統合失調症陰性症状の成因解明と治療法開発に関する研究

文献情報

文献番号
200730049A
報告書区分
総括
研究課題名
統合失調症陰性症状の成因解明と治療法開発に関する研究
課題番号
H19-こころ-一般-001
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
富田 博秋(東北大学大学院 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は①免疫細胞の機能ゲノム研究、②画像ゲノム相関研究、③死後脳研究の3つのアプローチを統合することで統合失調症の陰性症状の形成・進行及び脳萎縮に関わる分子遺伝学的機序を解明し、陰性症状の治療法・予防法の開発に繋げることを目的とする。
研究方法
①免疫細胞の機能ゲノム研究:統合失調症罹患者及び健常対照者のTh1・Th2ヘルパーT細胞等の各種免疫細胞を細胞ソーティング装置で単離し、マイクロアレイ技術を用いて全ゲノムの遺伝子発現量を包括的に評価し、統合失調症陰性症状及び脳組織の萎縮の形成・進行に関与する免疫細胞における分子遺伝学的変化を特定する。②画像ゲノム相関研究:統合失調症罹患者及び健常対照者の臨床所見・脳画像所見・50万種のゲノム多型情報を統合して統合失調症陰性症状及び脳組織の萎縮の形成・進行に関与するゲノム多型を特定する。③死後脳研究:統合失調症罹患者及び健常対照者の死後脳組織を対象とするレーザー・マイクロディセクション法等による解析により各脳部位や各細胞種で統合失調症の陰性症状の形成に関与する分子遺伝学的変化を特定する。
結果と考察
①免疫細胞の機能ゲノム研究:細胞ソーティング法により統合失調症罹患者のヘルパーT細胞分画に、従来の報告と一致した有意な変化があることを確認し、世界に先駆けて特定の免疫細胞を細胞ソーティングにより単離してマイクロアレイによる包括的な遺伝子発現プロファイルを行なう技術を確立した。更に、統合失調症の病態との関連で注目されるTh1細胞とTh2細胞の包括的な遺伝子発現プロファイルを特定することに成功した。②画像ゲノム相関研究:平成20年度以降に計画されている画像撮影、認知機能評価、ゲノム多型解析に関してなどの条件設定をおこなった。③死後脳研究:死後脳組織において精神疾患の分子病態を特定する上で重要な交絡因子である死亡時の低酸素状態への暴露の影響を評価するため、神経細胞や各種グリア細胞由来の培養細胞の低酸素状況下での影響を評価する予備実験を行ない、ミトコンドリア機能等が細胞種特異的に変化することを特定した。
結論
初年度は統合失調症陰性症状の形成に関係する免疫細胞の遺伝子発現プロフィールの特定を中心とする研究を行った。平成20年度以降の画像ゲノム相関研究、死後脳研究の結果と併せて統合失調症陰性症状に関与する分子群の特定を行う。

公開日・更新日

公開日
2008-06-06
更新日
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