらに、高銅親和性、酸化型SOD1の立場より変異SOD1の神経細胞毒性発現機序の解明を行った。新規治療法開発では、低分子化合物モニタリングシステムの開発に加え、新規低分子化合物をマウスに投与しその有効性を確認した。また、遺伝子治療に向けて、AAVベクター、ポリオウイルスベクターの安全性確保を目指して改良、開発を行い臨床応用への道筋をつけることに成功した。HGFによる治療法開発は臨床応用に近い段階にまで到達しており、その有効性の根拠を示すことができた。さらに、大きな期待が寄せられる再生療法へ向けての展開では、マウスES細胞からのニューロスフェア誘導と動物への移植に成功し、ヒトES細胞や人工多能性幹細胞(iPS細胞)による研究にも着手している。一方で内在性神経幹細胞の活性化、軸索再生許容環境の構築をねらった治療法開発も行った。さらに、逆行性軸索輸送を司るdynactin1、グルタミン酸受容体サブタイプであるGluR2のQ/R部位RNA編集酵素であるADAR2、血管新生因子であるangiogeninをターゲットとし、これらの発現を抑制することによって孤発性ALSの病態をシミュレートする新規動物モデルの開発を行った。
結論
本研究によって新規治療法開発へ向けてのALSの病態解明がさらに進み、新たな分子標的が次々と明らかになった。また、低分子化合物による治療、さらには将来、重要な治療法になりうる遺伝子治療、再生治療についてもより優れたデリバリーシステムや効率的な再生システムを構築することができた。さらに孤発性ALSの疾患モデルの開発研究も順調に推進することができた。
公開日・更新日
公開日
2008-04-11
更新日
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