血液凝固異常症に関する調査研究

文献情報

文献番号
200731002A
報告書区分
総括
研究課題名
血液凝固異常症に関する調査研究
課題番号
H17-難治-一般-002
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
池田 康夫(慶應義塾大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 村田 満(慶應義塾大学医学部)
  • 藤村欣吾(広島国際大学薬学部)
  • 桑名正隆(慶應義塾大学医学部)
  • 宮田敏行(国立循環器病センター研究所病院部)
  • 小嶋哲人(名古屋大学医学部)
  • 坂田洋一(自治医科大学分子病態治療研究センター)
  • 藤村吉博(奈良県立医大付属病院)
  • 辻肇(京都府立医科大学)
  • 小林隆夫(信州大学医学部)
  • 和田英夫(三重大学医学部)
  • 川﨑富夫(大阪大学大学院学系)
  • 倉田義之(四天王寺国際仏教大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
42,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本調査研究班は,平成17年度から特定疾患治療研究対象事業である特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性微少血管障害症(TMA),特発性血栓症、深部静脈血栓症/肺塞栓(DVT/PE,いわゆるエコノミークラス症候群)を対象として開始された。19年度もこれら4つテーマ毎にサブグループに分け,それぞれ課題に取り組むとともに,グループ間の相互議論を活発に行うことによって出血性疾患・血栓性疾患の理解を深めるように計画した。本研究班は,これら疾患の分子病態の解明とともに病態解析に基づいた診断基準,治療指針の確立および我が国における正確な発症頻度や予後の把握を目標としている。
研究方法
4つの疾患それぞれに対して実験研究、アンケート調査、臨床研究などを行い、実態把握とともに診断法の確立と標準化、診断基準ならびに治療ガイドラインの作成を行った。
結果と考察
ITPグループでは現在まで疫学、臨床研究、基礎研究から導き出された結果を基に、ITP診断基準の15年ぶりの提案、治療ガイドラインの20年ぶりの改訂などを行ってきた。治療ガイドラインに関しても大筋はすでに多くの施設で取り入れられており、本ガイドラインによって治療成績が向上することが本年度の研究で示された。TMAに関してはADAMTS13活性とインヒビター測定によって、的確な診断を行い、治療に役立っていると思われる。新規に開発したELISA法を用いることで、早期に同活性とインヒビターが報告可能となった。今後現在まで集積した症例の経験をもとに、診断ガイドラインの作成が重要であると考えている。特発性血栓症では静脈血栓症の治療と予防に関するアンケート調査を行うとともに、多施設共同で静脈血栓症患者を大規模に収集し遺伝子解析を行った。日本人を対象にエビデンスを収集し、これを用いて安全・安心な医療実現を目指す。DVT/PE研究においては、本疾患の現況を調査し、もって医療従事者はもちろん、国民にも本疾患を広く周知徹底するとともに、医療行政や災害対策にも役立て、本疾患での死亡例減少に貢献する。
結論
各サブグループの研究が着実に実行され、ITPの抗体産生B細胞数を含む診断基準や治療指針の作成と検証、多数例のTNA解析、我が国に特徴的と思われる血栓症におけるプロテインS遺伝子変異、周産期、心疾患、精神疾患や地震被災地での静脈血栓症の実態など、特筆すべき研究成果が得られた。同時に今後の研究の方向性、明らかにすべき具体的事項も明確となっており、更なる発展が期待される。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-01-22
更新日
-

文献情報

文献番号
200731002B
報告書区分
総合
研究課題名
血液凝固異常症に関する調査研究
課題番号
H17-難治-一般-002
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
池田 康夫(慶應義塾大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 藤村欣吾(広島国際大学薬学部)
  • 藤村吉博(奈良県立医科大学)
  • 宮田敏行(国立循環器病センター研究所病因部)
  • 小林隆夫(信州大学医学部)
  • 倉田義之(四天王寺国際仏教大學人間福祉学科)
  • 桑名正隆(慶應義塾大学医学部)
  • 村田 満(慶應義塾大学医学部)
  • 和田英夫(三重大学医学部)
  • 小嶋哲人(名古屋大学医学部)
  • 川﨑富夫(大阪大学大学院医学研究)
  • 坂田洋一(自治医科大学)
  • 辻 肇(京都府立医科大学)
  • 中野赳(三重大学医学部 (H17年度))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本調査研究班は,「血液凝固異常症」に関する調査研究を目的に平成17年度から開始された。特定疾患治療研究対象である特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性微少血管障害症(TMA),特発性血栓症、深部静脈血栓症/肺血栓塞栓症(DVT/PE,いわゆるエコノミークラス症候群)の4疾患について、それぞれのサブグループに分かれ課題に取り組むとともに,グループ間の相互議論を活発に行うことによって出血性疾患・血栓性疾患の理解を深めるように計画した。本研究班は,これら疾患の分子病態の解明とともに病態解析に基づいた診断基準,疫学的解析による我が国における正確な発症頻度や予後の把握を行い、治療指針の確立とその検証を目標とした。
研究方法
4つの疾患それぞれに対して実験研究、アンケート調査、臨床研究などを行い、実態把握とともに診断法の確立と標準化、診断基準ならびに治療ガイドラインの作成を行った。
結果と考察
ITPサブグループでは病態を基礎的に解明し、疫学的、臨床的研究に基づいた診断、治療法を確立し、QOLの向上を目的として研究を行ってきた。過去の研究班で提案された診断基準、治療ガイドラインの普及と、その適応による治療効果を明らかにすること、疫学的研究を行うこと、難治性ITP、死亡ITP例の実態調査を行った。TMAサブグループでは、TMAの多数例解析による病型分類、ADAMTS13抗原・遺伝子解析、確立されたADAMTS13活性の簡便・迅速測定法の評価と普及、ADAMTS13インヒビターのエピトープ解析、TMAの診断・治療ガイドラインの確立、を遂行した。特発性血栓症サブグループでは静脈血栓症の治療と予防に関するアンケート調査を行うとともに、多施設共同で静脈血栓症患者を収集し遺伝子解析を行った。日本人ではプロテインS K196E変異に加えて、プロテインC、プロテインS、アンチトロンビンの遺伝子の稀な変異が大きく寄与している事が明らかとなった。DVT/PEサブグループでは産婦人科領域VTE調査、PEとDVTの頻度、臨床的特徴に関する研究、精神科病棟入院患者における肺血栓塞栓症に関する検討、震災後の被災者における深部静脈血栓症調査などが行われた。
結論
3年間で各サブグループの研究が着実に実行され、ITPの抗体産生B細胞数を含む診断基準や治療指針の作成と検証、多数例のTNA解析、我が国に特徴的と思われる血栓症におけるプロテインS遺伝子変異、周産期、心疾患、精神疾患や地震被災地での静脈血栓症の実態など、特筆すべき研究成果が得られた。同時に今後の研究の方向性、明らかにすべき具体的事項も明確となっており、更なる発展が期待される。

公開日・更新日

公開日
2008-05-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-01-22
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200731002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究班では,もともと疾患の分子病態解析に基づいた診断基準,治療指針の確立および我が国における正確な発症頻度や予後の把握を目指しているたため、調査研究ではあっても基礎的研究に力を注いだ。ITPサブグループのELISPOT assay、TMAサブグループの簡便で迅速に結果の得られるADAMTS13活性測定法の開発、特発性血栓症サブグループの多施設共同で静脈血栓症患者を大規模に収集し遺伝子解析によるプロテインC、プロテインS、アンチトロンビンの各遺伝子の変異など、多くの優れた成果がみられた。
臨床的観点からの成果
ITPサブグループでは診断基準、治療ガイドラインの普及とその適応による治療効果調査。TMAサブグループではTMAの多数例解析による病型分類、ADAMTS13活性の簡便・迅速測定法の評価と普及が掲げられる。特発性血栓症サブグループではプロテインS K196E変異に関する顕著な成果。DVT/PEサブグループでは産婦人科領域VTEの調査、臨床的特徴、精神科病棟入院や震災後の被災者における深部静脈血栓症調査、などが行われた。以上はいずれも臨床的観点から甚だしい成果と考えられる。
ガイドライン等の開発
ITPサブグループにおいて診断基準、治療ガイドラインの作成普及と、その適応による治療効果を明らかにした。
その他行政的観点からの成果
DVT/PE研究においては、特に震災時のエコノミークラス症候群に関して本疾患の現況を調査し、もって医療従事者はもちろん、国民にも本疾患を広く周知できる。医療行政や災害対策にも役立て、本疾患での死亡例減少に貢献する。
その他のインパクト
震災時に被災地への疾患予防に関する啓蒙を行った。

発表件数

原著論文(和文)
86件
原著論文(英文等)
195件
その他論文(和文)
47件
その他論文(英文等)
5件
学会発表(国内学会)
284件
学会発表(国際学会等)
106件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
ITP診断基準・治療ガイドラインの作成 災害緊急避難時の静脈血栓塞栓症(所謂エコノミークラス症候群)発祥予防指針の提言
その他成果(普及・啓発活動)
1件
震災時に被災地への疾患予防に関する啓蒙

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kuwana M, Okazaki Y, Ikeda Y, その他
nitial laboratory findings useful for predicting the diagnosis of idiopathic thrombocytopenic purpura.
Am. J. Med. , 118 (6) , 1026-1033  (2005)
原著論文2
Fujimura K
Helicobacter pylori infection and idiopathic thrombocytopenic purpura
Int’l J of Hematol , 81 (2) , 113-118  (2005)
原著論文3
Fujimura K, Kuwana M, Kurata Y その他
s eradication therapy useful as the first line of treatment in helicobactoer pylori-positive indiopathic thrombocytopenic purpura? Analysis of 207 eradicated Chronic ITP cases in Japan
Int’l J of Hematol , 81 (2) , 162-168  (2005)
原著論文4
KuwanaM, Kurata Y, Fujimura K, Ikeda Y, その他
Preliminary laboratory-based diagnostic criteria for immune thrombocytopenic purpura: Evaluation by multi-center prospective study.
of Thromb. Haemost. , 4 (9) , 1936-1943  (2006)
原著論文5
Kuwana M, Ikeda Y
Helicobacter pylori and immune thrombocytopenic purpura: unsolved questions and controversies.
Int. J. Hematol , 84 (4) , 309-315  (2006)
原著論文6
Asahi A, Kuwana M, Ikeda Y その他
Effects of Helicobacter pylori eradication regimen on anti-platelet autoantibody response in infected and uninfected patients with idiopathic thrombocytopenic purpura.
Haematologica , 91 (10) , 1436-1437  (2006)
原著論文7
Kuwana M, Iki S, Urabe A
The role of autoantibody-producing plasma cells in immune thrombocytopenic purpura refractory to rituximab
Am J Hematol , 82 (9) , 846-848  (2007)
原著論文8
Uemura M, Matsumoto M, Fujimura Y その他
Localization of ADAMTS13 to the stellate cells of human liver
Blood , 106 (3) , 922-924  (2005)
原著論文9
Kato S, Matsumoto M, Fujimura Y その他
Novel monoclonal antibody-based enzyme immunoassay for determining plasma levels of ADAMTS13 activity.
Transfusion , 46 , 1444-1452  (2006)
原著論文10
Yagi H, Ito S, Fujimura Y その他
Plasma levels of ADAMTS13 antigen, determined by an enzyme immunoassay using the neutralizing monoclonal antibody, parallel to those of the activity.
Int J Hematol , 85 , 403-407  (2007)
原著論文11
Bennett CL, Banjamin K,Fujimura Y その他
Two mechanistic pathways for thienopyridine-associated thrombotic thrombocytopenic purpura: A report from the Surveillance, Epidemiology, and Risk Factors for SERF-TTP research group and the Research on Adverse Drug Events and Reports (RADAR) project
J Am Coll Cardiol , 50 (12) , 1138-1143  (2007)
原著論文12
Shimada S, NIshio K, Fujimura Y その他
Functional imaging of shear-dependent activity of ADAMTS13 in regulating mural thrombis growth under whole blood flow conditions.
Blood , 111 , 1295-1298  (2008)
原著論文13
Yin T, S, Kawasaki T, Tsuji H, Kojima T, Madoiwa S, Sakata Y, Murata M, Ikeda Y, Miyata T, その他
A large deletion of the PROS1 gene in a deep vein thrombosis patient with protein S deficiency
Thromb Haemost , 98 (4) , 783-789  (2007)
原著論文14
Sugiyama S, Hirota H, Miytata T その他
Haplotype of thrombomodulin gene associated with plasma thrombomodulin level and deep vein thrombosis in the Japanese population.
Thromb Res , 119 (1) , 35-43  (2007)
原著論文15
Miyata T, Kimura R, Sakata T その他
Genetic risk factors for deep vein thrombosis among Japanese: importance of protein S K196E mutation.
Int J Hematol , 83 (3) , 217-223  (2007)
原著論文16
Kimura R, Sakata T,Miyata T その他
Plasma protein S activity correlates with protein S genotype but is not sensitive to identify K196E mutant carriers.
J Thromb Haemost , 4 (9) , 2010-2013  (2006)
原著論文17
Kokame K, Nobe Y,Miyata Tその他
FRETS-VWF73, a first fluorogenic substrate for ADAMTS13 assay.
Br J Haematol , 129 (1) , 93-100  (2005)
原著論文18
Sakuma M, Nakamura M, Hanzawa K その他
Acute Pulmonary Embolism after an Earthquake in Japan
Seminar in Thromb Hemost , 32 (8) , 856-860  (2006)
原著論文19
Kimura R, Kawasaki T, Tsuji H, Madoiwa S, Sakata Y, Kojima T, Murata M, Ikeda Y, Miyata T その他
Protein S-K196E mutation as a genetic risk factor for deep vein thrombosis in Japanese patients.
Blood , 107 (4) , 1737-1738  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-05-25
更新日
-