重度精神障害者に対する包括型地域生活支援プログラムの開発に関する研究

文献情報

文献番号
200730005A
報告書区分
総括
研究課題名
重度精神障害者に対する包括型地域生活支援プログラムの開発に関する研究
課題番号
H17-こころ-一般-006
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 順一郎(国立精神・神経センター精神保健研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 塚田 和美(国立精神・神経センター国府台病院)
  • 大嶋 巌(日本社会事業大学)
  • 西尾 雅明(東北福祉大学)
  • 鈴木 友理子(国立精神・神経センター精神保健研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
24,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、重い精神障害を持つ人々の地域生活を支える包括型地域生活支援プログラム(ACT)の日本における定着可能性を検討することである。研究計画3年目の本年は、無作為割付方式による対照群をおいた介入研究の結果を (1)再入院日数などのアウトカム、(2)ACTのサービスプロセス、(3)医療経済の各側面から集約した。
研究方法
積極的に利用者の生活圏に訪問を行なう多職種チームであるACTを’03年5月に国立精神・神経センター国府台病院に立ち上げた。1年のパイロット施行の後、’04年5月から’06年10月までに国府台病院精神科に入院した全患者を、年齢(18歳以上60歳未満)、診断(統合失調症、双極性障害など)、居住地(対象病院近隣の3市)、過去の精神科サービスの利用程度、社会生活機能(GAF 50点以下)の5項目を考慮した加入基準により、研究にエントリーした。対象者のうち、インフォームドコンセントが得られたものを無作為にACT介入群、通常治療群に振り分け1年間の追跡調査を実施した。
結果と考察
期間中の入院者1938名のうち118名が研究参加に同意し介入群、対照群それぞれに59名が割り当てられた。対象者の基礎属性では、年齢で有意差があったが、性別、精神医学的診断などに群間の差はみられず、診断で統合失調症圏または双極性障害が9割弱を占めた。
未退院のもの(ACT群1、対照群3)を除去した分析では、入院前過去1年の入院日数を調整すると、ACT介入群は対照群よりも、退院後1年間の入院日数が少なく(Z=-1.98, p=.048)、介入前より介入後1年間の入院日数が少なかったが(Z=-1.99, p=.047)、通常治療群では変化はみられなかった。ACTの機能を現行の「精神科訪問看護料・指導料」で評価したところ、両群間で年間医療費総額、社会保障費も含めた総額で有意差は見られなかった。本人のサービス満足度は有意に高かった。1年間の追跡では有意差がないものの、長期に追跡した場合一般就労の就労率の上昇が示唆された。
結論
ACTは、重い精神障害をもつ人々の入院の低減に有効なプログラムであり、また年間医療費総額、社会保障費を含めた総額に有意差がないところから、「地域中心」の精神保健医療福祉において実現可能性のあるプログラムであるといえた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200730005B
報告書区分
総合
研究課題名
重度精神障害者に対する包括型地域生活支援プログラムの開発に関する研究
課題番号
H17-こころ-一般-006
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 順一郎(国立精神・神経センター精神保健研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 塚田 和美(国立精神・神経センター国府台病院)
  • 大嶋 巌(日本社会事業大学)
  • 西尾 雅明(東北福祉大学)
  • 鈴木 友理子(国立精神・神経センター精神保健研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、重い精神障害を持つ人々の地域生活を支える包括型地域生活支援プログラム(ACT)の日本における定着可能性を検討することである。そのために (1)臨床および医療経済学効果について実証的研究を行い、(2)地域精神保健施策の充実に寄与できる新たなシステムのあり方を検討した。
研究方法
1) 積極的に生活圏への訪問を行なう多職種チームであるACTを’03年5月に国立精神・神経センター国府台病院に立ち上げた。1年のパイロット施行の後、’04年5月から’06年10月までに国府台病院精神科に入院した全患者を、年齢、診断、居住地、過去の精神科サービスの利用程度、社会生活機能の5項目を考慮した加入基準により、研究にエントリーした。対象者のうち同意が得られたものを無作為にACT介入群、通常治療群に振り分け1年間の追跡調査を実施した。
2) 3年間に「訪問看護研究会」「ACT全国研修会」「マディソンモデル活用事業研究会」などを行ない、ACTの事業化可能性、新たな地域システムのあり方などについて検討した。
結果と考察
1) 実証研究においては、未退院のもの(ACT群1、対照群3)を除去した分析で、入院前過去1年の入院日数を調整すると、ACT介入群は対照群よりも、退院後1年間の入院日数が少なく(Z=-1.98, p=.048)、介入前より介入後1年間の入院日数が少なかった(Z=-1.99, p=.047)。ACTの機能を現行の「精神科訪問看護料・指導料」で評価したところ、両群間で年間医療費総額、社会保障費も含めた総額で有意差は見られなかった。本人のサービス満足度は有意に高かった。2年間など長期に追跡した場合一般就労の就労率の上昇が示唆された。
2) 研究会からは、ACTが医療と生活支援を結合したプログラムであることより、医療機関と訪問看護ステーションの強力な連携による実現可能性が示唆された。しかし、多職種チームの形成、支援のゴールの明確化には課題が残された。また、ACTを含むケアマネジメントのシステム構築が地域に必要である事が示唆された。
結論
ACTは、重い精神障害をもつ人々の入院の低減に有効なプログラムであり、また年間医療費総額、社会保障費を含めた総額に有意差がないところから、「地域中心」の精神保健システム作りに必須の、実現可能性のあるプログラムであるといえた。

公開日・更新日

公開日
2008-04-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200730005C