ヒトを対象にした精神疾患の生物学的病態解明に関する研究

文献情報

文献番号
200730032A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒトを対象にした精神疾患の生物学的病態解明に関する研究
課題番号
H18-こころ-一般-010
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
三國 雅彦(群馬大学大学院医学系研究科脳神経精神行動学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 白尾 智明(群馬大学大学院医学系研究科高次細胞機能学分野)
  • 池田 研二(慈圭病院・慈圭精神医学研究所)
  • 渡辺 義文(山口大学医学部高次機能神経科学講座)
  • 加藤 忠史(理化学研究所脳科学総合研究センター精神疾患動態研究チーム)
  • 新井 平伊(順天堂大学医学部精神医学教室)
  • 川口 泰雄(自然科学研究機構・生理学研究所大脳神経回路論研究部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
31,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究ではこれまでの研究で明らかになったうつ病の発症脆弱性に関する神経発達期の細胞構築異常並びに退行期の微細な脳血管障害という器質的諸要因を更に解明するとともに、それらの脆弱性に基づく病態形成に関与する分子基盤を解明し、一方、脳科学の成果を応用して神経や血管内皮の保護剤、抗血小板薬を抗うつ薬と併用した増強療法並びに根治療法の開発を目指している。
研究方法
身体疾患にて死亡した躁うつ病、中高年初発うつ病、統合失調症、精神疾患罹患歴のない正常対照の死後脳について解析した。
MRIT2強調画像での白質高信号陽性、T2*画像でのヘモジデリン沈着陰性の中高年初発うつ病で抗うつ療法抵抗性の症例につき、抗血小板薬シロスタゾールを50?200mg追加して、抗うつ効果の強化の有無を検討した。
結果と考察
双極性障害の死後脳前頭前野BA9野での5m以上の比較的大型のカルレチニン陽性GABA細胞は正常対照や統合失調症に比して有意に増加していることを報告した。しかし、ペプチド陽性GABA神経亜型の分布・数には有意差がなかった。したがって、統合失調症でのGABA細胞亜型の細胞構築の異常とは差が認められた。また、ミトコンドリア膜透過性遷移に関与し、細胞内Caイオン濃度の調節に関与するシクロフィリンDの発現が双極性の死後脳で低下していることも明らかにし、トランスジェニックマウスと同様の所見であった。一方、中高年初発うつ病の死後脳ではミクログリアの活性化に関連するCD68タンパク質の発現が増加していたが、CD45陽性白血球を伴う白質血管数には有意差がなかった。次に、中高年初発、治療抵抗性のうつ病に対する抗血小板薬シロスタゾールの抗うつ効果増強作用とSPECTでの局所脳血流の改善効果を明らかにしたが、この強化療法の有効性は複数施設で明らかにされた。
GRの発現量低下の機構としてスプライシング制御因子群の発現量に差が認められるかを検討し、SRp20 mRNAの発現が双極性では非状態依存的に増加していることを突き止め、GRの素因的な異常とその分子機序が明らかにされつつある。
結論
双極性障害における神経発達期の細胞構築学的異常は統合失調症とは相違していること、GRの素因的な発現量低下の機構としてスプライシング制御因子群に差が認められることを明らかにし、抗血小板薬による抗うつ薬の抗うつ効果強化療法を開発した。

公開日・更新日

公開日
2008-04-03
更新日
-