テーラーメイド治療を目指した肝炎ウイルスデータベース構築に関する研究

文献情報

文献番号
200728026A
報告書区分
総括
研究課題名
テーラーメイド治療を目指した肝炎ウイルスデータベース構築に関する研究
課題番号
H19-肝炎-一般-013
研究年度
平成19(2007)年度
研究代表者(所属機関)
溝上 雅史(公立大学法人名古屋市立大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 五條堀 孝(国立遺伝学研究所 生命情報・DDBJ研究センター)
  • 徳永 勝士(東京大学大学院医学系研究科)
  • 佐田 通夫(久留米大学医学部)
  • 本多 政夫(金沢大学大学院医学系研究科)
  • 田中 靖人(公立大学法人名古屋市立大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
56,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本邦における慢性肝疾患原因ウイルスであるHBV感染者は約150万人、HCV感染者は約200万人と推定され、その一部は慢性肝炎から肝硬変・肝細胞癌へ移行するがその機序は不明である。HCVにはPegIFN・リバビリン併用療法が導入され、一定の効果はあるが完治率50%以下で副作用発現率は高率である。本研究では肝炎ウイルス感染に対する応答性の個人差に関わるヒトSNPとウイルス側の遺伝子要因も明らかにし、両者を網羅的に収集し、統合的にデータベース化することで肝炎テーラーメイド治療の確立を目指す。
研究方法
1)HBV遺伝子配列の決定2)統合型データベースの設計3)SNP Array 6.0を用いた90万SNPタイピング4)肝外病変の検討5)DNAマイクロアレイ6)データマイニングの導入
結果と考察
1)肝がん発生に寄与するX/CP/PC領域の全塩基配列を決定したところBCP変異(T1762/A1764)に1653T変異や1753V変異が加わることにより肝がん発生に関与することが分かった。2)HVDBの収録配列数はHCV61,316件、HBV16,605件となり、ヒト側要因であるSNP情報を収集、管理、解析するデータベースのスキーマ構築と匿名化に対応する患者臨床情報データベース設計を完了。3)健常対照群200検体のSNPタイピング結果から日本人試料では約60万種類のSNPの解析が可能であった。慢性肝炎患者96検体と対照群198検体を対象としたゲノムワイド関連解析を実施したところヒト6番染色体上のMHC領域(6q21.31)に統計的に有意なSNPが存在した。4)30例の肝外病変に寄与するウイルス側解析を終了。5)DNAマイクロアレイによりHCV感染肝がん患者の手術組織でがん部と非がん部の免疫担当細胞における網羅的遺伝子発現パターンを解析した結果、抗原提示、低酸素および酸化ストレスへの応答、ユビキチン・プロテアゾーム蛋白分解、細胞周期、mRNAプロセスに関連する因子が亢進していた。肝がん患者PBMCにおいて発現が亢進した遺伝子の生物学的プロセスと同一であった。6)データマイニング手法を用い一般臨床検査情報とPegIFN・リバビリン併用療法効果を検討した結果、脂肪化、LDL-C、年齢などの各種生体因子の方がウイルス因子よりも強い治療抵抗性因子であった。
結論
ヒト側要因を網羅的に解析する手法が本邦でも使用可能であり、ウイルス側要因の臨床的、ウイルス学的検討も順調に進み、これらデータを統合するデータベースの基盤設計も終了した。今後は肝炎ウイルスに対するテーラーメイド治療へ構築したデータを応用できるようにする。

公開日・更新日

公開日
2008-04-08
更新日
-