精神疾患に合併する睡眠障害の診断・治療の実態把握と睡眠医療の適正化に関する研究

文献情報

文献番号
200730061A
報告書区分
総括
研究課題名
精神疾患に合併する睡眠障害の診断・治療の実態把握と睡眠医療の適正化に関する研究
課題番号
H19-こころ-一般-013
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
三島 和夫(国立精神・神経センター精神保健研究所精神生理部)
研究分担者(所属機関)
  • 清水徹男(秋田大学医学部神経運動器学講座精神科学分野)
  • 内山真(日本大学医学部精神医学講座)
  • 井上雄一(財団法人神経研究所附属睡眠学センター研究部)
  • 内村直尚(久留米大学医学部神経精神科)
  • 山田尚登(滋賀医科大学精神医学講座)
  • 兼板佳孝(日本大学医学部社会医学講座公衆衛生学教室)
  • 田ヶ谷浩邦(国立精神・神経センター武蔵病院臨床検査部生理機能検査室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
精神疾患に合併する睡眠障害の実態と治療内容の妥当性を検証するための調査を実施し、精神科診療における睡眠障害管理の問題点と改善すべき課題を抽出する。睡眠障害の適切な診断と対処が精神医療に資する効果とその機序を解明し、得られた成果をもとに実効性の高い睡眠医療ガイドラインと応用指針を作成する。
研究方法
大うつ病患者の臨床転帰に関する縦断調査を行った。大規模診療報酬データから向精神薬の使用動向を解析した。精神科専門病院入院患者の睡眠障害罹患頻度調査を行った。統合失調症及び大うつ病患者の睡眠関連呼吸障害の調査を行った。睡眠時パニック患者の臨床治療研究を行った。大うつ病患者に対する断眠療法・時間療法の試験適用を始めた。うつ病診療の際の不眠に対する治療選択に関する精神科医の意識調査を行った。気分障害診療に睡眠医療を展開する際の課題について系統的レビューを行った。
結果と考察
うつ病寛解期にも高率に不眠が残遺し、再発ごとに不眠頻度、重症度ともに増悪すること、反復エピソード患者ほど初発時から不眠が重症であることが明らかになった。受療患者の4.2%が睡眠薬を処方され、その3分の2は一般身体科により処方されていた。睡眠薬服用者の約3分の1が抗うつ薬を併用していた。60代以降での睡眠薬処方率が顕著に増加し、特に女性患者への睡眠薬の処方率が極めて高かった。統合失調症での睡眠時無呼吸症候群の併発頻度が対照者を大きく上回っていることが明らかになった。大うつ病患者での睡眠時無呼吸症候群の併発頻度が高く、日中の過眠、夜間不眠が有意に認められた。睡眠時パニック発作は男性優位で比較的軽症で経過し、治療予後は日中での発作を主体とする群に比べて良好であった。夜間と日中パニックの合併症例では重症度が高いことが明らかになった。気分障害に対する断眠療法とその効果を維持させる睡眠位相前進と高照度光療法を併用する時間療法の有用性を確認した。精神科臨床医は、不眠症状、うつ症状にあわせて睡眠薬や鎮静系抗うつ薬、抗精神病薬を使い分けていることが明らかになった。睡眠障害がうつ病発病の危険因子・再燃予測因子として重要であること、不眠・過眠・悪夢により自殺の危険が高まること、自殺ハイリスク者のスクリーニングに活用できる可能性が高いことが明らかになった。
結論
精神科診療における睡眠障害管理の重要性が示唆された。睡眠医療ガイドライン作成に向けての基盤資料が得られた。

公開日・更新日

公開日
2008-03-31
更新日
-