細胞組織工学的手法を用いた中枢神経障害に対する根治的治療法の開発

文献情報

文献番号
200730046A
報告書区分
総括
研究課題名
細胞組織工学的手法を用いた中枢神経障害に対する根治的治療法の開発
課題番号
H18-こころ-一般-024
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
田口 明彦(国立循環器病センター研究所循環動態機能部)
研究分担者(所属機関)
  • 成冨 博章(国立循環器病センター 脳血管内科)
  • 飯田 秀博(国立循環器病センター研究所 放射線医学部)
  • 盛 英三(国立循環器病センター研究所 心臓生理部)
  • 高木 睦(北海道大学大学院 工学研究科)
  • 松山 知弘(兵庫医科大学 医学部)
  • 齋藤 敬(大阪大学産業科学研究所 新産業創造物質基盤技術研究センター)
  • 田中 秀和(大阪大学大学院 医学研究科)
  • 西川 雄大(国立循環器病センター研究所 先進治療機器開発室)
  • 加藤 英政(東北大学 先進医工学研究機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢者要介護者発生原因の約半数が脳血管障害など中枢神経障害であり、これらの疾患に対する新しい治療法の開発は、厚生労働行政にとって極めて重要な課題であるが、脳血管障害に対する単なる神経幹細胞移植では、ほとんど神経幹細胞が生着せずかつ治療効果もほとんどないことが、基礎研究および臨床試験においても明らかにされつつある。我々は中枢神経障害後の血管再生が神経幹細胞の生着および成熟に必須であることを明らかにしてきたが、本研究では、中枢神経障害部位における血管網の再構築と共に、神経幹細胞の誘導や移植を行い、中枢神経機能障害患者に対する全く新しい治療法の確立に向けた研究を進めている。
研究方法
脳障害後の血管網の構築に関しては、1.生体吸収性ゼラチンハイドロジェルのような医療用資材を用いたscaffold上での構築を試みるとともに、2.血管再生因子や血管血球系幹細胞投与による内因性新生血管網の誘導を行った。それらの幹細胞nicheとなる新生血管上に、臨床応用の可能性が高い1.胎児由来神経幹細胞、2.脳障害により誘導される神経幹細胞、3.ES細胞由来神経幹細胞を局所移植し、その生着、分化、成熟および脳神経機能の向上に関する検討を行うとともに、神経幹細胞の特異的な分化誘導に関する技術開発を行っている。
結果と考察
内因性新生血管網に対する神経幹細胞移植においては、1.幹細胞nicheにおいても移植神経幹細胞のapoptosisを誘導する因子が存在し、その阻害により神経幹細胞生着の生着が飛躍的に高まること、2.血管新生を基盤とした幹細胞nicheへの神経幹細胞移植により、移植神経幹細胞が細胞集団として生着し、その一部は神経系への分化も観察されること、など神経幹細胞移植治療の実現に必要不可欠な知見を得ている。これらの神経幹細胞の積極的な分化誘導を促進するため、in vitroにおいてウイルスベクターなど遺伝子操作をすることなしに、タンパクやRNAなどを極めて効率よく細胞に導入する技術を確立した。
結論
脳神経機能の改善には、傷害された神経回路網の厳密な再生は必ずしも必須ではなく、新生介在ニューロンなどによる既存の神経回路網の再構成でも可能であると考えられており、本研究で得られる移植神経幹細胞の生着、分化および成熟の過程に関する知見は、極めて対象患者数が多い中枢神経障害患者に対する画期的な治療法の確立に必要不可欠であると考えている。

公開日・更新日

公開日
2008-03-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-01-22
更新日
-